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開発陣にインタビュー

「すべてやり切った」。パナソニック渾身の最上位プレーヤー「UB9000(Japan Limited)」はこうして生まれた

公開日 2018/12/08 07:00 インタビュー・構成:秋山 真
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甲野 私も開発中にこの実験システムを使って音を聴かせてもらったのですが、その時点でもかなり本格的な音が出ていて驚きました。でもこれ、最終的にちゃんと筐体の中に入るの? と(笑)

濱野 構造上は、できるだけコンパクトにまとめた方がシグナルパスの距離が短くなって、理論的に有利というのがあります。

ウデーニ 実は、最初に筐体内に詰め込んだ際には、躍動感やスケール感のある音になりませんでした。映像回路やドライブ周りからのノイズの影響を受けていたんですね。これではせっかくのAK4497がポテンシャルを発揮できません。

そこでまずは躍動感を得るため、2ch DACチップ用のDC電源系統を細分化しました。しかもただ増やすだけではなく、より重要な箇所には産業用や車載用で使われているアナログ・デバイセズ社(旧リニアテクノロジー社)製のレギュレーターを5つも採用しています。低ノイズ設計のもので、民生機ではほとんど採用例がないと思います。

低ノイズ設計のレギュレーター

左がJapan Limited、右が欧州仕様の電源部。日本版は明らかに部品点数が多く、また大型のパーツを使っていることがわかる

宮本 また電源基板に関してもUBZ1から大幅に強化されていて、基板上の面積だけ見ても規模がまるで違うのがお分かり頂けると思います。

例えば電源トランスにしても、従来は1つのスイッチングトランスで全ての電源を賄っていましたが、ドライブ回路などは変動が大きく、それがD/A変換後のアナログ段に悪影響を及ぼしていました。そこでUB9000では、アナログオーディオ専用にもう1つトランスを搭載しています。そのトランス自体も日本仕様はOFC巻線の特注品になっています。

左側が電源基板。UBZ1から大幅に強化された。右はメインチップが乗ったデジタル基板

ウデーニ 実はこのOFC巻線トランスも、当初はクラブ活動の中で実験的に作ってもらったものです。しかし一度聴いてしまったら元には戻れませんでした。通常より電圧も巻線径も上がっており、音のパワー感、情報量、レンジ感が素晴らしかったのです。そこで一次電源の担当者に頼み込んで実現してもらいました。

-- 基板の表面が黒いというのも、単純に見ているだけでカッコイイですよね。

宮本 見た目だけでなく、音質にも効いています。黒くした方が音に落ち着きが出ます。本当に、何を変えても音は変わるんですよね。

基板の表面が黒い

電源基板の裏側。太く曲線状にハンダが盛られている

ウデーニ 日本仕様は電源基板の裏側も特徴的です。太く曲線状にハンダが盛られているのが分かると思いますが、これも基板の強度を上げ、インピーダンスを下げるため、敢えてこうしています。

-- 壮観です。

ウデーニ またノイズをいかに効果的にグラウンドに逃がすか、というのも非常に重要になってきます。DACチップ周りに関しては旭化成エレクトロニクスさんとも協力しながら、切ったり貼ったり、何度もパターンも引き直しました。さらにHDMI端子周りのグラウンド処理も従来とはだいぶ変わっています。これらの効果は、音質だけではなく画質にも現れていると思います。

UBZ1から見較べると、驚くほどの画質

-- 今回、クロマアップサンプリングなどの画質の基礎となる部分は、UBZ1からアップデートされていないですよね? にも関わらず、ストレートデコードの画で両者を見較べてみると、驚くほどの差があります。

甲野 そうですね。MPEGデコードに関する信号処理は変わっていません。クロマアップサンプリング技術に関しては既に完成の域にあると考えています。しかし、これだけ画質に違いが出たのは、やはり高音質化のために数々の対策を施した結果だと思っています。

画質関連技術を手がける甲野和彦氏

もちろん、以前からこうした電源や筐体の違いが画質に影響を与えるのは認識していましたが、私の担当はあくまで映像信号処理であり、それ以外の分野に関しては、敢えてあまり発言してきませんでした。しかし今回のUB9000 Japan Limitedでは、商品コンセプトやユーザー層も考慮して、私からもこの違いを積極的に訴求していきたいと考えています。

-- いっぽうで、今年2月にUB9000が発表された際、映像面での一番のサプライズはドルビービジョン対応だったかもしれません。

甲野 ユーザーからの要望があるのならば、どんなフォーマットでも対応しようというのが我々の基本姿勢です。実はドルビービジョンに関しては、ディスクがドルビービジョンタイトルと認識され、接続されたテレビがドルビービジョンに対応していれば、チップ内の信号処理経路はドルビーさんから提供された回路へ切り替わります。そこでのデコード結果がHDMIからそのまま出力されます。

つまり我々としては、クロマアップサンプリングも含めて一切信号には手を加えていません。これはドルビービジョンの仕様として決まっていることなのです。

-- しかしUB9000にはドルビービジョンを「切」にできるという、マニア注目の機能がありますね。

甲野 はい。「切」にすることで、ドルビービジョンディスクのベースレイヤー部分に収録されているHDR10ストリームを、通常のHDR10タイトルと同じように、我々の信号処理を使って再生することができます。

-- つまりUB9000をドルビービジョン対応テレビに接続した場合、「入」の状態ではドルビーの独自回路による映像信号が出力され、「切」にするとクロマアップサンプリングも含めた、UB9000ならではの高品位なMPEGデコードが可能になるということですね?

甲野 そういうことです。

次ページドルビービジョンとHDR10+に両対応という英断

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