公開日 2018/12/08 07:00
開発陣にインタビュー
「すべてやり切った」。パナソニック渾身の最上位プレーヤー「UB9000(Japan Limited)」はこうして生まれた
インタビュー・構成:秋山 真
『君の名は。』やスタジオジブリ作品など、高画質で名高い名作UHD BD/BDのエンコードを数多く手がけ、現在もパッケージソフトや配信の高画質化を手がける秋山 真氏。今回秋山氏は、12月7日に発売されるパナソニックのフラグシップUHD BDプレーヤー「DP-UB9000(Japan Limited)」(関連ニュース)の開発陣に、大阪・門真の開発拠点でインタビューを行った。
筆者は画質評価の仕事にパナソニック以外のプレーヤー、レコーダーは使わない。これは5年半の間、パナソニックハリウッド研究所で日々、マスターデータとエンコードデータの比較をしてきた経験に基づく。BDプレーヤーは正しいデコードができることが大前提であり、それを抜きにした物量投入型の高級プレーヤーなどナンセンスだと考えているからだ。
しかし2K BD時代、その頼みの綱であるパナソニックからフラッグシッププレーヤーが登場することはついに無かった。もちろん、その代わりをBZT9000以降のプレミアムDIGAは立派に担ってきたわけだが、その間もフラグシッププレーヤーを待望するAVファンの声は大きかった。
そして2018年末、最後の映像パッケージメディアとも言われるUHD BD市場の成熟を受けて、いよいよ我々の悲願が成就する時が来た!
居ても立ってもいられなくなった筆者は、最終追い込みの真っ最中である大阪府門真市の開発拠点に突撃取材を敢行した。出迎えてくれたのは総勢9人のスタッフ。想定外の大人数に圧倒されたが、これでもUB9000開発チームの一部だという。早速その時のインタビューの模様をお届けしよう。彼らも長年、心に秘めてきた熱い思いを語りたくてうずうずしているのだから!
■欧州仕様と日本仕様ははじめから違う商品として企画・開発
村上氏(以下すべて敬称略) UB9000の話が持ち上がったのは、今から1年半ぐらい前です。日本での販売も予定していましたが、プレーヤーは台数的にも欧州市場が重要になってくるので、まずは1,000ユーロクラスのプレーヤーとして企画が始まりました。
岡崎 欧州でも本格的なプレーヤーが欲しいという声はありました。レコーダーの延長線上だったUB900はセンターメカでもありませんし、シャーシ周りも一般的なものです。その一方で、欧州市場ではあまりに高額なプレーヤーでは受け入れられにくいという事情もあります。
村上 しかし日本には既に「DMR-UBZ1」というハイエンドレコーダーがあるなかで、果たして「フラグシッププレーヤーが1,000ユーロクラスの製品で良いものか」という議論になりました。やるからにはUBZ1の価値を認めて頂いている方々にも、心から満足してもらえるようなプレーヤーを作るべきなのではないかと。その結果、欧州仕様と日本仕様は最初からグレードの違う製品として開発をスタートすることになったのです。
−− つまり、日本仕様が途中から枝分かれしたわけではないのですね?
村上 はい。共有できる部分があるとはいえ、開発チームには実質的に2機種のプレーヤーを設計してもらうことになり、大変な思いをさせてしまいました。
■アルミの無垢材で剛性を高めた筐体
−− センターメカの採用は、DVD時代の名機DVD-H2000以来ですよね?
濱野 そうですね。本格的なプレーヤーというからにはセンターメカの採用は譲れないと考えました。私はH1000やH2000のシャーシ設計も担当していたので、UB9000の内部写真を見ると、ところどころに共通点があるのがお分かり頂けると思います。高級プレーヤーとして、イチからシャーシを開発したのは約20年ぶりですね。だから20年間温めていたアイデアも今回投入しています。当時は回路規模が大きく、技術的に実現不可能だったのです。
−− この分厚いフロントパネルは、叩いても全く鳴かないですね。
濱野 フロントパネルは樹脂パネルとの組み合わせではなく、7mm厚のアルミの無垢材です。
神園 この価格帯だとサイドパネルは樹脂製になることが多いのですが、UB9000はサイドにも3mm厚のアルミ無垢材を使って、筐体の剛性を高めています。
宮本 このあたりはテクニクスの構造設計思想が入っています。開発当初から外装だけでなく回路設計についてもテクニクス部門との共同開発を進めており、「Tuned by Technics」はここから始まりました。
神園 ちょっとJapan Limitedの底板を持ってみて下さい。重いので気を付けて下さいね。
筆者は画質評価の仕事にパナソニック以外のプレーヤー、レコーダーは使わない。これは5年半の間、パナソニックハリウッド研究所で日々、マスターデータとエンコードデータの比較をしてきた経験に基づく。BDプレーヤーは正しいデコードができることが大前提であり、それを抜きにした物量投入型の高級プレーヤーなどナンセンスだと考えているからだ。
しかし2K BD時代、その頼みの綱であるパナソニックからフラッグシッププレーヤーが登場することはついに無かった。もちろん、その代わりをBZT9000以降のプレミアムDIGAは立派に担ってきたわけだが、その間もフラグシッププレーヤーを待望するAVファンの声は大きかった。
そして2018年末、最後の映像パッケージメディアとも言われるUHD BD市場の成熟を受けて、いよいよ我々の悲願が成就する時が来た!
居ても立ってもいられなくなった筆者は、最終追い込みの真っ最中である大阪府門真市の開発拠点に突撃取材を敢行した。出迎えてくれたのは総勢9人のスタッフ。想定外の大人数に圧倒されたが、これでもUB9000開発チームの一部だという。早速その時のインタビューの模様をお届けしよう。彼らも長年、心に秘めてきた熱い思いを語りたくてうずうずしているのだから!
■欧州仕様と日本仕様ははじめから違う商品として企画・開発
村上氏(以下すべて敬称略) UB9000の話が持ち上がったのは、今から1年半ぐらい前です。日本での販売も予定していましたが、プレーヤーは台数的にも欧州市場が重要になってくるので、まずは1,000ユーロクラスのプレーヤーとして企画が始まりました。
岡崎 欧州でも本格的なプレーヤーが欲しいという声はありました。レコーダーの延長線上だったUB900はセンターメカでもありませんし、シャーシ周りも一般的なものです。その一方で、欧州市場ではあまりに高額なプレーヤーでは受け入れられにくいという事情もあります。
村上 しかし日本には既に「DMR-UBZ1」というハイエンドレコーダーがあるなかで、果たして「フラグシッププレーヤーが1,000ユーロクラスの製品で良いものか」という議論になりました。やるからにはUBZ1の価値を認めて頂いている方々にも、心から満足してもらえるようなプレーヤーを作るべきなのではないかと。その結果、欧州仕様と日本仕様は最初からグレードの違う製品として開発をスタートすることになったのです。
−− つまり、日本仕様が途中から枝分かれしたわけではないのですね?
村上 はい。共有できる部分があるとはいえ、開発チームには実質的に2機種のプレーヤーを設計してもらうことになり、大変な思いをさせてしまいました。
■アルミの無垢材で剛性を高めた筐体
−− センターメカの採用は、DVD時代の名機DVD-H2000以来ですよね?
濱野 そうですね。本格的なプレーヤーというからにはセンターメカの採用は譲れないと考えました。私はH1000やH2000のシャーシ設計も担当していたので、UB9000の内部写真を見ると、ところどころに共通点があるのがお分かり頂けると思います。高級プレーヤーとして、イチからシャーシを開発したのは約20年ぶりですね。だから20年間温めていたアイデアも今回投入しています。当時は回路規模が大きく、技術的に実現不可能だったのです。
−− この分厚いフロントパネルは、叩いても全く鳴かないですね。
濱野 フロントパネルは樹脂パネルとの組み合わせではなく、7mm厚のアルミの無垢材です。
神園 この価格帯だとサイドパネルは樹脂製になることが多いのですが、UB9000はサイドにも3mm厚のアルミ無垢材を使って、筐体の剛性を高めています。
宮本 このあたりはテクニクスの構造設計思想が入っています。開発当初から外装だけでなく回路設計についてもテクニクス部門との共同開発を進めており、「Tuned by Technics」はここから始まりました。
神園 ちょっとJapan Limitedの底板を持ってみて下さい。重いので気を付けて下さいね。