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公開日 2017/12/22 12:20

エソテリック「F-07」を聴く ー 旗艦シリーズの技術を継承するプリメインアンプの末弟

海外製ハイエンド機にも負けないハイパフォーマンス
石原 俊
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エソテリックがラインナップする『Fシリーズ』は、同社の最上位モデルであるGrandiosoシリーズ「C1」「M1」「S1」のほか、各高級セパレートシリーズの開発で培われたアナログ増幅回路など、様々な技術を惜しみなく投入して開発されている。クラスA動作の「F-03A」と本機の上位モデル「F-05」の2台が先行して発売されるなか、3機種目として登場したのが、今回紹介するプリメインアンプ「F-07」。上位モデルの技術がどう反映されたのか、概要に触れながら本機の魅力を探っていく。

プリメインアンプ「F-07」550,000円(税抜)

トップエンドの流れを汲む正統派のプリメインアンプ

エソテリックの「F-07」をハンドリングする機会に恵まれた。F-07はエソテリックのFシリーズのプリメインアンプ群の末弟というポジションにある。しかしながら、末弟と呼ぶにはあまりにもルックスが立派で、しかも技術的にはトップエンドのGrandiosoシリーズの流れを汲んでいる。

このクラスの海外製機には、パワーアンプに音量調整機能をつけたようなものも存在するが、本機はプリ部とパワー部からなる正統派モデル。Grandiosoと同様に、プリ部からパワー部までの回路はデュアルモノラル構成になっている。

Fシリーズのプリメインアンプ群の末弟機ながら、立派な外観と技術面でもGrandiosoの流れを汲んでおり、海外製ハイエンド機にも負けないハイパフォーマンスモデル

プリ部はフルバランス構成で、ノイズに対して非常に強い。音量調整機構は「ESOTERIC-QVCS」と呼ばれるもので、LR/正負ごとに独立した合計4系統のラダー抵抗切り替え型電子制御回路がその任に当たる。音量表示や入力表示などを行うフロントパネルの有機ELディスプレイ操作を含む制御回路は、プリアンプ部から電気的にアイソレートされている。またプリ部には、本格的なフォノイコライザーも搭載されている。もちろんMM/MC対応で様々なカートリッジが使用可能だ。また2バンドのトーンコントロール機能も装備しているので、深夜でも安心して使用することができる。

パワー部の入力段は、プリ部と同様にバランス構成を採用。終段の素子は、バイポーラトランジスターを用いた2パラレルプッシュプル3段ダーリントン回路だ。パワー部と両輪をなす電源部のトランスは容量633VAのEI型で、ブロックコンデンサーは10000μFのものが片チャンネルあたり4本使用されている。出力は100W×2(8Ω)。

電源部は、633VAの大容量のカスタムトランスを採用。チャンネルあたり10,000μF ×4本のデュアルモノ構成のブロックコンデンサーと組み合わせ、安定出力を確保

パワーアンプの入力段はバランス構成。低インピーダンスによる増幅で聴感上のダイナミックレンジを高めている

3Dオプティマイズド・シャーシ構造と呼ばれる筐体の剛性は非常に高く、視覚的にも安心感を与えてくれる。本機のノブ類にはGrandiosoと同様のベアリングが使用されており、操作すると非常に滑らかで快感だ。その感触と重厚なトルク感はオーナーの誇りをかきたてるだろう。

Grandiosoと同一のベアリング機構を採用したボリュームとセレクターを装備し、芯ブレの全く無い滑らかな操作感を実現。素材はアルミニウム無垢材削り出しを採用

海外製ハイエンド機にも負けず劣らずのハイパフォーマンス

本気のサウンドは、ずばり“ハイエンド的”だ。しかも、海外のハイエンド機のような風味が感じられる。日本製のプリメインアンプは、たとえそれがどんなに高級なモデルでも、ハイエンドという概念が登場する前の1960年代的なサムシングを引きずっている部分があるのに対して、本機のサウンドにはそのようなしがらみが感じられない。エソテリックはアンプブランドとしては比較的新しく、斬新な音作りができるのだろう。オーディオ的に文句のつけどころが無い。

堅牢な内部構造体で、各回路ブロックを細かく仕切ったコンパートメント構造でパーツを立体配置する「3D オプティマイズド・シャーシ」を採用。上位機同様の肉厚アルミニウムのシャーシは、スチール削り出しインシュレーターで支えられる

音場は広く、極めて清潔で情報量が多い。音像の質感はハッとするほど美しく、透明感がある。スピーカーのドライブ能力は高く、20畳クラスの部屋で高性能・低能率スピーカーをガンガン鳴らしても何の問題もないし、小音量でも音が痩せることはまずない。

音楽的には絶対的な不介入派で、演奏内容や録音の様子をありのままに描く。ジャズはスーパークール。試聴室的な音量でも、スピーカーの周囲には不思議な静寂感があり、その静寂の中でホットなプレイが展開される。分解能は非常に高く、トータル的な演奏が混濁することはない。

端子は入力にXLR×1、RCA×5(1系統はフォノ)を搭載。その他外部プリの入力やプリアウト端子なども用意。オプションボードスロットも1基搭載されており、システムアップにも対応

ヴォーカルは非常にナチュラルで、数百万円也のオーディオエレクトロニクスでしか得られないような美音がポンと得られる。クラシックは最も得意なジャンルであろう。とにかく見通しが良く、特にオーケストラ曲ではディテールをどこまでも観察することができるので、楽曲や演奏をより深く知ることができる。

最後にレコードを聴いた。基本的にはライン入力に近似した表現だが、カートリッジの特徴をよく伝えるような振る舞いが確認できた。インターナショナルな性格の強いハイコスパなプリメインアンプである。

(石原 俊)


本記事は季刊・analog vol.55号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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