[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第103回】「秋のヘッドフォン祭2014」を高橋敦の“超”個人的ベスト5で振り返る
【第3位】最先端メーカーの真空管ステレオシステム
iFI-Audioと言えば「nano iDSD」「micro iDSD」といった突出したスペックとそれだけではな実質的なサウンドクオリティを備えたポータブルアンプ等で名を馳せているブランドだ。DSDを強く推進する立役者のひとつでもある。そのiFIが今回出展していたアイテムの中で僕が気になったものがこれ、「iFI Retro Stereo 50」だ。
不正確になるかもしれないがざっくりと表現すると、同社「micro iDSD」相当(DSD512対応)の先鋭的なUSB-DACと同じく「iPhono」相当のフォノイコライザーにaptXとNFCに対応するBluetooth機能も付けてさらに「真空管」アンプと一体化しました!みたいなアイテムだ。
さらにスピーカーは、高域と低域をネットワーク回路で音声信号の時点で分離してツイーターとウーファーに送るという一般的な手法をあえて回避。ツイーターとウーファーの素の特性とキャビネットのアコースティックな要素をチューニングすることで、電気的な処理を使わず自然に、ツイータとウーファーの帯域を分割している。
またボリュームのトルク感や、アナログ盤の各種イコライジング特性(RIAAカーブ等)に対してのプリセットの役割を兼ねるベースとトレブルのイコライザーノブに持たされたクリック感など、操作の手応えのよさもいい感じだ。
オーディオの場合、突き詰めれば突き詰めるほどにデジタルとアナログの境界は曖昧になるように思える。また最新技術が常にベストなわけではなく、振り返ればすでにそこに答えがあったりする場合もある。先鋭的なデジタル技術と真空管アンプ、アコースティックで攻めたスピーカーを組み合わせたこのシステムは、そういったところも含めた同社の見識を示しているように感じられる。
【第2位】待望のスマートポタアン登場!
小型や超小型のポータブルヘッドホンアンプは続々と登場しているのだが、しかし「薄型で本格派」となるとあまり見当たらないというのが、個人的には不満であり不思議だった。カバンにせよポケットにせよ持ち歩きとなればそこは重要だと思うのだが…
と思っていたところに発表されたのがこちらOPPO「HA-2」。個人的に待望の薄型本格派ポタアンだ。縦横はiPhone 6とおおよそ同程度で薄さはその1.5〜2倍程度だろうか。いずれにせよ他の多くのポタアンよりぐっと薄く感じる。
スペック的な部分はまだ固まっていないとのことだが、OPPOのことなので「384」とか「11.2」とかみたいな数字はほとんど確定しているようだ。僕としてはiPhoneとのLightning直結でのハイレゾ再生の可否、可の場合のスペックが特に気になるのだが…
さてあと筐体を見ると電池アイコンのボタンがあるが、これはモバイルバッテリーとしてスマートフォン等への充電を行う際に使うスイッチだ。
僕としてはポータブルオーディオにおいて、モバイルバッテリー機能は意味合いが大きいのではないかと考えている。その機能があればその機器は「趣味のアイテム」であると同時に「実用アイテム」にもなる。「音楽再生だけならスマートフォン単体でもできる」に対して音質面だけではなくもっと実用的な「自分への言い訳」みたいなものが成立するわけだ。「自分への言い訳」だと言葉が悪いが「+αの理由付け」みたいな感じで。それが薄型であまり邪魔にならないならなおさらよい。
この「薄さ+モバイルバッテリー」という要素は最近だとソニーのウォークマン新「Aシリーズ」にも見られる。全てがそうなるべきだなんてことはもちろん思わないが、増えていってほしいスタイルだ。