• ブランド
    特設サイト
公開日 2025/01/08 10:10

テクニクス「EAH-AZ100」最速レビュー。オーディオファン待望の “磁性流体ワイヤレス”をさっそく聴いた

忠実なサウンドを成し得たフラグシップモデル
草野晃輔
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
テクニクスから、完全ワイヤレスイヤホンの新たなフラッグシップモデル「EAH-AZ100」が登場した。現行機種「EAH-AZ80」の上位に位置づけられる本機は、同社のハイエンド・有線イヤホン「EAH-TZ700」で好評を博した磁性流体ドライバーを踏襲することで、原音に限りなく近い音楽再生を追求している。発売に先立ち試聴する機会を得たので、いち早くその魅力をお届けしよう。

テクニクス 「EAH-AZ100」 オープン価格(市場予想税込価格39,600円前後)

■磁性流体ドライバーと新開発イヤーピースで高音質を追求


EAH-AZ100の開発にあたり、EAH-AZ80のユーザー調査を行ったところ、完全ワイヤレスイヤホンに「音質」と「装着性」が強く求められていることがわかったそうだ。そこで、有線イヤホンEAH-TZ700で高い評価を得ていた、磁性流体を用いたダイナミック型ドライバーの採用に踏み切ったという。

磁性流体を採用した10mm ダイナミック型ドライバー。振動板の素材はアルミニウムを採用

テクニクスが誇る最上級の有線イヤホン「EAH-TZ700」から磁性流体ドライバーを継承

磁性流体ドライバーは、従来のドライバーよりも振動板の動きが格段に正確になり、歪みの少ない澄んだ音を実現できるのが特長だ。さらに、アルミニウム振動板と極薄エッジを組み合わせたほか、ドライバーの前方にハーモナイザーを後方にアコースティックコントロールチャンバーという、2種類の音響空間を設けて、低域から高域まで広帯域で忠実な音楽再生を可能にしている。

磁性流体を導入することで、従来のドライバーよりも正確な振動板の振幅を実現している

音質を高めるうえでもうひとつのポイントが、新開発の専用イヤーピースだ。ノズルに被せる筒の部分が硬さの異なる3層を連ねた構造になっており、最も固い部分がノズルをしっかりとホールドする。これが、低域を中心とする音の漏れを防いで高音質を直接鼓膜に届けたり、パッシブノイズの大幅な低減につながったりしている。

装着感を高めるため「コンチャフィット形状」を導入

硬さが異なる3種類のゴムを絶妙なバランスで組み合わせることで、装着性と高音質を両立した

早速、AndroidスマホからAmazon Musicで楽曲を聴いていこう。スマホには、専用アプリ「Technics Audio Connect」がインストールされている。このアプリでは、LDAC再生のオン/オフや空間オーディオの設定のほか、ノイズキャンセリングの調整やイコライザーの切替えなどが可能。直感的な操作で自分好みの音作りができる。

専用アプリ「Technics Audio Connect」では、各種設定やノイズキャンセリング、音質の調整が可能

■音のバランスがフラットで各帯域がクリア、感情の機微まで克明に伝える


LDACをオンにして聴くEAH-AZ100の音質を一言で表すなら、「生々しさと透明感の共存」だ。磁性流体ドライバーがもたらす正確な振動と、新開発イヤーピースによる優れた遮音性が相まって、音楽の細部まで余すことなく伝えてくれる。Mrs. GREEN APPLE「ライラック」は、イントロのギターの音の立ち上がりが鋭く、一つ一つの音が明瞭に聴こえる。音のバランスはフラットで、各帯域がクリアに再現されため、弾むような音色の低域も、過度に強調されることなく自然な印象だ。

音楽配信サービス「Amazon Music」を使用して音質をチェック。LDACからDolby Atmosまで試聴した

中森明菜「DESIRE」は、歌声の艶やかさと力強さが見事に表現されている。特に、サビで力強く歌い上げる部分では、声の張りや艶、そして感情の機微までもが克明に伝わってくる。バックコーラスの声も、明確に分離して聴こえ音に厚みを感じさせる。

レディー・ガガ&ブルーノ・マーズ「Do With A Smile」では、その空間の広さに驚かされる。イントロのギターとピアノのリバーブが美しく音場に響き渡り、そこに重なるブルーノ・マーズの声が、まるで目の前で歌っているかのような臨場感を醸し出す。レディー・ガガの声は力強く、かつ繊細な表現力に富む。音の情報量が豊かで、高解像度な音像を鮮明に描き出している。

EAH-AZ100のイヤホン部。非常にコンパクトで軽量なボディになっている

EAH-AZ100の本体ケース部。ゴールドで印字されたブランドロゴや天板のヘアラインから高級感が漂う

ジャズの名盤、ビル・エヴァンス・トリオ「Waltz for Debby」を聴くと、1音目から美しい音の広がりを感じる。スネアの音がパラパラと繊細に分離し、ベースの弦のしなりまで聴き取れる。まるでハイレゾ対応のDAPとイヤホンで聴いているかのような高音質だ。リズム感が絶妙で、演奏者の息遣いまで感じられるような生々しさがある。

アプリから空間オーディオをオンにしてDolby Atmos対応の中森明菜「DESIRE」を聴くと、LDACの再生よりも音場がふわっと広がっている。曲全体の奥行き感が増しており、まるでライブ会場の最前列にいるような臨場感を味わえる。音の密度が薄くなるかと心配したが、そんなことはなくクリアなサウンドを維持している。

コブクロ「蕾」も聴いてみたが、アコースティックギターの音色がリアルに空間に響く中、2人の声が左右にピタッと定位する。頭を左右に振っても常に正面に音場があるヘッドトラッキング機能の効果もあり、没入感が格段に増している。これこそ、空間オーディオかつ生音に近い再生だから味わえる感覚だろう。

LDACを使用する場合は、スマホ本体の設定と専用アプリの設定を確認。Dolby Atmosはアプリからオン/オフできる

■装着していることを忘れるほど自然で快適なフィット感


聴いていて驚いたのが、フィット感に優れ重さを感じないこと。EAH-AZ100のハウジングは、耳を圧迫する力に頼らず、耳甲介(コンチャ)に自然に収まる「コンチャフィット形状」を採用する。従来機のEAH-AZ80よりも体積が10%コンパクトになり装着感が向上したという。

EAH-AZ100の装着シーン。ブランドロゴが綺麗に水平に見えるのが装着位置の目安

筆者が装着してみると、耳に張り付いているかのようにフィットし、長時間使用しても耳が痛くなることはなかった。片耳約5.9gという軽さも相まって、装着していることを忘れてしまうほどの快適さだった。

イヤーピースはXS/S/M/ML/Lの5サイズを付属する

イヤーピースのボックス裏には、イヤーピースの正しい取り外し方も図解で記している

ノイズキャンセリングは非常に強力だ。周囲の騒音状況や、装着する人の耳の形状に合わせてリアルタイムに効き具合を調整する「アダプティブノイズキャンセリング」のため、にぎやかな場所でも、よほど大きな音を除いてほとんどの外音が気にならなくなる。

ノイズキャンセリング/アンビエントモードの調整画面。自動最適化を行いたい場合は、「アダプティブ」をオンにする

ヒアスルーモードも極めて自然。会話時に自分の声のフィードバックがあり、「イヤホンを装着していたっけ?」と錯覚するほど違和感がない。これなら、場所を問わず音楽に集中できるうえ、イヤホンを外すことなく周囲とのコミュニケーションも取れる。

サウンドモードも各種用意。デフォルトは「ダイレクト」に設定されており、カスタムモードでは全8バンドを細かく調整できる

通話品質も大幅に向上しているのも魅力のひとつ。5億件もの音声データを学習したAI搭載の新チップを搭載し、ノイズ除去性能が大幅にアップしている。加えて「Voice Focus AI」機能により、こちらの声だけでなく、相手の声のノイズを除去できる。在宅でオンライン会議が多い人には嬉しいポイントだろう。

本体ケースの背面部には、充電用のUSB Type-C端子を備えている

■忠実なサウンドを求めるオーディオファンにとって理想的なサウンド


EAH-AZ100は、テクニクスが長年培ってきた音響技術の結晶が、ワイヤレスイヤホンという小さな筐体に凝縮された一品だ。磁性流体ドライバーを搭載したイヤホンEAH-TZ700が実売12万円だったことを考えると、本機の想定市場価格が39,000円前後というのはバーゲンプライスといえそうだ。

なにより、磁性流体ドライバーがもたらす原音忠実な再現能力は、音楽をより深く、より豊かに楽しむための新たな扉を開いてくれる。完全ワイヤレスイヤホンで希少な、フラットで忠実なサウンドを求めるオーディオファンにとって、まさに理想的な一台と言えるだろう。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 <CES>オンキヨー、モダンなHi-Fiオーディオ “Iconシリーズ” 発表。ネットワークプリ/プリメイン、パワーアンプの3機種
2 デノン新フラグシップSACDプレーヤー「DCD-3000NE」を聴く。ベテラン評論家も「信念とあくなき探究心を実感」
3 <CES>JBL、目覚まし時計型スピーカー新モデル「Horizon 3」。スマホアプリ対応でもっと便利に
4 テクニクス「EAH-AZ100」最速レビュー。オーディオファン待望の “磁性流体ワイヤレス”をさっそく聴いた
5 <CES・パナソニック>テクニクスの新しい最上位TWS「EAH-AZ100」もお披露目。北米復活のビエラ、4K有機EL・液晶テレビを一斉発表
6 Amazon Prime Video「アニメタイムズ」が2ヶ月99円で見放題!1月13日まで
7 Shokz、“業界初”テクノロジー搭載の新ながら聴きイヤホン「OpenFit 2」発表。1/16発売、税込約2.6万円
8 <CES>オンキヨー、パワードスピーカー「Creator Series」を海外発表。HDMI ARC搭載モデルも
9 新世代「JBL」を告げる驚異的コストパフォーマンス。「Stage 2シリーズ」3モデルをレビュー
10 Qi2ワイヤレス充電規格が “v2.1” アップデート。マグネットなしでも位置合わせ容易に
1/9 12:23 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.195
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX