PR 公開日 2024/08/14 07:00
ラックスマン新開発部長・田村通浩氏に聞くスタンダードプリメイン「L-505Z」の魅力
高忠実度に加えて質感の上質さもさらに向上
来年2025年に創業100周年を迎える、日本の老舗オーディオブランド「LUXMAN(ラックスマン)」。同社次世代の増幅帰還エンジン「LIFES」を搭載するコンポーネントが国内外で高い評価を獲得し、さらにブランドの存在感を強めている昨今だが、この度、その「LIFES」が満を持してプリメインアンプの最廉価モデルとなる“505シリーズ”へと投下された。
その開発のキーパーソンとなったのが、新たに開発部部長へと就任した田村通浩氏だ。本稿では、新スタンダードプリメイン「L-505Z」の魅力を掘り下げるとともに、田村氏のキャリアや開発ビジョンに迫ることで、ラックスマンの製品開発や製品そのものの魅力に迫っていきたい。
ラックスマンのプリメインアンプ505シリーズは、1990年代から続く同社の「顔」とも言えるスタンダードモデルだ。同社サウンドの粋を、フルサイズコンポのプリメインという枠組みに、もっとも価格を抑えて落とし込んだものである。幅広いユーザー層にラックスマンというブランドの魅力を伝搬させる役目を持つだけに、ブランドにとっても極めて重要な位置づけの製品と言える。
実際にラックスマンとしても、「初めてのラックスマン製品という方だけでなく、これ以上高単価の製品は望まないという方もいらっしゃり、広告戦略的な意味合いも込めて企業努力を重ねているモデル」ということで、相当な力の入れようが伝わってくる。
出力は、旧機同様に150W+150W(4Ω)という充分なパワーを確保するとともに、パワーアンプステージには次世代増幅帰還回路「LIFES」を搭載。内部で独立したプリアンプステージは、音質を吟味して選定された新パーツによるディスクリートバッファー回路によって構成されている。
電源部は実績あるEIトランスを継承しつつブロックコンデンサは容量アップを果たしたほか、各所のコンデンサをリードタイプから高品質なフィルムタイプへと置き換え、その数一台あたり約170個に及ぶなど、これまでの505シリーズでは使えなかった高価なパーツを大量に採用したというから驚きである。
さらに、内蔵のフォノアンプも、上位モデル同様に初段をパラレル化することで回路仕様をグレードアップ。機能面でも、針式レベルメーター中央部に配置された7セグメントLEDによる音量表示や、グラウンド配線左右独立のΦ4.4mmヘッドホン出力端子が新設されるなど、509や507のZ世代化でも新搭載されたアップデートが継承されている。
なお、同社製プリメインの顔とも言える2つの大きな針式メーターだが、実はこのメーターの基本回路設計は、田村氏が1995年にラックスマンへ入社してすぐに手掛けたものだという。さらに、田村氏は旧モデル「L-505uXII」の開発を担当していたこともあり、新モデルはその旧型機の筐体構造や電源回路も踏襲されているため、基本的な構成に関してはほとんど田村氏が手掛けたモデルということができる。
試聴してすぐに実感するのは、ラックスマンらしい実直なサウンドバランスと、快活な音楽表現である。筆者は以前にもこのL-505Zを試聴しているが、その時とは異なるスピーカーを駆動している今回の取材時でも、その際と違わぬ印象を受けた。
音色バランスは、ソースに対して高い忠実度を実現しながらも、決して硬くなったり耳に厳しい表現になったりしない。それどころか、先代の「L-505uXII」と比べると、単に忠実なだけでなく、質感の上質さ、端正さに磨きがかかっていることに気付かされる。加えて、オーディオ装置としての性能向上を感じつつも、音楽の躍動感がしっかりと担保されていることに、ラックスマンの開発力の高さを実感させられる。
ジャズのピアノトリオではその躍動感の高さが如実にあらわれた。ドラムスのシンバルレガートはスムーズながらもレスポンスよくシャッフルし、機嫌よく音楽の車軸を回す。ピアノのタッチも軽快な跳ね感や強弱が自然なディティールで引き出され、実に楽しげに音楽を展開。肝心のウッドベースも、しっかりとしたボディを持ちながらも、明解な輪郭で立ち上がり、試聴したフォーカルスピーカーのボリューム感豊かな余韻を堪能させた。3人が一体となって踊るかのようなフィールが爽快なのだ。
また、ボーカルソースの歌声表現も充実している。ブレスや微細な口元の動きを忠実に再現する瞭然とした描写がありつつ、あくまでも質感が良く素直な表現であり、上質で開放的な歌唱が朗らかである。試聴したソースはドラムスのバスドラムの深い低音や重厚なエレクトリックベースを伴う楽曲であったが、歌声をはじめとするそれぞれの楽器の存在を、イーブンな関係で描き出すバランスの良さが光っていた。
楽器の数が多く収録会場が広いオーケストラソースでは、よりその開放感が活かされ、各楽器セクションのフレージングを分離よく、そして空間表現を風通し良く再現するさまに感心した。
これらの表現を支えているのが、同社の次世代増幅帰還回路である「LIFES」だろう。「LIFES」及びそれ以前のODNFの最大の特徴は、音楽信号の増幅アンプのほかに、入力と出力の誤差を検出して打ち消すためのアンプが別途設けられていること。これによって、帰還回路と言えど、無帰還的なサウンドを実現するとラックスマンは言明する。
「LIFES」の開発に主軸として関わった田村氏によると、「通常のフィードバックアンプでは、ノイズや歪みの特性を良くするためにゲインを高く設計して大きなフィードバックをかけますが、すると安定動作が難しくなり、結果として音質にも影響を及ぼしてしまいます。そこで「ODNF」や「LIFES」では、増幅と誤差検出を役割分担しています。典型的なフィードバックアンプでの増幅ゲイン80dB程度が最終的に30dB程度まで低下するのに対して、「LIFES」では増幅ゲインの低下が29.3dBから29.0dBへと僅か0.3dB程度で済みます。フィードバックをかけない状態とかけた状態とのゲイン差をほとんどなくすことができ、無帰還的な伸び伸びしたサウンドを実現できたのです」という。
ただ、その分、誤差検出用のアンプが必要になることで、回路が大きくなりコストがかかること、そして、回路設計自体が煩雑になってしまうデメリットがあるのだが、ラックスマンでは、製品に実用化される1999年よりも前、既に1990年代からノウハウを積み重ねてきたアドバンテージがあるため実現可能なのだという。
以上のようにL-505Zは、ラックスマンらしい、ソースに忠実で外連味のないサウンドバランスと快活な音楽表現が楽しめる、同社中で最も手頃なプリメインアンプである。
上位機の「L-507Z」や「L-509Z」と比べてもその魅力は全く見劣りするものでなく、むしろ、30万円代という価格帯でラックスマンの魅力を妥協することなく味わえる、非常にコストパフォーマンスが高いモデルということが、この度の試聴で再確認することができた。
取材の最後に、この度開発部長に就任した田村氏に、ラックスマン製品の魅力や今後の抱負もお話頂いた。
「我々は、幅広い製品バリエーションを少人数で開発するからこそ、バラツキのない、統一感のあるサウンドを実現できると自負しています。開発担当の全員がすべてのジャンルをカバーすることができるのが強みです。さらに、一人のトップが全体を見て統括することで、開発のDNAがしっかりと受け継がれてきた伝統があります。そしてその音質は、小手先の派手さや見掛け倒しではなく、演奏者の伝えたいことがきちんと伝わる正統的なものであり、それが今の評価につながっていると理解しています。私もそれを遵守し、ただひたすらにその伝統を進化させていきたいと思います」。
ラックスマンは、創業100周年を目前に、本年秋から順次記念モデルを登場させるとのことだ。先般発表され東京インターナショナルオーディオショーでもお披露目された新フォノイコライザーアンプ「E-07」やDAコンバーター「DA-07X」などに加え、詳細はまだ不明だが、弩級のヘッドホンアンプも登場する可能性があるとのこと。老舗ラックスマンが満を持して送り出す記念モデルが今から楽しみでならない。
(提供:ラックスマン)
その開発のキーパーソンとなったのが、新たに開発部部長へと就任した田村通浩氏だ。本稿では、新スタンダードプリメイン「L-505Z」の魅力を掘り下げるとともに、田村氏のキャリアや開発ビジョンに迫ることで、ラックスマンの製品開発や製品そのものの魅力に迫っていきたい。
幅広いユーザー層にラックスマンの魅力を伝える「505」ライン
ラックスマンのプリメインアンプ505シリーズは、1990年代から続く同社の「顔」とも言えるスタンダードモデルだ。同社サウンドの粋を、フルサイズコンポのプリメインという枠組みに、もっとも価格を抑えて落とし込んだものである。幅広いユーザー層にラックスマンというブランドの魅力を伝搬させる役目を持つだけに、ブランドにとっても極めて重要な位置づけの製品と言える。
実際にラックスマンとしても、「初めてのラックスマン製品という方だけでなく、これ以上高単価の製品は望まないという方もいらっしゃり、広告戦略的な意味合いも込めて企業努力を重ねているモデル」ということで、相当な力の入れようが伝わってくる。
出力は、旧機同様に150W+150W(4Ω)という充分なパワーを確保するとともに、パワーアンプステージには次世代増幅帰還回路「LIFES」を搭載。内部で独立したプリアンプステージは、音質を吟味して選定された新パーツによるディスクリートバッファー回路によって構成されている。
電源部は実績あるEIトランスを継承しつつブロックコンデンサは容量アップを果たしたほか、各所のコンデンサをリードタイプから高品質なフィルムタイプへと置き換え、その数一台あたり約170個に及ぶなど、これまでの505シリーズでは使えなかった高価なパーツを大量に採用したというから驚きである。
さらに、内蔵のフォノアンプも、上位モデル同様に初段をパラレル化することで回路仕様をグレードアップ。機能面でも、針式レベルメーター中央部に配置された7セグメントLEDによる音量表示や、グラウンド配線左右独立のΦ4.4mmヘッドホン出力端子が新設されるなど、509や507のZ世代化でも新搭載されたアップデートが継承されている。
なお、同社製プリメインの顔とも言える2つの大きな針式メーターだが、実はこのメーターの基本回路設計は、田村氏が1995年にラックスマンへ入社してすぐに手掛けたものだという。さらに、田村氏は旧モデル「L-505uXII」の開発を担当していたこともあり、新モデルはその旧型機の筐体構造や電源回路も踏襲されているため、基本的な構成に関してはほとんど田村氏が手掛けたモデルということができる。
高い忠実度を実現しながら質感の上質さをさらに磨き上げる
試聴してすぐに実感するのは、ラックスマンらしい実直なサウンドバランスと、快活な音楽表現である。筆者は以前にもこのL-505Zを試聴しているが、その時とは異なるスピーカーを駆動している今回の取材時でも、その際と違わぬ印象を受けた。
音色バランスは、ソースに対して高い忠実度を実現しながらも、決して硬くなったり耳に厳しい表現になったりしない。それどころか、先代の「L-505uXII」と比べると、単に忠実なだけでなく、質感の上質さ、端正さに磨きがかかっていることに気付かされる。加えて、オーディオ装置としての性能向上を感じつつも、音楽の躍動感がしっかりと担保されていることに、ラックスマンの開発力の高さを実感させられる。
ジャズのピアノトリオではその躍動感の高さが如実にあらわれた。ドラムスのシンバルレガートはスムーズながらもレスポンスよくシャッフルし、機嫌よく音楽の車軸を回す。ピアノのタッチも軽快な跳ね感や強弱が自然なディティールで引き出され、実に楽しげに音楽を展開。肝心のウッドベースも、しっかりとしたボディを持ちながらも、明解な輪郭で立ち上がり、試聴したフォーカルスピーカーのボリューム感豊かな余韻を堪能させた。3人が一体となって踊るかのようなフィールが爽快なのだ。
また、ボーカルソースの歌声表現も充実している。ブレスや微細な口元の動きを忠実に再現する瞭然とした描写がありつつ、あくまでも質感が良く素直な表現であり、上質で開放的な歌唱が朗らかである。試聴したソースはドラムスのバスドラムの深い低音や重厚なエレクトリックベースを伴う楽曲であったが、歌声をはじめとするそれぞれの楽器の存在を、イーブンな関係で描き出すバランスの良さが光っていた。
楽器の数が多く収録会場が広いオーケストラソースでは、よりその開放感が活かされ、各楽器セクションのフレージングを分離よく、そして空間表現を風通し良く再現するさまに感心した。
誤差検出アンプにより伸び伸びしたサウンドを実現
これらの表現を支えているのが、同社の次世代増幅帰還回路である「LIFES」だろう。「LIFES」及びそれ以前のODNFの最大の特徴は、音楽信号の増幅アンプのほかに、入力と出力の誤差を検出して打ち消すためのアンプが別途設けられていること。これによって、帰還回路と言えど、無帰還的なサウンドを実現するとラックスマンは言明する。
「LIFES」の開発に主軸として関わった田村氏によると、「通常のフィードバックアンプでは、ノイズや歪みの特性を良くするためにゲインを高く設計して大きなフィードバックをかけますが、すると安定動作が難しくなり、結果として音質にも影響を及ぼしてしまいます。そこで「ODNF」や「LIFES」では、増幅と誤差検出を役割分担しています。典型的なフィードバックアンプでの増幅ゲイン80dB程度が最終的に30dB程度まで低下するのに対して、「LIFES」では増幅ゲインの低下が29.3dBから29.0dBへと僅か0.3dB程度で済みます。フィードバックをかけない状態とかけた状態とのゲイン差をほとんどなくすことができ、無帰還的な伸び伸びしたサウンドを実現できたのです」という。
ただ、その分、誤差検出用のアンプが必要になることで、回路が大きくなりコストがかかること、そして、回路設計自体が煩雑になってしまうデメリットがあるのだが、ラックスマンでは、製品に実用化される1999年よりも前、既に1990年代からノウハウを積み重ねてきたアドバンテージがあるため実現可能なのだという。
以上のようにL-505Zは、ラックスマンらしい、ソースに忠実で外連味のないサウンドバランスと快活な音楽表現が楽しめる、同社中で最も手頃なプリメインアンプである。
上位機の「L-507Z」や「L-509Z」と比べてもその魅力は全く見劣りするものでなく、むしろ、30万円代という価格帯でラックスマンの魅力を妥協することなく味わえる、非常にコストパフォーマンスが高いモデルということが、この度の試聴で再確認することができた。
「開発のDNAが連綿と受け継がれてきた」
取材の最後に、この度開発部長に就任した田村氏に、ラックスマン製品の魅力や今後の抱負もお話頂いた。
「我々は、幅広い製品バリエーションを少人数で開発するからこそ、バラツキのない、統一感のあるサウンドを実現できると自負しています。開発担当の全員がすべてのジャンルをカバーすることができるのが強みです。さらに、一人のトップが全体を見て統括することで、開発のDNAがしっかりと受け継がれてきた伝統があります。そしてその音質は、小手先の派手さや見掛け倒しではなく、演奏者の伝えたいことがきちんと伝わる正統的なものであり、それが今の評価につながっていると理解しています。私もそれを遵守し、ただひたすらにその伝統を進化させていきたいと思います」。
ラックスマンは、創業100周年を目前に、本年秋から順次記念モデルを登場させるとのことだ。先般発表され東京インターナショナルオーディオショーでもお披露目された新フォノイコライザーアンプ「E-07」やDAコンバーター「DA-07X」などに加え、詳細はまだ不明だが、弩級のヘッドホンアンプも登場する可能性があるとのこと。老舗ラックスマンが満を持して送り出す記念モデルが今から楽しみでならない。
(提供:ラックスマン)