公開日 2018/03/27 09:30
デザイン、音質、ノイズキャンセルまで極上。ハイエンドヘッドホンの新境地「Beoplay H9i」を聴く
高い描写力でディープな低音もしっかり再現
音楽ライフと共に極上な質感を備えたデザインヘッドホンを提供する -- そんな観点から現在唯一とも言える立ち位置を確立しているブランドが「B&O PLAY」だ。ワイヤレスヘッドホンの「Beoplay H9i」は、そんな同社のヘッドホンラインナップの中でも、最新のテクノロジーとラグジュアリーを両立させた最高峰モデルである。
H9iの実物を手にすると、“Natural”カラーの柔らかい最高級ラムスキンを使用したイヤーパッドの質感の良さと、つや消し加工のアルミ素材を用いたメタリックなイヤーカップ部は、アルマイト処理とマテリアルの質感を巧みに配した美しいデザインで、たちまち魅了される。
構造の特徴としては、イヤーカップが回転して持ち運びの際にフラットにできる仕組みを採用。右側のイヤーカップはタッチ操作が可能なセンサーを備えている。これまで数々の高機能ヘッドホンを使用してきたが、H9iに触れると、美しさやユーザビリティを追求するインダストリアルデザインの重要性を改めて思い知らされた。
音質は、φ40mmダイナミックドライバーによる同ブランドこだわりの「BANG & OLUFSEN Signature Sound」を搭載。B&O PLAYのヘッドホンラインナップとしては「Beoplay H9」の後継機にあたるH9iだが、最大の変更点は、イヤーカップ内外に内蔵した2つのマイクで感知して騒音を低減する「アクティブノイズキャンセル機能」だ。
実際にiPhone 8とBluetoothのペアリングして装着してみると、新搭載のアクティブノイズキャンセル機能の高性能ぶりに驚く。特に設定せず身に着けるだけで、室内の騒音だけでなく、路上の車の走行音まで、全くストレスにならないレベルにまでカットする。日本人としては気になる通勤・通学電車のノイズも、重低音は全く無音という水準で、走行音の中域も音楽を流していれば気にならないレベルにまで低減される。
人の声の帯域は一段抑えられる程度で、音楽を止めて車内アナウンスを聴くのにちょうど良いレベルだ。ノイズキャンセルによる違和感もほとんど感じられず、実用的なノイズキャンセル性能のみで語っても間違いなくトップグループだ。また「Transparency Mode」による外音取り込みも便利だが、本機能を使用中は音楽再生が停止するので、聞き逃したくないアナウンス等をチェックする用途などに適しているだろう。
改めてiPhone 8の音楽を流してみると、B&O PLAYがデザインのみでなく、音質もハイレベルなブランドであったことを改めて実感する。映画「ラ・ラ・ランド」サントラのジャズ音源『アナザー・デイ・オブ・サン』を聴くと、冒頭のピアノの音の質感、パーカッションの繊細な音の鳴りと、楽器の音のリアリティが素晴らしい。ボーカルの歌声はクリアに立ち上がるし、パワーある低音はリズミカルに楽曲を刻む。
RADWIMPSの『前前前世 (movie ver.) 』では、エレキギターのエッジの鋭さに頼らない情報量志向な描写、質感まで見通す低域の切れ味、シンバルの伸びやかな響き、クリアなボーカルを高い描写力で余裕で鳴らし尽くす。洋楽ではブルーノ・マーズの『24K Magic』を聴いてみたが、ディープな低音のリズムと立ち上がりの正確さ、そして音源に含まれるコーラスのエコーなど、空間の見通しまで極上だ。
操作性では、右側のイヤーカップのタッチセンサーコントロールは、完璧に使いこなすには少々慣れが必要だ。本体中央部をタップして再生/停止、指先でボリュームダイヤルを回すようにジェスチャーする音量上下は誰でも使えるが、左右フリックのスキップボタン、下フリックのANCのOn/Off、上フリックのTransparency Modeは、上手くコントロールできるようになるまで少し時間がかかる。一方で感心したのが、ヘッドホンを耳から外すと自動的に音楽が停止する「インテリジェンスセンサー」。外に持ち出して普段使いするときに重宝する。こういう工夫は嬉しい。
最後に基本スペックも補足しておくと、バッテリーチャージはUSB-TypeC端子で、充電時間は2.5時間、Bluetooth/ANC使用時の連続再生は18時間と、一般的な用途には文句なしの長時間再生が可能だ。
デザインの美しさだけでなく、サウンド、そして機能性とすべての面で極上の体験を提供するB&O PLAYの「Beoplay H9i」は、ワイヤレス・ノイズキャンセルのハイエンドを切り開く革新的なモデルとして評価したい。