公開日 2010/03/24 19:58
「ニンテンドー3DS」に採用される“裸眼立体視”ディスプレイを予想する
任天堂が「ニンテンドーDS」シリーズの後継機「ニンテンドー3DS」(仮称)を発表しました。かねてから後継機の噂は出ていましたが、裸眼で立体視を実現するというのは、多くの方にとって予想外だったはずです。
現段階で同社が明らかにしている情報は
・裸眼で3D映像のゲームが遊べる
・発売は2010年度中
・ニンテンドーDSシリーズのソフトが遊べる下位互換性を確保
・詳細は6月にE3で発表
のみにとどまっており、わからないことだらけというのが正直なところですが、今回はその中でも特に気になる「裸眼で3D映像」という点に関する疑問と、それに関する現時点での参考情報などを紹介しようと思います。
■「裸眼で立体視」を何で実現するか?
裸眼で3D映像が楽しめる「ニンテンドー3DS」。一番気になるのが、どういうディスプレイを搭載してくるのか、そのクオリティはどうなのか、という点です。
また、既存のDSとの下位互換性を維持しているので、2D表示の品位もある程度は維持しなければなりません。さらに、DSは通常の持ち方から90度回転させたスタイルで遊ぶゲームも多いため、この状態でも3D表示が行える必要が出てきます。
ご存じの方も多いでしょうが、すでに製品レベルでも、これらの課題をクリアした製品はいくつか存在します。
一つは“Woooケータイ”「H001」(関連ニュース)。約3.1インチの、フルワイドVGA(480×854画素)のIPS液晶ディスプレイを備えています。
H001のディスプレイはパララックスバリア(視差バリア)という方式で3D表示を実現しています。左眼用/右眼用の映像を横方向に交互に並べ、これを電子的に制御するバリアで左右の目に届け、立体視を可能にします。ですから、3D表示時には横方向の解像度は半分になってしまうのが難点です。ただし、バリアをオフにすれば通常の2D表示が可能ですので、過去のDSシリーズのソフトとの下位互換性も確保できます。さらに、バリアの向きを変えることができるので、本体を90度回転した場合でも3D映像の実現が可能です。
もう一つの例は、富士フイルムの裸眼で3D映像を閲覧できるビューワー「FinePix REAL 3D V1」(関連ニュース)。これも2D/3D表示に両対応した、パララックスバリア方式のディスプレイを搭載しています。H001と同様、2D表示時の解像度は800×600ですが、3D表示時には400×600×2chと、横方向の解像度が2分の1に落ちてしまいます。
すでにパララックスバリア方式のディスプレイが実際に製品化されていること、特に携帯電話など、数量が多く出る製品に搭載されている実績があることから考えて、「ニンテンドー3DS」にパララックスバリア方式が採用される可能性は高そうです。
ただし、ほかに候補がないわけではありません。代表的なものは、東芝モバイルディスプレイと3M社が共同開発したもの(関連ニュース)で、東芝モバイルディスプレイでは「時分割二眼式」と呼んでいます。
パネルデバイスの中に指向性レンズシートが貼られており、背後には120Hzで駆動する左眼用/右眼用のLEDバックライトを装備。右眼用の映像と左眼用の映像を交互に表示しながら、LEDをその表示タイミングに合わせて発光させることで、フレームシーケンシャル方式の3D表示を裸眼で実現できます。フレームシーケンシャルなので、3D表示時の解像度が低下しないというメリットがあります。なお、2D表示時には60Hzで通常の映像を表示し、左眼用/右眼用のLEDを同時に発光させるという方法を採っています。
この時分割二眼式、発想自体はかなり面白く、取材時の記憶では立体感もかなり出ていた印象でしたが、実際の製品に採用されたという話は今のところ聞きません。また本体を90度回転させた際の3D表示が原理的に難しいと考えられることから、やや採用の可能性は低そうです。
もちろん、まだ公開されていない、全く新しい方式の裸眼立体視対応ディスプレイが採用されるという可能性もゼロではありません。ただ、故・横井軍平氏のモットーであった「枯れた技術の水平思考」を長年体現してきた同社のことですので、繰り返しになりますが、すでに実績のある技術が採用されると考えるのが自然でしょう。
■2D→3D変換は搭載されるか?
次に、2D→3D変換機能が搭載されるか、という疑問について。あくまで個人的な予想ですが、これは多分搭載されるはず、と考えています。発売からしばらく経たないと3D映像にネイティブ対応したソフトの数は増えません。2D→3D変換が搭載されたら、これまでのDSシリーズを3D映像で楽しめることになり、過去の資産に新しい魅力を付与することにもつながります。
古い話ですが、任天堂が「ゲームボーイカラー」を出した際も、それまでのモノクロのゲームボーイのソフトをカラーに変換して表示することができました。こういった経緯から考えて、既存ソフトの3D表示の可能性は高そうです。ゲームだけでなく、ワンセグや2D映像などの3D変換にも期待したいところです。
■3D映像ソフトの販売はあるか?
裸眼で立体視ができるとなれば、その機能を利用して3D映画などの視聴も楽しみたい、と考える方も多いでしょう。
Wiiでは「Wiiの間」というサービスが用意されており、映画ソフトの販売なども行われています。ニンテンドー3DSにはこれまでより高速な通信機能が用意されると噂されていますし、解像度も高くなるでしょうから、ニンテンドー3DSにおいても3D映像の配信、販売が行われる可能性は高いと考えられます。
ただし、コンテンツがある程度揃うまでは配信もできませんので、Wiiの間が本体発売後しばらく時間をおいてリリースされたように、付加サービスとしてあとから加えられるのではないかと予想しています。
◇ ◇ ◇
ほかにも「GBAとの互換性はどうなるのか」「3D映像でタッチペン操作をするとどんな操作感になるのか」「どんなゲームソフトが出てくるのか」「Tegraが搭載されるという噂は本当なのか」など疑問は尽きませんが、あまりにオーディオビジュアルと関係のない話ですし、論を進めたところでそれこそ妄想になってしまうので、この辺でとどめておきます。
これもあくまで予想、というよりも期待と言った方が正しいかも知れませんが、ニンテンドー3DSにも、3D以外の何らかの隠し球が用意されているのではないでしょうか。
ニンテンドーDSの「DS」は「Dual Screen」の略称ですが、実際のユーザーエクスペリエンスに革命をもたらしたのは、2画面よりもむしろタッチペン操作だったはずです。一部には3DSに振動機能や加速度センサーが搭載されるという報道もありますが、単に3D映像に対応させるだけでなく、ユーザーインターフェースの面でも革新を遂げて欲しいものです。
現段階で同社が明らかにしている情報は
・裸眼で3D映像のゲームが遊べる
・発売は2010年度中
・ニンテンドーDSシリーズのソフトが遊べる下位互換性を確保
・詳細は6月にE3で発表
のみにとどまっており、わからないことだらけというのが正直なところですが、今回はその中でも特に気になる「裸眼で3D映像」という点に関する疑問と、それに関する現時点での参考情報などを紹介しようと思います。
■「裸眼で立体視」を何で実現するか?
裸眼で3D映像が楽しめる「ニンテンドー3DS」。一番気になるのが、どういうディスプレイを搭載してくるのか、そのクオリティはどうなのか、という点です。
また、既存のDSとの下位互換性を維持しているので、2D表示の品位もある程度は維持しなければなりません。さらに、DSは通常の持ち方から90度回転させたスタイルで遊ぶゲームも多いため、この状態でも3D表示が行える必要が出てきます。
ご存じの方も多いでしょうが、すでに製品レベルでも、これらの課題をクリアした製品はいくつか存在します。
一つは“Woooケータイ”「H001」(関連ニュース)。約3.1インチの、フルワイドVGA(480×854画素)のIPS液晶ディスプレイを備えています。
H001のディスプレイはパララックスバリア(視差バリア)という方式で3D表示を実現しています。左眼用/右眼用の映像を横方向に交互に並べ、これを電子的に制御するバリアで左右の目に届け、立体視を可能にします。ですから、3D表示時には横方向の解像度は半分になってしまうのが難点です。ただし、バリアをオフにすれば通常の2D表示が可能ですので、過去のDSシリーズのソフトとの下位互換性も確保できます。さらに、バリアの向きを変えることができるので、本体を90度回転した場合でも3D映像の実現が可能です。
もう一つの例は、富士フイルムの裸眼で3D映像を閲覧できるビューワー「FinePix REAL 3D V1」(関連ニュース)。これも2D/3D表示に両対応した、パララックスバリア方式のディスプレイを搭載しています。H001と同様、2D表示時の解像度は800×600ですが、3D表示時には400×600×2chと、横方向の解像度が2分の1に落ちてしまいます。
すでにパララックスバリア方式のディスプレイが実際に製品化されていること、特に携帯電話など、数量が多く出る製品に搭載されている実績があることから考えて、「ニンテンドー3DS」にパララックスバリア方式が採用される可能性は高そうです。
ただし、ほかに候補がないわけではありません。代表的なものは、東芝モバイルディスプレイと3M社が共同開発したもの(関連ニュース)で、東芝モバイルディスプレイでは「時分割二眼式」と呼んでいます。
パネルデバイスの中に指向性レンズシートが貼られており、背後には120Hzで駆動する左眼用/右眼用のLEDバックライトを装備。右眼用の映像と左眼用の映像を交互に表示しながら、LEDをその表示タイミングに合わせて発光させることで、フレームシーケンシャル方式の3D表示を裸眼で実現できます。フレームシーケンシャルなので、3D表示時の解像度が低下しないというメリットがあります。なお、2D表示時には60Hzで通常の映像を表示し、左眼用/右眼用のLEDを同時に発光させるという方法を採っています。
この時分割二眼式、発想自体はかなり面白く、取材時の記憶では立体感もかなり出ていた印象でしたが、実際の製品に採用されたという話は今のところ聞きません。また本体を90度回転させた際の3D表示が原理的に難しいと考えられることから、やや採用の可能性は低そうです。
もちろん、まだ公開されていない、全く新しい方式の裸眼立体視対応ディスプレイが採用されるという可能性もゼロではありません。ただ、故・横井軍平氏のモットーであった「枯れた技術の水平思考」を長年体現してきた同社のことですので、繰り返しになりますが、すでに実績のある技術が採用されると考えるのが自然でしょう。
■2D→3D変換は搭載されるか?
次に、2D→3D変換機能が搭載されるか、という疑問について。あくまで個人的な予想ですが、これは多分搭載されるはず、と考えています。発売からしばらく経たないと3D映像にネイティブ対応したソフトの数は増えません。2D→3D変換が搭載されたら、これまでのDSシリーズを3D映像で楽しめることになり、過去の資産に新しい魅力を付与することにもつながります。
古い話ですが、任天堂が「ゲームボーイカラー」を出した際も、それまでのモノクロのゲームボーイのソフトをカラーに変換して表示することができました。こういった経緯から考えて、既存ソフトの3D表示の可能性は高そうです。ゲームだけでなく、ワンセグや2D映像などの3D変換にも期待したいところです。
■3D映像ソフトの販売はあるか?
裸眼で立体視ができるとなれば、その機能を利用して3D映画などの視聴も楽しみたい、と考える方も多いでしょう。
Wiiでは「Wiiの間」というサービスが用意されており、映画ソフトの販売なども行われています。ニンテンドー3DSにはこれまでより高速な通信機能が用意されると噂されていますし、解像度も高くなるでしょうから、ニンテンドー3DSにおいても3D映像の配信、販売が行われる可能性は高いと考えられます。
ただし、コンテンツがある程度揃うまでは配信もできませんので、Wiiの間が本体発売後しばらく時間をおいてリリースされたように、付加サービスとしてあとから加えられるのではないかと予想しています。
ほかにも「GBAとの互換性はどうなるのか」「3D映像でタッチペン操作をするとどんな操作感になるのか」「どんなゲームソフトが出てくるのか」「Tegraが搭載されるという噂は本当なのか」など疑問は尽きませんが、あまりにオーディオビジュアルと関係のない話ですし、論を進めたところでそれこそ妄想になってしまうので、この辺でとどめておきます。
これもあくまで予想、というよりも期待と言った方が正しいかも知れませんが、ニンテンドー3DSにも、3D以外の何らかの隠し球が用意されているのではないでしょうか。
ニンテンドーDSの「DS」は「Dual Screen」の略称ですが、実際のユーザーエクスペリエンスに革命をもたらしたのは、2画面よりもむしろタッチペン操作だったはずです。一部には3DSに振動機能や加速度センサーが搭載されるという報道もありますが、単に3D映像に対応させるだけでなく、ユーザーインターフェースの面でも革新を遂げて欲しいものです。