HOME > レビュー > エソテリック「P-02X/D-02X」を聴く - Grandiosoの技術を凝縮したトラポ&DAC

“実質的フラッグシップ”の実力を検証

エソテリック「P-02X/D-02X」を聴く - Grandiosoの技術を凝縮したトラポ&DAC

公開日 2016/06/28 12:55 鈴木裕
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
エソテリックの「Grandioso」シリーズの思想と技術を2筐体に凝縮したSACDプレーヤー「P‐02X」/DAコンバーター「D-02X」。実質的なフラッグシップとも言える両モデルを鈴木裕氏がレビューする。

■新2モデルのポジショニングと概要
Grandiosoシリーズの思想を行塾した”実質的な”旗艦機

現在のエソテリックにおいて、デジタルプレーヤーのフラッグシップはGrandiosoシリーズの「P1/D1」である。CD/SACDトランスポートで、本体と電源部を別筐体にする「P1」、モノラル構成で左右チャンネル用に別筐体を持つD/Aコンバーターの「D1」、合わせて4筐体という超弩級のデジタルプレーヤーだ。

美しく優美なラインをフロントパネルに持つP1/D1、それはエソテリックにとってはラボラトリーモデル的な位置づけだという。過剰とも言える物量を投入し、現代のデジタルテクノロジーの可能性を追求した、理想主義的なモデルというポジショニングである。それに対して、“実質的なフラッグシップ”という言い方をするのが「P-02/D-02」のコンビだった。その最新作が「P-02X」と「D-02X」になる。

「D-02X」¥1,400,000/税抜(左)と「P-02X」¥1,400,000/税抜(右)

少し振り返ると、長らくエソテリックのデジタルプレーヤーのフラッグシップは2筐体だった。1987年のエソテリックブランドとしての第一世代である「P-1/D-1」、SACDが登場した状況において究極のCD再生を求めて2001年に登場した「P-70/D-70」があり、初めてSACDに対応した2筐体モデルである「P-03/D-03」は国内外での数々の賞を総嘗めにした。

そして2010年にスタートした一体型CD/SACDプレーヤーの“K”シリーズによって、SACDプラットフォームを刷新。それを受けて2011年に登場したのが先代の「P-02/D-02」だった。そして2016年、ついにモデルチェンジを果たして登場したのがこのP-02X/D-02Xだ。

■前モデルからの進化ポイント
「02」後継機という位置付けを超えて大きな進化を遂げた

02シリーズから02Xシリーズへの変更内容を見ると、02Xは02の後継機種という位置づけよりも、むしろGrandioso P1/D1の4筐体を2筐体に凝縮したモデルのように思えてくる。

まずそれを感じるのが、トランスポートとDACの接続が「EL-LINK3」から「ES-LINK4」へと進化した部分だ。これは4倍オーバーサンプリング/48bit伝送から、8倍オーバーサンプリング/48bit伝送になったことを意味する。ケーブル自体はHDMI規格でヴァン・デン・ハルの製品を採用しているが、オーディオデータ、L/Rクロック、ビットクロックをそれぞれ差動で送り込んでいる。

P-02Xの背面端子部。デジタル出力はES-LINK×1、XLR×2、RCA×1を用意。ES-LINKは「4」に進化し、D-02Xとの接続にはHDMIケーブルを用いる

D-02Xの背面端子部。デジタル入力はES-LINK×1、XLR×1、RCA×2、光×1、USB-B×1を用意。USBはPCMで最大384kHz/32bit、DSDは最大11.2MHzに対応する

平易にいうと、P-02X側でやれることはやっておいて、D-02X側のデジタル処理の負担を軽くする、という設計思想を押し進めているのだ。PCM信号をアナログ信号へ変換する時にbit数を上げてより滑らかな波形を生成する技術も、従来モデルの35bitからD1と同様の36bitのD/Aプロセッシング・アルゴリズムを採用している。

P-02Xの内部構造。シャーシ内部は2階建て構造とし、各回路ブロックを最短の信号経路で接続。外装は肉厚アルミ材を採用し、5mm厚スチール製リジッドベースを独自フットで4点支持。リジッドベースにはレーザーによる精密なスロット加工を施し、振動を効果的に抑制する

DACデバイスはAKMの「AK4490」を選択し、DSDの対応が2.8MHzから11.2MHzへと大きく拡充したのも時代の変化を感じる。また、DAC部の回路規模は従来型の差動8回路から16回路へと倍になっている。バッファーアンプ部はGrandioso C1で高い評価を獲得したHCLD(ハイ・カレント・ライン・ドライバー)に進化し、従来よりも10倍近いスルーレートを達成している。その他のスペックにおいても、f特はよりワイドレンジに、SN比も6dB高い121dBに改善されるなど申し分ない進化が見られる。

D-02Xの内部構造。4つの独立トロイダル電源回路構成(デジタル回路、クロック回路、L/Rアナログ回路用)はオリジナルを継承、一方で各回路コンポーネントやパターンは大幅に刷新。D/A回路は、従来の倍の物量を投入した差動16回路(32出力)/chとなり、D1と同じ構成を実現する

その他、P-02Xのメカドライブ部を固定する5mm厚のスチールのリジッドベース部には、トライ&エラーによって決定したスリット加工がほどこされ、メカ部と回路部の振動コントロールを行っている。一方、メカドライブ自体はスピンドルのベアリングが02のセラミックから、スチールのセレクト品に変わった以外、熟成のVMK-3.5-20Sをキャリー・オーヴァーしている。

P-02XはVRDS-NEO「VMK-3.5-20S」を採用。スピンドルの軸受けには選別品の高精度ボールベアリングをペアで採用し、ミクロン精度のジュラルミン・ターンテーブル、20mm厚スチール製ターンテーブル用ブリッジを搭載。質量はベースを含めると12kgにもなる

次ページ比較試聴も含めて新2モデルの音質をチェック

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE