公開日 2018/10/01 13:44
AUDIO NOTE「Kagra」を聴く。同社技術を結集した異次元の管球式モノラル・パワーアンプ
パーツも最高級品を随所に使用
AUDIO NOTE
Kagura
¥14,256,000(ペア/税込)モノラルパワーアンプ
<Profile> オーディオ・ノートが持てる技術やノウハウの全てを注ぎ込んで完成させた超弩級のパワーアンプ。大規模な電源回路や各セクションをモジュール化したユニット構成にすることで信号経路の最短化を実現している。出力トランスの巻線も純銀線を採用するなど使用されるパーツも最高級品があてがわれている。
本機の概要に触れる
■パーツや回路構成に凝った弩級の真空管パワーアンプ
本機は超高級なオーディオ・エレクトロニクスで知られるオーディオ・ノートのフラッグシップ・モノラルパワーアンプである。筐体は堂々たるサイズだが、実は内容の2/3は電源回路が占めている。電源トランスはトップパネル上のB電源用のほか、内部に増幅管ヒーター用と整流管ヒーター用の2基が格納されている。また電源回路には4基のチョークコイルも使用されている。さらにはシャーシ内に大容量オイルコンデンサ4基とケミカルコンデンサ6基が巧妙にマウントされている。
使用真空管は次の通り。後方にマウントされている整流管GZ34×4(パラレル/ブリッジ)。入力段はオーディオ・ノートが伝統的に起用してきた双三極管12AY7(6072)×1。ドライバー段が6SN7×2。終段が211×2で、シングル/パラレル接続が施されている。信号回路は非常にコンパクトにまとまっており、モジュール化された三次元的なレイアウトによって、手配線ながらも信号経路は極めて短い。
他のオーディオ・ノートのエレクトロニクスと同様、配線材は全て銀製である。しかも銀線を撚って、シルクの絶縁体を被せ、それをジャケットで覆うという念の入れようである。段間コンデンサはオーディオ・ノート内製の電極に銀箔を使用したもので、制振処理がなされている。出力トランスの線材も銀で、ひとつひとつ丁寧に自社生産を行っている。なお、本機はメイン電源とヒーター電源を分けているので、各個体に2本の電源ケーブルが付属する。
本機の音を聴く
■スピーカー駆動力が高く、音の始動や制動が素早い
他の取材との絡みで、テストはオーディオ・ノートの試聴室で行った。まずはマジコのQ1を鳴らしたのだが、極めてS/Nの良い音である。音場に独特な静けさがあり、音が鳴っているにもかかわらず静寂さが感じられるのだ。音像の質感はクセがなく非常に素直である。スピーカーのドライブ能力は極めて高くハイスピードで、音の始動・制動ともに素早い。音楽的には楽曲・演奏に介入しない中立的な表現を聴かせてくれる。
ここでスピーカーをB&Wの801Dにチェンジした。個人的にはこちらの方が相性は良いと感じた。伸びやかで、開放的で、色気があって、それでいて森閑とした静寂感がある。情報量は聴覚が処理しきれないほど多いのだが、音楽的には楽曲・演奏に寄り添うタイプで、ミュージシャンの絶妙なアシストをするような振る舞いをする。
ジャズは文字通り等身大的な表現が得られる。音像の立体的な表現が凄い。ヴォーカルは音像の輪郭線がないリアルな歌声が音場に浮かび上がる。音像の質感には上品な甘みがあって耳に心地よい。クラシックはメータ/ウィーン・フィルによるマーラー2番の冒頭を聴いたのだが、通常のエレクトロニクスでは聴くことのできない精妙なダイナミクス表現がなされた。低弦の恐ろしげな動きがリスニングポジションに襲い掛かってくるかのようだ。名演奏の真相をここまで明らかにしてくれるアンプを、私は寡聞にして知らない。まさに究極の真空管アンプである。
Specification ●定格出力:50W @1kHz, 5% THD●周波数特性:8Hz〜40kHz(+0dB -3dB @ 1W)●出力インピーダンス:4Ω、8Ω、16Ω (内部ジャンパー切換式)●サイズ:320W×558D×370Hmm(突起部含まず)●質量:62kg●取り扱い:(株)オーディオ・ノート
※本記事は「季刊analog」60号所収記事を転載したものです。本誌の購入はこちらから。
Kagura
¥14,256,000(ペア/税込)モノラルパワーアンプ
<Profile> オーディオ・ノートが持てる技術やノウハウの全てを注ぎ込んで完成させた超弩級のパワーアンプ。大規模な電源回路や各セクションをモジュール化したユニット構成にすることで信号経路の最短化を実現している。出力トランスの巻線も純銀線を採用するなど使用されるパーツも最高級品があてがわれている。
本機の概要に触れる
■パーツや回路構成に凝った弩級の真空管パワーアンプ
本機は超高級なオーディオ・エレクトロニクスで知られるオーディオ・ノートのフラッグシップ・モノラルパワーアンプである。筐体は堂々たるサイズだが、実は内容の2/3は電源回路が占めている。電源トランスはトップパネル上のB電源用のほか、内部に増幅管ヒーター用と整流管ヒーター用の2基が格納されている。また電源回路には4基のチョークコイルも使用されている。さらにはシャーシ内に大容量オイルコンデンサ4基とケミカルコンデンサ6基が巧妙にマウントされている。
使用真空管は次の通り。後方にマウントされている整流管GZ34×4(パラレル/ブリッジ)。入力段はオーディオ・ノートが伝統的に起用してきた双三極管12AY7(6072)×1。ドライバー段が6SN7×2。終段が211×2で、シングル/パラレル接続が施されている。信号回路は非常にコンパクトにまとまっており、モジュール化された三次元的なレイアウトによって、手配線ながらも信号経路は極めて短い。
他のオーディオ・ノートのエレクトロニクスと同様、配線材は全て銀製である。しかも銀線を撚って、シルクの絶縁体を被せ、それをジャケットで覆うという念の入れようである。段間コンデンサはオーディオ・ノート内製の電極に銀箔を使用したもので、制振処理がなされている。出力トランスの線材も銀で、ひとつひとつ丁寧に自社生産を行っている。なお、本機はメイン電源とヒーター電源を分けているので、各個体に2本の電源ケーブルが付属する。
本機の音を聴く
■スピーカー駆動力が高く、音の始動や制動が素早い
他の取材との絡みで、テストはオーディオ・ノートの試聴室で行った。まずはマジコのQ1を鳴らしたのだが、極めてS/Nの良い音である。音場に独特な静けさがあり、音が鳴っているにもかかわらず静寂さが感じられるのだ。音像の質感はクセがなく非常に素直である。スピーカーのドライブ能力は極めて高くハイスピードで、音の始動・制動ともに素早い。音楽的には楽曲・演奏に介入しない中立的な表現を聴かせてくれる。
ここでスピーカーをB&Wの801Dにチェンジした。個人的にはこちらの方が相性は良いと感じた。伸びやかで、開放的で、色気があって、それでいて森閑とした静寂感がある。情報量は聴覚が処理しきれないほど多いのだが、音楽的には楽曲・演奏に寄り添うタイプで、ミュージシャンの絶妙なアシストをするような振る舞いをする。
ジャズは文字通り等身大的な表現が得られる。音像の立体的な表現が凄い。ヴォーカルは音像の輪郭線がないリアルな歌声が音場に浮かび上がる。音像の質感には上品な甘みがあって耳に心地よい。クラシックはメータ/ウィーン・フィルによるマーラー2番の冒頭を聴いたのだが、通常のエレクトロニクスでは聴くことのできない精妙なダイナミクス表現がなされた。低弦の恐ろしげな動きがリスニングポジションに襲い掛かってくるかのようだ。名演奏の真相をここまで明らかにしてくれるアンプを、私は寡聞にして知らない。まさに究極の真空管アンプである。
Specification ●定格出力:50W @1kHz, 5% THD●周波数特性:8Hz〜40kHz(+0dB -3dB @ 1W)●出力インピーダンス:4Ω、8Ω、16Ω (内部ジャンパー切換式)●サイズ:320W×558D×370Hmm(突起部含まず)●質量:62kg●取り扱い:(株)オーディオ・ノート
※本記事は「季刊analog」60号所収記事を転載したものです。本誌の購入はこちらから。