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公開日 2023/06/30 06:30
独自R-2RDAC/FPGA搭載の最先端DAP

3つの技術を巧みに集約!Astell&Kern次世代DAP「A&futura SE300」の“新次元サウンド”を聴く

岩井 喬

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ハイレゾDAPを黎明期から支えてきたAstell&Kernは、いくつものトレンドをDAPの世界に取り入れてきた。フラグシップとなる「A&ultima」シリーズでは、歴代モデルがAKM製フラッグシップDACチップを世界初搭載するなど、DAP市場を超えた話題を創り出している。

このフラグシップに次ぐ「A&futura」シリーズに新製品「A&futura SE300」(以下、SE300)が誕生。『The Future of Analog Sound』というスローガンのもとで開発されたSE300は、理想的なアナログの音を実現すべく、DAC部とアンプ部の融合を目指し、ブランド初となる3つのトピックを取り入れている。

「A&futura SE300」

まずその1つ目は、汎用チップを用いない「24bit対応のR-2R方式フルディスクリートDAC」の搭載。2つ目は、汎用品ではない独自開発のFPGAを搭載し、デジタル処理においてOS(Over Sampling)モード/NOS(Non-Over Sampling)モードの選択を実現したこと。さらに3つ目はアナログ出力段の動作をClass A(A級動作)かClass AB(AB級動作)に切り替えられる「Class-A/AB Dual アンプ」の採用である。

これら機能のひとつひとつは他ブランドでも見受けられるものだが、Astell&KernではハイレゾDAPの先駆者らしく、3つの要素を高い次元でまとめあげ、肝心な音のクオリティについても妥協なく仕上げていることが特長だ。これからSE300で初採用となったこの3つのポイントを中心に解説し、そのサウンドについてレポートしていきたい。

■ポイント1:24bitデコードを実現するR-2RフルディスクリートDAC



1つ目の大きな特徴が、R-2R方式のフルディスクリートDACである。現在の汎用DACチップの大半はDA変換にΔΣ変調を取り入れたものが主流であり、これまでのAstell&KernでもΔΣ方式のDACチップが用いられてきた。

このΔΣ変調を使うメリットは、DA変換時に発生する誤差が生み出す量子化ノイズを可聴帯域外となる超高域へ追いやるノイズシェーピングを利用できること、そして1bitのデジタルパルスを用いた粗密波によって表現した信号を、理論上ローパスフィルターを後段に加えたシンプルな構成でアナログ化できるということ、そして量産しやすさが挙げられる。手法的にDSD方式とも親和性が高い。

これに対しR-2R方式は、オーディオにおけるDA変換の原点に近い存在であり、抵抗をはしご(ラダー)状に配置する構成からラダー型ともいわれている。動作としてはデジタルデータの大小を重みづけし、アナログ信号へと直接置き換える手法であり、PCM方式と相性が良い。密度の高い自然な音色傾向が特徴であるが、構成する抵抗の精度と基準値を作り出す供給電圧の正確さ、安定度がDA変換の精度にも関わるため、製造上のコストが高くなってしまうという難点も伴う。

SE300第1のトピックが、高精度抵抗器を組み合わせて独自に設計されたR-2R DACだ

しかし現在の半導体価格の高騰も相まって、自らディスクリートDACを手掛けるブランドも増えてきたこともあり、R-2R方式の見直しも進んだといえる。Astell&Kernでは24bitデコードを実現するため、R分の抵抗を23個、2R分の抵抗を25個による48組、96個の超精密抵抗を一つ一つ厳選して検査、選別したうえでDACとして構成。この超精密抵抗は0.01%という誤差であり、温度変化による影響も抑えるべく、抵抗温度係数(TCR)は10ppm/℃という低TCRの仕様のものを取り入れているという。

独自FPGAによるOS/NOSモード、A級/AB級アンプ切り替えも重要ポイント

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