公開日 2018/12/26 06:15
「正しい」「間違っている」を瞬時に判断できるDAC。MYTEK「Manhattan DAC II」導入の理由
ES9038PROを搭載したフラグシップDAC
MYTEK DigitalのフラグシップD/Aコンバーター「Manhattan DAC II」を、オーディオライター 秋山真氏は自宅システムに導入している。スタジオエンジニアとしての経験もバックボーンに、オーディオ再生を日々追求する同氏は、なぜ数あるD/Aコンバーターの中から本機を導入を導入したのか。その理由、そしてManhattan DAC IIに思うところをレポートしてもらった。
■秋山真の「Manhattan DAC」導入物語
今年の2月からPHILE WEBで書かせてもらっている筆者だが、これまで担当した記事は映像関係ばかりだったので、これが記念すべき初のオーディオ機器のレビューとなる。とはいえ、今回取り上げるのは、私が実際に自宅で使用しているMYTEKの「Manhattan DAC II」だ。2015年4月に前モデルの「Manhattan DAC」を導入し、それを昨年秋に“2”にアップグレードした個体だが、かれこれ3年半以上愛用していることになる。なんだか、自分の家族を紹介しているようで少し気恥ずかしくもある。
では、なぜ筆者が数あるDACの中からManhattan DACをチョイスしたのか、まずはそのあたりからお話しさせて頂きたい。
MYTEKの製品を初めて聴いたのは、さらに遡って2013年の秋になる。その年の5月に米国から帰国した私は、日本でのオーディオシステムの再構築を開始。その際にシステムの核として目を付けていたのが、同社の出世作とも言える「Stereo 192-DSD DAC」だった。そして、ちょうど時を同じくして、AV REVIEW誌で連載記事を持たせてもらうことになり、さっそく職権乱用でデモ機を自宅で試聴する機会に恵まれたのであった。
Stereo 192-DSD DACに目を付けた理由は主に2つ。1つはその頃に本格化し始めたファイル再生に対応させるため。もう1つはSACDを高音質で再生するためだった。と、ここで「ん?前者は分かるけど後者はどういうこと?」と思った読者もおられるだろう。もう時効だから話すが、当時(今も心は)皿回し派だった私は、SACD特有のナヨナヨした音質に「以前スタジオで聴いたDSD録音はこんな音ではなかった!」と大いに不満を持っていた。そんな折にeBayで1台の激レアなSACDプレーヤーを発見したのだ。
見た目はソニーの「SCD-777ES」(北米仕様なので本体色はブラック)そのものなのだが、リアパネルに本来製品版には無いはずのSDIF-3出力(DSD伝送に対応した業務用デジタルインターフェース)が装備されていた。出処は不明だが、おそらくどこかのスタジオからの流出品だろう。光の速さで落札した私は、それ以来「SDIF-3を使って業務用DACと組み合わせれば、ひょっとしたら…」と密かな野望を抱いていたのである。するとStereo 192-DSD DACのマスタリングバージョン(型番の末尾にMが付く)にはSDIF-3入力があるじゃないですか!
この目論見は見事に的中した。SACDならではのニュアンスたっぷりのエアー感はそのままに、あのナヨナヨ感が払拭されたのだ。SCD-777ESはおろか、「SCD-DR1」でも克服できなかった長年の課題に、ようやくピリオドが打たれた瞬間だった。このビシッと背骨が1本通った芯のあるDSDサウンドは、スタジオ機器をルーツに持つMYTEKならではのものだろう。もちろんPC経由でDSDファイルを再生した際にも同じ恩恵が受けられる。
しかし悩んだ末、Stereo 192-DSD DAC Mは購入に至らなかった。やはりサイズから来る制約だろうか。ストレートな再生音ではあるのだが、物量投入型のハイエンドDACと較べると、スケール感や1音1音の磨き込みという点において、及ばない部分があったのだ。もちろん価格を考慮すれば120点の製品ではあったのだが…。
だから、翌年Manhattan DACが発表された際には、職権乱用パート2を発動して速攻で試聴させてもらった。絶対に良いという確信はあったが、実際のサウンドはそれ以上だった。ちなみにデザインも私の予想の遥か斜め上を行っていた(笑)。そこから貯金を開始して、2015年4月に晴れて我が家にお迎えできた、というのが筆者のManhattan DAC導入物語である。
■良い意味での“超・没個性”なトーンこそMYTEKの美点
とにかく多機能なMYTEK社のDACだが、真っ先に美点として挙げたいのは、サンプリングレートやフォーマットの違いによって、帯域バランスや音色が変化しないことだ。
■秋山真の「Manhattan DAC」導入物語
今年の2月からPHILE WEBで書かせてもらっている筆者だが、これまで担当した記事は映像関係ばかりだったので、これが記念すべき初のオーディオ機器のレビューとなる。とはいえ、今回取り上げるのは、私が実際に自宅で使用しているMYTEKの「Manhattan DAC II」だ。2015年4月に前モデルの「Manhattan DAC」を導入し、それを昨年秋に“2”にアップグレードした個体だが、かれこれ3年半以上愛用していることになる。なんだか、自分の家族を紹介しているようで少し気恥ずかしくもある。
では、なぜ筆者が数あるDACの中からManhattan DACをチョイスしたのか、まずはそのあたりからお話しさせて頂きたい。
MYTEKの製品を初めて聴いたのは、さらに遡って2013年の秋になる。その年の5月に米国から帰国した私は、日本でのオーディオシステムの再構築を開始。その際にシステムの核として目を付けていたのが、同社の出世作とも言える「Stereo 192-DSD DAC」だった。そして、ちょうど時を同じくして、AV REVIEW誌で連載記事を持たせてもらうことになり、さっそく職権乱用でデモ機を自宅で試聴する機会に恵まれたのであった。
Stereo 192-DSD DACに目を付けた理由は主に2つ。1つはその頃に本格化し始めたファイル再生に対応させるため。もう1つはSACDを高音質で再生するためだった。と、ここで「ん?前者は分かるけど後者はどういうこと?」と思った読者もおられるだろう。もう時効だから話すが、当時(今も心は)皿回し派だった私は、SACD特有のナヨナヨした音質に「以前スタジオで聴いたDSD録音はこんな音ではなかった!」と大いに不満を持っていた。そんな折にeBayで1台の激レアなSACDプレーヤーを発見したのだ。
見た目はソニーの「SCD-777ES」(北米仕様なので本体色はブラック)そのものなのだが、リアパネルに本来製品版には無いはずのSDIF-3出力(DSD伝送に対応した業務用デジタルインターフェース)が装備されていた。出処は不明だが、おそらくどこかのスタジオからの流出品だろう。光の速さで落札した私は、それ以来「SDIF-3を使って業務用DACと組み合わせれば、ひょっとしたら…」と密かな野望を抱いていたのである。するとStereo 192-DSD DACのマスタリングバージョン(型番の末尾にMが付く)にはSDIF-3入力があるじゃないですか!
この目論見は見事に的中した。SACDならではのニュアンスたっぷりのエアー感はそのままに、あのナヨナヨ感が払拭されたのだ。SCD-777ESはおろか、「SCD-DR1」でも克服できなかった長年の課題に、ようやくピリオドが打たれた瞬間だった。このビシッと背骨が1本通った芯のあるDSDサウンドは、スタジオ機器をルーツに持つMYTEKならではのものだろう。もちろんPC経由でDSDファイルを再生した際にも同じ恩恵が受けられる。
しかし悩んだ末、Stereo 192-DSD DAC Mは購入に至らなかった。やはりサイズから来る制約だろうか。ストレートな再生音ではあるのだが、物量投入型のハイエンドDACと較べると、スケール感や1音1音の磨き込みという点において、及ばない部分があったのだ。もちろん価格を考慮すれば120点の製品ではあったのだが…。
だから、翌年Manhattan DACが発表された際には、職権乱用パート2を発動して速攻で試聴させてもらった。絶対に良いという確信はあったが、実際のサウンドはそれ以上だった。ちなみにデザインも私の予想の遥か斜め上を行っていた(笑)。そこから貯金を開始して、2015年4月に晴れて我が家にお迎えできた、というのが筆者のManhattan DAC導入物語である。
■良い意味での“超・没個性”なトーンこそMYTEKの美点
とにかく多機能なMYTEK社のDACだが、真っ先に美点として挙げたいのは、サンプリングレートやフォーマットの違いによって、帯域バランスや音色が変化しないことだ。