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公開日 2023/05/10 09:52

高性能な最新ブックシェルフスピーカー、20万円以下の“ステップアップ“モデルを探せ!

20万以下小型スピーカーを一斉視聴<後編>
峯岸良行
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最新ブックシェルフスピーカー10モデルを一斉試聴!



ハイレゾやストリーミングサービスの発展により、小型スピーカーに求められる性能も非常に高いものになってきている。コンパクトでも音質に妥協のない製品も増えてきたが、そのサウンドキャラクターはユーザーの細かなニーズに答えるべく、ブランドや製品ごとに、個性豊かで豊富なバリエーション展開を見せている。


そんな小型スピーカーの中でも、人気の10機種を音元出版試聴室に集めて一気に試聴するのが今回の企画だ。前回の〈前編〉10万円未満の注目5機種に続き、〈後編〉10万円以上20万円以下の “ステップアップ” モデル5機種を紹介しよう。

試聴楽曲は前編に引き続き4曲をセレクト。クラシック、ジャズから最新のEDMまでチェックした

TECHNICS「SB-C600」 - 各楽器が明確に定位し音色の違いも楽しめる -



TECHNICS(テクニクス)は、パナソニックのオーディオブランドで、一時休止していたが2014年に復活。アナログプレーヤー「SL-1200」シリーズの人気は高く、ハイファイからDJユースまで使われている。CDプレーヤーやアンプ、スピーカーまで自社で開発しており、日本メーカーらしい堅牢かつ真面目な開発スタイルが特徴だ。

TECHNICS「SB-C600」(110,000円/ペア・税込)

SB-C600は、テクニクスの点音源・リニアフェーズ思想を継ぐブックシェルフスピーカー。150mmコーン型ウーファーと25mmドーム型トゥイーターを搭載。高域の位相ずれに起因する特性の乱れを補正する「Linear Phase Plug」をトゥイーターに採用しており、振動板のドームの高さに起因する位相差を補正するという。出力音圧レベルは83dB。クロスオーバー周波数は2,000Hzだ。

「SB-C600」の背面。シンプルなシングルワイヤ端子で、バスレフポートは前面に搭載される

同軸2ウェイユニットで、トゥイーターの前方に搭載された「Linear Phase Plug」が位相特性を補正し自然な再現を実現する

アンネ・ゾフィ・ムター「ます」 の試聴で最初に感じたことは、中低域の歪み感の少なさ。チェロの基音と倍音はバランスを保って再生され、各楽器が明確に定位、音色の違いをきちんと再現している。パトリス・ジェグ「Jersey Bounce」はヴォーカルをやや主張したバランスで再生し、メロディ楽器の明確さを求める向きには良い。エリック・クラプトンはスネアのアタック感が心地良い。メロディーとハーモニーが聴き取りやすく、名曲からも新たな気づきが得られる。

MAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」は、音数が多く高密度なミキシングに埋もれがちなメロディーに明瞭さをプラスする再生音。エンクロージャーは板厚が十分にあって重量も重いため、中低域に付帯音が少ない。低歪みのためDSP補正とも相性が良さそう。

JBL「L52 Classic」 - 情報量が多く現代的で色づけ感少ないサウンド -



JBLは、アメリカ・カリフォルニア州で1946年に設立されたスピーカーブランドであり、日本で最も人気が高いブランドのひとつ。同社のスピーカーは、プロオーディオやホームシアター、カーオーディオなど幅広い分野で使用されており、独自の技術とパワフルで迫力のあるサウンドが特徴。

JBL「L52 Classic」 110,000円(ペア・税込)

L52 Classicは、19mm径チタンドーム・トゥイーターと133mm径ホワイト・ピュアパルプコーンウーファーを搭載。モダンクラシック・スタイル「Classic」シリーズの最小モデルとなる。Quadrexフォームグリルをブラック・オレンジ・ダークブルーの3色のカラーバリエーションを用意している。出力音圧レベルは85dB。クロスオーバー周波数は2,800Hzだ。

「L52 Classic」 の背面端子。シングルワイヤ端子のほか、壁掛け用のネジ穴も装備されている

フロントにはプロ機譲りの可変アッテネーターも装備

アンネ・ゾフィ・ムター「ます」からは、楽器それぞれのディテール感を豊かに感じ取れる情報量の多さを感じられる。各楽器の配置がふさわしく定位し、音色の違いもきちんと再現。パトリス・ジェグ「Jersey Bounce」はブラスセクションとヴォーカルのミキシングバランスが正確に再生される印象。

エリック・クラプトンでは、楽器の配置の正確な定位感と、回転スピーカーを通して録音されたハモンドオルガンの質感も、余すところなく感じることができる。「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」では、非常に手数の多いことが特徴的なベースも、音程の分離がよく、聴音が容易にできる。外観イメージと違って再生音は非常に現代的で色つけ感が少ないサウンドだ。

SONUS FABER「LUMINA I」 - 倍音豊かで演奏のディテールが感じ取れる -



イタリアのSONUS FABER(ソナス・ファベール)は、著名なスピーカーエンジニアであるフランコ・セルブリン氏が1983年に創業したブランドである。近年日本で急激に人気を高めており、特にLUMINAシリーズは、10万円前後という価格で、革張りと木目のデザインを生かしたスピーカーとして、爆発的なヒットを記録している。

SONUS FABER「LUMINA I」 118,000円(ペア・税込)

「LUMINA I」は、7層構造のプライウッドをフロントバッフルに採用し、エンクロージャー全体をレザー素材で包みこんで音響を制御する。独自のパラクロス・ネットワークと呼ばれるクロスオーバーによって独特の自然な位相感を実現。12cmコーン型ウーファー、2.9cm口径DADシルク・ソフトドーム型トゥイーターで構成。出力音圧レベルは84dB。クロスオーバー周波数は2,000Hzだ。

「LUMINA I」の背面端子。バイワイヤリング接続に対応、底部がバスレフポートとなっている

フロントバッフルは7層構造の木材、エンクロージャーはレザーと異なる素材を組み合わせる仕上げもイタリアン・デザインならでは

アンネ・ゾフィ・ムター「ます」の試聴では、バイオリンの演奏の強弱に応じた倍音が豊かで、演奏のディテールが容易に感じ取れる。パトリス・ジェグ「Jersey Bounce」の冒頭のハイハットは不自然なピークがなく耳あたり良い再生で、ヴォーカルとブラスのバランス感も良好。

エリック・クラプトンも楽器間のバランスを保って再生されたように、録音方式が異なる音源でも統一感のある再生音で楽しめる。MAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」は、スピーカーの外側まで広がるステレオイメージの広さで、現代的な音楽表現にも合っている。

FOCAL「ARIA906」 - 楽器の質感をリアリティ豊かに感じられる -



FOCAL(フォーカル)は、1979年にフランスで創業した高級スピーカーメーカーである。同社は自社工場での設計、製造、組み立てを一貫して提供しており、多くの音楽プロデューサーやオーディオ愛好家に愛用されている。 ブックシェルフスピーカーから、「UTOPIA III EVO」などの超大型フロア型スピーカーまで幅広いラインナップを擁する。

FOCAL「ARIA 906」 178,200円(ペア・税込)

カー用スピーカーやヘッドホンなども製造しており、最近は「UTOPIA SG」という60万円クラスのヘッドホンでも注目を集めている。ホームシアター用からカーオーディオまで手掛ける、スピーカーのプロフェッショナルである。

「ARIA 906」の背面端子。シンプルなシングルワイヤリング端子で、キャビネットは縦長形状となっている

フォーカル独自のインバーテッド・ドーム(逆ドーム)トゥイーター。素材はアルミニウムとマグネシウム合金で構成。フロントの革張りもこだわり

ARIA 906は、一般的なドームトゥイーターとは逆側にへこんだインバーテッドドームと呼ばれる独自のトゥイーターを採用。16.5cmFlaxコーンウーファー、25mmアルミトゥイーターを搭載。出力音圧レベルは89.5dB。クロスオーバー周波数は2,800Hzだ。

アンネ・ゾフィ・ムター「ます」の試聴では、各楽器の位置関係が正確に定位し、音色の違いをしっかり聴きとることができる。パトリス・ジェグ「Jersey Bounce」もヴォーカルの基音と倍音のバランスがリアリティ豊かに再生され、イントロのハイハットが耳に優しく心地よい。

エリック・クラプトンは歪んだスライドギターの質感がリアルで、MAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」のような音圧があり高域成分のエネルギーが高いソースも、耳に優しく聴きやすい。意外とニアフィールドリスニングにも向いていることがわかった。

KEF「LS50 Meta」 - 録音時の質感まで情報量豊かに再現 -



KEF(ケーイーエフ)は、1961年創業のイギリスの老舗ブランド。先進的な技術への取り組みも早く、アクティブスピーカーやネットワークスピーカーも積極的に展開している。また、Hi-Fiと “おしゃれ” を両立できるブランドのひとつであり、完全ワイヤレスイヤホンやヘッドホンなども展開している。高音域のドライバーと低音域のドライバーを一つの装置に組み込んだUni-Qドライバーテクノロジーにより、自然で臨場感あるサウンドに定評がある。

KEF「LS50 Meta」 187,000円(ペア・税込)

LS50 Metaは、2012年に発売されて大ヒットしたLS50に、独自技術MATを搭載してリチューニングしたもの。13cmマグネシウム/アルミニウム合金ウーファー 、25mmアルミドームトゥイーターによる同軸ユニットを引き続き搭載。MATは特別な構造を持つ素材で、ドライバー後方から出る不要なサウンドの99%を吸収するという。

LS50 metaの背面端子。シングルワイヤの端子に、縦長形状のバスレフポートを搭載

独自のMetamaterial Absorption Technologyを搭載した、第12世代のUni-Qドライバー。曲線デザインのフロントバッフルも大きな特徴

アンネ・ゾフィ・ムター「ます」の試聴では、音場の広がり感とリバーブの包まれ感を適度に持ち、バイオリンは歪み感が少なく原音に忠実。パトリス・ジェグ「Jersey Bounce」では、イントロのハイハットが始まった瞬間に高域特性の優秀さを垣間見ることができる。ボーカルの基音と倍音のバランスがふさわしく再生され、ブラスセクションとのバランスと質感の再現も申し分ない。

エリック・クラプトン「Motherless Children」は情報量豊かに再生し、アナログテープの質感や録音とミキシングの過程で生じたボーカルの歪み感と倍音に気がつくことができる。



今回音元出版の試聴室で、人気のあるパッシブブックシェルフスピーカー10機種を比較試聴したのだが、リスニングポジションでは室内音響の影響が大きかったものの、予想以上に各スピーカーの音色の違いを実感することができた。

パッシブスピーカーの醍醐味の一つは、高品質なパワーアンプと組み合わせでより音楽的な性能を引き出したり、ケーブルやアイソレーターなどのアクセサリーを使用して音質を調整できることである。これらのアクセサリーを使って音を調整することは、新たな楽しみを見出す趣味でもある。これらのパッシブブックシェルフスピーカーは、性能だけでなく素晴らしい趣味としてのポテンシャルを持っていることをお伝えしたい。

前編はこちら
前編のスピーカーはPOLK AUDIO「Monitor XT15」、KLIPSCH「R40M」、PARADIGM「MONITOR SE ATOM」、MONITOR AUDIO「Bronze 50-6G」、ELAC「DBR 62」の5モデルが登場!


峯岸良行・プロフィール
prime sound studio form所属のマスタリング・ミックスエンジニア。名古屋芸術大学サウンドメディア・コンポジションコース非常勤講師。作曲家としてLittle Glee Monsterや桜坂46などのアイドルグループの作品に携わるほか、トヨタ、三菱、JT、任天堂などの広告音楽も手がけ、イマーシブオーディオにもいち早く取り組んできた。「ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」ほか、全国のカーオーディオコンテストの審査員も務めている。

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