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公開日 2022/10/25 19:00

アップルが環境対策を加速。ノウハウ無償共有で「アップル以外の製品」づくりも支援

「気候変動対策は最優先課題」
山本 敦
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2020年に米アップルは、同社事業、製造サプライチェーン、および製品ライフサイクルの全体で、脱炭素化とクリーンエネルギー活用を押し進め、地球環境への負荷を抑えるための取り組みを発表した。2030年までの10年間に目標を達成することを宣言してきた。

そして本日同社は、パートナーであるサプライヤー企業との、環境対策における連携をさらに強化する具体的な施策を発表した。

■環境対策に向けたグローバルサプライチェーンとの協調



現在、iPhoneなどApple製品の製造には多くのサプライヤー(納品業者)が関わっており、その規模は200社以上、製造全体の70%以上を占める割合にまで拡大している。

Appleは2018年から、世界44カ国に展開する同社のオフィス、小売店、データセンターなど施設のカーボンニュートラル化、つまりは炭素の排出を抑えたものづくりや再生可能エネルギーの積極活用を進めている。

一方でサプライヤーとの関係においても、脱炭素化とクリーンエネルギーを活用するための具体的策が講じられてきた。サプライヤー各社もまた、iPhoneやMacなど製品に関わるすべての製造環境に、風力や太陽光などの自然由来のクリーンな電力を調達することをアップルに約束している。

アップルは米テキサス州ブラウン郡では大規模太陽光発電プロジェクト「IP Radian Solar」など、大規模な再生可能エネルギーの生産設備に対する投資も積極的に行なってきた

例えばアップルは日東電工(株)をはじめ、海外の大手サプライヤーであるコーニング、SKハイニックス、STマイクロエレクトロニクスなど世界の大手サプライヤーを、同社の考えに賛同し、目標実現に向かって歩みを共にする企業として挙げている。

アップルは米国時間の10月25日にプレス発表を行い、自社の「グローバルサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を削減するための、新たな取り組みを発表した。

その内容には、100%再生可能な電力で工場などの製造環境を稼働させることなどが含まれているが、注目したい点は、アップルが温室効果ガスの排出量(カーボンフットプリント)の削減について定めた段階的な目標をサプライヤーに提示し、サプライヤーがその進捗を定期的にアップルへ報告する枠組みがつくられることだ。サプライチェーンの中で連携するパートナーが、それぞれに取り組むことをアップルが把握し、成果を解析するためのフレームワークも設けられる。

アップルのティム・クックCEO

今回のプレス発表に伴い、アップルのティム・クックCEOは「気候変動対策は、引き続きアップルが取り組むべき最優先課題のひとつ。これまで宣言してきたことを、より積極的に行動へ移すべき時が来ている」と述べている。

さらに「2030年までにアップルのサプライチェーンを脱炭素化するため、サプライヤーと足並みを揃えながら協力関係を続けていきたい。私たちの取り組みが、世界規模でクリーンエネルギーの活用、気候変動対策の拡大を促すことに期待する」ともコメントしている。

アップルはまた、クリーンエネルギーの活用を加速させることにより、サプライチェーンで共に歩むパートナーが「アップル以外の製品」を手がける製造環境のカーボンニュートラル化を図ることにも、支援を惜しまないと伝えている。

一例として、アップルは独自の「Clean Energy Program」を立ち上げ、無償のeラーニングリソースとライブトレーニングをサプライヤーや地域のパートナーに提供する。目標に対して、ビジネスを発展させながら再生可能エネルギーの普及と脱炭素化を実現するために必要なノウハウを共有する方策だ。2022年には150社を超えるサプライヤーがアップルのライブトレーニングに参加したという。

そして過去に実施したプログラムの成果については今後、無償の公開トレーニングプラットフォームとして形を整えた後、同社のパートナー以外の企業にもシェアする仕組みをつくる。

■自然資源を育成。iPhoneユーザーがカーボンニュートラルを実現する技術にも投資する



クリーンエネルギーの活用とその効率拡大を推進するために、アップルが世界規模で実施する新たな投資計画も発表された。

ヨーロッパでは30 - 300メガワットの大規模な太陽光発電、風力発電プロジェクトの建設を促進する予定だ。同社今後数年間で、ヨーロッパに流通するすべてのアップル製デバイスを低炭素電力で駆動できるだけの再生可能エネルギーを調達することを目指す。またヨーロッパに展開するアップルの事業施設には、引き続き100%のクリーンエネルギー供給を続ける。

アップルはコンサベーション・インターナショナル、INVEMAR海洋沿岸研究所、CVS(シヌ渓谷とサンホルヘ渓谷の地域自治法人)と連携して、コロンビアのコルドバにある27,000エーカーのマングローブ林の保護・再生を支援してきた

最新のiOS 16から、米国のiPhoneユーザーは「Clean Energy Charging」という機能を使うことにより、iPhoneによる二酸化炭素排出量を減らす取り組みに参加ができるようになる。

本機能は、米国独自の電力供給網の仕組みを活用するもの。iOSが予想される充電時間帯の電力供給源を調べ、送電網が太陽光や風力などのクリーンなエネルギー源を使用している時間帯に端末をチャージするという。アップルは今後、もユーザーがクリーンエネルギーの選択を意識しながら端末を利用できるように、研究機関とのパートナーシップによる技術の発展に注力するという。

なおアップルは2021年春に、温室効果ガスを削減するための取り組みとして「Restore Fund(再生基金)」を発表。大気中から二酸化炭素を削減することを目指している森林プロジェクトに直接投資を行い、投資家に対して金銭的な還元を実現する仕組みを、環境保護団体のコンサベーション・インターナショナルと投資銀行ゴールドマン・サックスと共同でつくった。

その新たな投資先として、ブラジルとパラグアイの3つの優良な林業経営者に出資し、持続可能な認証を受けた15万エーカーの作業林を復元。約10万エーカーの原生林、草原、湿地を保護するプロジェクトも発表された。本事業によって、2025年には、100万トンの二酸化炭素が大気から除去される見込みだ。

またアフリカ諸国や中国では地域主導型の気候ソリューションを推進するための新たなパートナーシップを締結。今後は地球の気候変動に直接的な影響を受けるコミュニティの支援にも力を入れる。

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