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公開日 2023/09/05 06:40

オーディオ的にもガジェット的にも遊べるハイコスパプレーヤー「WiiM」。アナログプレーヤーやTWSとの組み合わせもチェック!

独自ネットワークプロトコルでオーディオを伝送
佐々木喜洋
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話題のハイコスパネットワークプレーヤー、WiiMの多機能性



WiiMは米国Linkplay社が開発した低価格のネットワークプレーヤーだ。コスパの高いネットワーク機材として少し前からネットで話題だったが、この4月にMUSINが代理店として取扱いを開始し、技適(技術基準適合証明)やPSEを取得して正式な国内流通が始まった。

「WiiM Pro」(オープン価格、市場想定価格20,000円前後/以下税込)

「WiiM Mini」(オープン価格、市場想定価格13,000円前後)

WiiMは単体でも便利に使用することができるが、その真価を発揮するのは複数台を組み合わせてネットで使用したときだ。今回その試聴をしてみた。

WiiMには「WiiM Pro」と「WiiM Mini」の2種類がある。以降まとめて呼称する場合にはWiiMデバイスと呼称する。Linkplay社はYAMAHAやJBLなどにネットワークソリューション技術を提供しているメーカーだが、自社ブランドとして開発したものがWiiMデバイスだ。

WiiM Proはapple TVのような四角形の機材で、入出力が多くS/PDIFやRCA端子などより本格的な使用が可能だ。WiiM Miniはとても小さく丸い筐体で、アナログ端子はRCAではなく3.5mmとなっている。WiiM Miniはコンパクトな形で操作ボタンが大きく表示されているので一見するとリモコンのように見えるが、実は機能的にはほとんどWiiM Proと同じだ。このためWiiM ProとWiiM Miniは相互互換的に同じように使うことができる。これが一つのポイントだ。

「WiiM Pro」の背面端子。RCAとS/PDIFの入力も搭載しており、さまざまな組み合わせが可能となる

もう一つのWiiMデバイスのポイントは出力だけではなく、入力ができることだ。私が初めてWiiM Proを手にして機材を眺めながらふと疑問に思ったのが、アナログ入力端子があるということだ。ネットワークプレーヤーにアナログ出力端子があるのは普通だが、ちょっと面白い仕様だ。まずこの入力をどのように使うのだろうかと疑問に思い、そこからWiiMデバイスがとてもユニークなネットワークシステムを構成できるということがわかってきた。

WiiMデバイスではネットワーク機器としてAirPlayやBluetooth、Google Cast、DLNAやRoonReadyなどの汎用形式に広く対応しているが、さらにLinkplay社の独自形式にも対応している点も注目すべきポイントだ。この独自形式を用いてWiiMデバイスを複数台「グループ」として組み合わせて、マルチルームシステムやステレオペアの作成ができる。マルチルームシステムというのは複数の部屋に置かれたオーディオ機器を相互に連携・再生することで、ステレオペアというのは同じ部屋の左右スピーカーに、それぞれWiiMデバイスを接続して、チャンネルごとに再生するというようなものだ。

基本の再生や設定は、専用の「WiiM Home」アプリを使用する。今回はWiiM ProとWiiM Miniを一台ずつ用意して、ストリーミング再生からステレオペアの作成、マルチルームシステムの作成まで、さまざまな使い方を探ってみた。

WiiMの専用操作アプリ「WiiM Home」。楽曲選択や入力切り替え、ボリュームコントロールなど基本操作はこのアプリで行える。複数のデバイスもひとつのアプリ上で一元的に操作できる

最初の設定として、WiiM ProとWiiM MiniそれぞれにWiFiを設定する。これで、WiiM Homeアプリ上から二台のWiiMデバイスが見えることになる。

基本設定は、まずデバイスをWiFiネットワークに接続させる。電源を入れると自動的に近くのデバイスが表示される

それぞれのWiiMデバイスには入出力の状態やそれぞれで再生している楽曲が表示される。Roonのゾーンに似た概念とも言える。それぞれのWiiMデバイスをクリックするとそのWiiMデバイスで再生する楽曲のリストを選択する画面が現れる。ストリーミングサービスやローカル音源が選択できるが、各WiiMデバイスで別々に再生が可能な点もRoonのゾーンに似ている。

楽曲の再生画面。ある程度ネットワークプレーヤーのアプリを使用したことがあれば直感的に操作できるだろう

WiiMと連携できるストリーミングサービス。Amazon Musicは利用できるが、Apple Musicとは連携していない

Amazon music等いくつかのストリーミングサービスに対応するが、開発元に聞いてみたところ、WiiMデバイス上で直接ストリーミングを受けることができるようだ。このため、ハイレゾ再生をする際にはBluetoothやAirPlayを使ってスマホから飛ばすよりも、WiiM Homeアプリを使用してWiiMデバイスでストリーミングを受けたほうが音質面で有利となる。

アクティブスピーカーと接続するだけで再生環境が実現!



初めにWiiM Proを一台用いて、ネットワークプレーヤーとしてアクティブスピーカーに接続して単体での使い方を説明する。これが最もわかりやすく使いやすい例だと思う。

ヤマハのアクティブモニター「MSP3A」(オープン、市場実売価格35,000円前後)と接続するだけで、シンプルなストリーミング再生システムが完成!

この組み合わせではWiiM ProのRCAアナログ出力端子に、別に用意したRCAケーブルを用いてYAMAHAのアクティブスピーカー「MSP3A」を接続した。操作はWiFi経由でWiiM Homeアプリから行い、画面上のWiiM Proを選択して設定メニューからアナログ出力を選択する。そして音源を表示する[Browse]メニューから再生指示する。

音質も誇張感が少なく自然で良好な音質だ。低域は多少軽めだが、中高域は端正な表現でヴォーカルも明瞭で楽器音も美しい。この価格帯のオーディオシステムとしてはなかなか良いと思う。「MSP3A」はペア3.5万円ほどなので、価格的にも良い組み合わせだと思う。

Amazon MusicをWiiM Homeアプリから再生すれば192kHz/24bitのハイレゾ音源も再生できるので、手軽にハイレゾ再生ができるシステムだといえる。

Amazon musicから再生したところ。192kHz/24bitのハイレゾ音源も再生できる

この同じ組み合わせをWiiM Miniでもテストした。WiiM Miniは3.5mmステレオミニ端子のみが装備されているので、付属の3.5mmからRCA端子に接続するケーブルを使用して同様に「MSP3A」に接続した。音を聴いてみると、WiiM Proより音質の鮮明度は落ちるが、全体の音質は悪くない。WiiM ProとWiiM Miniでは音質や端子の違いはあれども、機能的にはほとんど同様に扱うことができるのがわかると思う。

ステレオペアの作成とマルチルーム再生をチェック!



次に、ここからがWiiMデバイスの本領発揮となるのだが、デバイスのグループ化をテストしてみた。まずWiiM ProとWiiM Miniを使用してステレオペアを構成する。これは左右の「MSP3A」にそれぞれ別のWiiMデバイスを割り当てて再生させるというものだ。このテストではWiiM Proを右側、WiiM Miniを左側に割り当てる。左右なので本来はProとPro、あるいはMiniとMiniのように同じ機器を使用したほうがよいが、今回はそれぞれ一台ずつしか手元にないので、参考ということで考えてもらいたいと思う。またこのことによりProもMiniも機能的にほぼ同様に扱えるということもわかりやすいと思う。

(現実にこの接続はありえないが)、左のスピーカーにWiiM mini、右のスピーカーにWiiM Proを接続し、ステレオ再生を実現することもできる

まず右の「MSP3A」スピーカーに割り当てるWiiM Proの右側RCA端子から「MSP3A」の右側RCA入力端子にケーブルで接続し、左のスピーカーに割り当てるWiiM MiniのRCA端子の左側のみを「MSP3A」の左側に接続する。そしてWiiM Homeアプリ上に表示されている両者をリンクアイコンで同一グループとしてリンクさせる。それぞれ別々の「ゾーン」だったものを単一の「ゾーン」とするようなものだ。そして、それぞれWiiM ProをR出力、MiniをL出力として設定する。

ステレオペアをグループした場合の表示。LとRへの出力として設定されている

このようにしてグループとして音楽を再生すると、二台のスピーカーからステレオで音楽再生ができる。今回は左右別機材を用いた変則的な組み合わせなので音質的にはコメントはしないが、左右同じ機器を使用すれば、同じ部屋の離れた場所のスピーカーの設置をケーブルの取り回しに苦労せずに行うことができるだろう。スマートスピーカーのステレオペアにも似ているが、WiiMデバイスを使えば自分で好みのスピーカーを選ぶことができる。

次に同じくグループ化機能を用いてマルチルームシステムを組んでみた。(実際には同じ部屋だが)マルチルームを想定して、書斎にあるアナログプレーヤーの音(下記の写真右)を、リビングルームにあるスピーカーから再生する(写真左)というシステムを想定した。アナログプレーヤーにはWiiM Mini、スピーカーにはWiiM Proを組み合わせる。

マルチルームを想定したシステムを構築。アナログプレーヤーをWiiM経由でワイヤレス伝送し、別の部屋のアクティブスピーカーで聴くといったことも可能になる

具体的にいうとティアックのアナログプレーヤー「TN-350-SE」のRCAアナログ出力をWiiM Miniの3.5mmアナログ入力に付属ケーブルで接続する。TN-350-SEは直接RCAラインアウト出力を取り出すことができるが、他のターンテーブルなどではフォノイコライザーを通すことになるだろう。これが送信側となる。受け手側はWiiM Proになるので、同一WiFi上にあるWiiM ProのRCA出力端子から先ほどと同様にアクティブスピーカー「MSP3A」にRCAケーブルで接続する。

ティアックのアナログプレーヤー「TN-350-SE」(オープン、直販サイト価格は49,280円)とWiiM miniをアナログで接続。TN-350-SEはフォノイコライザーも通したアナログ出力に設定している

グループ化はステレオペアの時と同様にWiiM Homeアプリで行う。WiiM Miniの入力設定を行い、WiiM Proの出力設定を行なってリンクアイコンでグループ化を行う。そうすると入力設定されたWiiM Miniの音声信号がグループ化されたWiiM Proに送信される。

マルチルーム再生ができるようにグループ化したところ。右上のリンクアイコンから設定できる

こうすることで、レコードの音がWiFiを通じて「MSP3A」から再生される。慣れてしまえば簡単だが、ちょっと不思議な感覚だ。音質はなかなか優れているが、WiiMデバイス経由では直接接続に比べて多少音声の遅延がある。またLPレコードのパチパチとしたノイズが、直接接続した場合に比べてデジタル的というか、多少増幅されるようには感じられる。この理由はわからない。ただアナログ的、あるいはデジタル的な調整の余地はあると思う。

完全ワイヤレスイヤホンとも接続してみよう



WiiMデバイスにはBluetooth送信機能もあるので、発売されたばかりのソニー「WF-1000XM5」を組み合わせてみた。アナログプレーヤーはそのままで、受信側のWiiM Proに「WF-1000XM5」を組み合わせる。ちなみにiPhoneで「WF-1000XM5」を軽く試してみたが、ノイキャンの効きも音質も良く、最新機種らしい優れたイヤフォンだ。

ソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」(オープン、市場実売価格は42,000円前後)と組み合わせてテスト

手順としてはWiiM Homeアプリを用いて、受信側のWiiM Proの出力設定においてBluetoothのペアリングを指示する。そうするとWiiM Homeアプリ上にスマートフォンのBluetooth設定のような画面が表示されて、そこに「WF-1000XM5」が現れるのでそれをペアリングする。とても簡単だ。

Bluetoothを搭載していないアナログプレーヤーをワイヤレスイヤホンで聴くことができる訳だが、音質の低下もあまり感じられず、高音質にレコード再生を楽しむことができた。レコードプレーヤーのパチパチ入る音を最新の完全ワイヤレスから聴くのはなかなかユニークで面白い体験だった。むしろ「WF-1000XM5」の自然で高音質なサウンドは、レコードの音にも向いているのかもしれない。

別部屋に移動し、「WF-1000XM5」でレコードの音を聴けるかチェック

ちなみにこのグループ化機能のネットワークプロトコルはLinkplay社の独自技術だと言う。つまり、このグループ化はWiiMデバイス同士でのみ可能となる。今回は二台のみだが、実際はグループ全体にブロードキャストで行われているようで、さらに台数を増やすこともできるようだ。また、プリセットイコライザーや遅延の調整機能なども備えており、まだまだ使いこなしの幅がありそうだ。

それぞれの機器へのレイテンシーの設定やイコライザー機能なども搭載している

WiiMデバイスは音楽の再生にしてもシステムにしても柔軟すぎて戸惑うほどの豊富な機能を持った機材だ。さらにAmazonやGoogleの音声入力とさえ組み合わせることができるので、オーディオファンにもガジェットファンにも楽しめる側面を持っている。価格が安いのでいくつか買って組み合わせてみるというのもやりやすい。

まず一台購入して安価なネットワークプレーヤーとして家のパワードスピーカーと組み合わせてみてから買い増しするのもよいかもしれない。またステレオペアの構成を目当てにはじめからWiiM Miniを二台買ってみるのも面白い。

ある意味でネットワークオーディオを子供の頃のブロック遊びで組み上げてゆくような面白さをもったオーディオ機材だといえるだろう。

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