WM1ZとWM1Aは異なるコンセプトが起点
<IFA>試聴レポ有:ソニー開発者に聞く“ウォークマン”新フラグシップ「WM1」誕生の背景
バランス出力への対応は最新のハイレゾ対応DAPのトレンドであり、Astell&Kernの「AK70」などスタンダード価格帯のモデルにも広がっている。ウォークマンはその点やや出遅れていたが、アンプ回路の見直しと4.4mmの新バランスコネクタの採用によりいよいよ今回のシリーズから実現した格好だ。
新しいバランス端子はプラグ口径が4.4mmで、左右の信号とGNDを加えた5極のピン配置となる。今年の3月にJEITAが規格化したばかりのフォーマットで、コンシューマー用のオーディオ機器に採用されるのは今回ソニーが発表したいくつかの対応製品が初めてになる。新しいコネクターそのものの特徴や誕生した背景、技術的な詳細についてはPhile-webのレポートも参照してもらいたい。
その特長について大まかに触れるとすれば、耐久性を高めることができ、さらに端子を抜き差しするときの安定感も向上することがある。端子とジャックの接触面が広いことから、インピーダンスを下げて高域をより滑らかに整えられるメリットもある。通常の端子はジャックの中にコネクターが固定された際に、ピンが接触するのが片面だけになるが、4.4mm/5極のバランスコネクターはジャックの表裏側でピンをコの字に包むようなかたちで接するので、接点が安定することも音質面で有利に働くという。
WM1シリーズはバランス接続を選択すると、内部のリレースイッチによりアンバランス回路を完全にミュートしてバランス回路に切り替える。そして最大11.2MHzまでのDSDネイティブ再生が可能になる。これは新開発のフルデジタルアンプ「CXD3778GF」を搭載したことによる賜物だ。
ヘッドホン出力もハイパワーになり、ZX2の15mW×2から、WM1シリーズではアンバランス接続時で60mW×2、バランス接続時は250mW×2に強化された。大庭氏は「ポータブルヘッドホンアンプなしでもハイインピーダンスのヘッドホンが鳴らせる」と説明する。本体設定からゲイン設定は2段階で切り替えられる。
アンバランスとバランスの回路は別構成となっているため、アンバランス出力時にはDSDネイティブ再生ができない。そのため、新しいウォークマンのバランス接続によるサウンドを楽しむためには4.4mm/5極端子を採用するリケーブルやアクセサリーを用意する必要がある。
アンバランス接続を選ぶとDSD再生は従来通りのリニアPCM変換の音を聴くかたちになる。なおWM1シリーズではリニアPCMが最大384・352.8kHz/32bit出力をサポートした。
WMポート経由からのオーディオ出力はWM1シリーズからデジタル出力専用となり、アナログ出力は音質向上のために省略されている。デジタル出力時のDSDネイティブ出力は、DoP再生を選んだ場合は5.6MHzまでになる。
■高音質化の決め手となる3つの強化ポイント
音質向上のための取り組みについては「シャーシ」「コンデンサー」「ケーブル」の3点を強化したことが大きな効果をあげている。シャーシ自体のインピーダンスを下げて、伸びやかな中高域、力強くスピーディーな低音再生を実現することは、歴代ウォークマンのハイレゾ対応フラグシップモデルが掲げてきたチャレンジだ。その延長線上で、今回WM1シリーズでは特に上位機の「WM1Z」で純度の高い無酸素銅をメイン素材に使うという試みをやり遂げている。