公開日 2018/04/13 10:30
CHORD「Qutest」レビュー。コンパクトなUSB-DACが奏でる驚くべきサウンド
DAVE直系のコンパクトモデル
■コンパクトなUSB-DACが奏でる驚くべきサウンド
サイズからは想像がつかない驚異的なパフォーマンスを誇るD/Aコンバーターが登場した。その名はCHORD「Qutest」(キューテスト)。ハイエンドオーディオのユーザーから絶大な信頼を勝ち得ている同社のフラグシップモデル「DAVE」のDNAを受け継ぐ、コンパクトなUSB-DACだ。
最初に書いてしまうが、筆者はこれまでこの価格帯のD/Aコンバーターにおいて、これほどまでの高い再生能力、そして心を揺さぶられるサウンドを聴いたことがない。
Qutestは昨年発売された同社のポータブルUSB-DAC/ヘッドホンアンプ「Hugo2」をベースに、ヘッドホンアンプとバッテリーを省略し、据え置き用途に特化させたD/Aコンバーターだ。同社のDAC群の中では、2015年に発売されたコンパクトモデル「2Qute」の後継モデルという位置付けとなる。
コンパクトなボディは航空機グレードのアルミビレットから製作されており、ずっしり重く剛性も高い。LEDによって光る2つのボタンと、内部を覗ける窓が備わるデザインは、他のCHORDと共通する同社らしい遊び心も感じる。CHORDの名が刻まれるクロームのエンブレムが誇らしげだ。
見た目からして質感が高い本機だが、このコンパクトかつ強固なボディは何より振動対策に効果を発揮する。ここ数年で多くのD/Aコンバーターを試聴したが、経験的にも、ボディの剛性が高く、外部からの振動に強いことが高品位再生の大きな条件となることは身に染みて理解している。
前述のとおり、DAC部はHugo2を踏襲する。D/A変換の心臓部となるFPGAチップには、独自カスタマイズした「Xilinx Artix 7(XC7A15T)」を搭載し、演算処理規模の目安である「タップ数」は49,152タップ。D/A変換で重要な役割を担う独自のWTAフィルターは2段構成で、WTA1で最大16FS(16倍オーバーサンプリング)、WTA2で最大256FS(256倍オーバーサンプリング)を実現。これらによってタイミング精度(時間の精度)とダイナミックレンジを従来からさらに向上させ、-175dBという極めて低いノイズフロアも実現した。
再生スペックもHugo2と同様で、USB入力は最大768kHz/32bitのPCMと22.4MHz のDSDに対応。BNCデジタル端子は2系統を搭載し、シングル接続時は192kHz/24bit、デュアル接続時すれば768kHz/24bitに対応する。また、96kHz/24bit対応の光デジタル端子も装備する。
音声出力はRCA端子によるアナログ出力を1系統備える。ボリューム調整機能はないが、出力電圧を1-3Vの3段階で切り替えることができる。
さらにUSB入力用のノイズフィルター機能として「ガルバニックアイソレーター」を備え、電源供給はUSB-Mini B端子を利用したアダプターによるものとしている。アダプター使用というとスイッチングノイズが気になるが、創業から一貫してスイッチング電源にこだわってきた同社らしく、そのあたりの対策も徹底して施されているという。
■DAVE直系の立体的なサウンド。情報量と音楽性が高次元でバランスする
それではいよいよ試聴に入ろう。筆者宅には2部屋の試聴環境があるが、まずはQutestの価格や使用環境を考えて、2Fにある比較的コンパクトにまとめたシステム(プリメインアンプ:ソウルノート「A-1」、スピーカー:ディナウディオ 「Special 40」)で試してみることにした。fidata「HFAS1-X20」をトランスポートに使い、QutestとUSB接続する。
まずは、CDからリッピングしたテイラー・スウィフト『レピュテーション』を再生する。先に44.1kHz/16bit CDクオリティの音源で、Qutestの基礎体力を確認することが目的だ。
冒頭のエレクトリックベースがスピーカーから鳴り出した瞬間、「なんという立体的な音なんだ!」と思わず息を飲む。アルバムを通してバックミュージックが多彩かつ複雑な音色のシンセサウンドで構成されているのだが、全ての音が視覚的に“見える”ようにリアルなのだ。しかも圧倒的な情報量と、抑揚豊かな音楽性が、高い次元で両立している。ボーカルのリアリティや定位感も抜群で、単に「バランスが良い」という言葉では言い表せない再現力を持つ。
サイズからは想像がつかない驚異的なパフォーマンスを誇るD/Aコンバーターが登場した。その名はCHORD「Qutest」(キューテスト)。ハイエンドオーディオのユーザーから絶大な信頼を勝ち得ている同社のフラグシップモデル「DAVE」のDNAを受け継ぐ、コンパクトなUSB-DACだ。
最初に書いてしまうが、筆者はこれまでこの価格帯のD/Aコンバーターにおいて、これほどまでの高い再生能力、そして心を揺さぶられるサウンドを聴いたことがない。
Qutestは昨年発売された同社のポータブルUSB-DAC/ヘッドホンアンプ「Hugo2」をベースに、ヘッドホンアンプとバッテリーを省略し、据え置き用途に特化させたD/Aコンバーターだ。同社のDAC群の中では、2015年に発売されたコンパクトモデル「2Qute」の後継モデルという位置付けとなる。
コンパクトなボディは航空機グレードのアルミビレットから製作されており、ずっしり重く剛性も高い。LEDによって光る2つのボタンと、内部を覗ける窓が備わるデザインは、他のCHORDと共通する同社らしい遊び心も感じる。CHORDの名が刻まれるクロームのエンブレムが誇らしげだ。
見た目からして質感が高い本機だが、このコンパクトかつ強固なボディは何より振動対策に効果を発揮する。ここ数年で多くのD/Aコンバーターを試聴したが、経験的にも、ボディの剛性が高く、外部からの振動に強いことが高品位再生の大きな条件となることは身に染みて理解している。
前述のとおり、DAC部はHugo2を踏襲する。D/A変換の心臓部となるFPGAチップには、独自カスタマイズした「Xilinx Artix 7(XC7A15T)」を搭載し、演算処理規模の目安である「タップ数」は49,152タップ。D/A変換で重要な役割を担う独自のWTAフィルターは2段構成で、WTA1で最大16FS(16倍オーバーサンプリング)、WTA2で最大256FS(256倍オーバーサンプリング)を実現。これらによってタイミング精度(時間の精度)とダイナミックレンジを従来からさらに向上させ、-175dBという極めて低いノイズフロアも実現した。
再生スペックもHugo2と同様で、USB入力は最大768kHz/32bitのPCMと22.4MHz のDSDに対応。BNCデジタル端子は2系統を搭載し、シングル接続時は192kHz/24bit、デュアル接続時すれば768kHz/24bitに対応する。また、96kHz/24bit対応の光デジタル端子も装備する。
音声出力はRCA端子によるアナログ出力を1系統備える。ボリューム調整機能はないが、出力電圧を1-3Vの3段階で切り替えることができる。
さらにUSB入力用のノイズフィルター機能として「ガルバニックアイソレーター」を備え、電源供給はUSB-Mini B端子を利用したアダプターによるものとしている。アダプター使用というとスイッチングノイズが気になるが、創業から一貫してスイッチング電源にこだわってきた同社らしく、そのあたりの対策も徹底して施されているという。
■DAVE直系の立体的なサウンド。情報量と音楽性が高次元でバランスする
それではいよいよ試聴に入ろう。筆者宅には2部屋の試聴環境があるが、まずはQutestの価格や使用環境を考えて、2Fにある比較的コンパクトにまとめたシステム(プリメインアンプ:ソウルノート「A-1」、スピーカー:ディナウディオ 「Special 40」)で試してみることにした。fidata「HFAS1-X20」をトランスポートに使い、QutestとUSB接続する。
まずは、CDからリッピングしたテイラー・スウィフト『レピュテーション』を再生する。先に44.1kHz/16bit CDクオリティの音源で、Qutestの基礎体力を確認することが目的だ。
冒頭のエレクトリックベースがスピーカーから鳴り出した瞬間、「なんという立体的な音なんだ!」と思わず息を飲む。アルバムを通してバックミュージックが多彩かつ複雑な音色のシンセサウンドで構成されているのだが、全ての音が視覚的に“見える”ようにリアルなのだ。しかも圧倒的な情報量と、抑揚豊かな音楽性が、高い次元で両立している。ボーカルのリアリティや定位感も抜群で、単に「バランスが良い」という言葉では言い表せない再現力を持つ。
次ページ大型システムとも対峙できるサウンド。欠点が見当たらない