公開日 2022/09/13 06:30
シングルFETのA級「Larson」と最新ICEPOWERのD級「Crosby」
A級アンプとD級アンプはどう違う? M2TECHの“ロックスターシリーズ”で徹底検証!
土方久明/菅沼洋介(ENZO j-Fi) 構成:ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
イタリアのM2TECHといえば、PCオーディオの黎明期からハイスペック音源への対応を実現するなど、デジタル再生における最先端を探求してきたブランドである。そんなM2TECHから、初の“A級モノラルパワーアンプ”「Larson」が登場した。
デジタルの最先端を追求するブランドがあえて送り出した「A級パワーアンプ」の実力はいかなるものか、同一シリーズでラインアップされるD級パワーアンプ「Crosby」との聴き比べを通じて探ってみようという本企画。オーディオ評論家の土方久明氏と、M2TECHの輸入元であるENZO j-Fiの菅沼洋介氏の対談でお届けしよう。
土方 M2TECHといえば、スティック型のDDC「hiFace」などでも知られていますが、とにかくデジタルに強い会社という印象がありますよね。そこが「A級パワーアンプ」、しかもモノラルで出してきたということに僕はとても関心を持っています。実際僕自身も、ネットワークやハイレゾなど、最先端のデジタル領域からオーディオ評論の世界に入ったのですが、ここ数年、やっぱりアナログドメインによる音質をもっと追求したい、と思っているところなのです。そういう背景からも今回のA級「Larson」とD級「Crosby」の聴き比べというのは非常に興味がありますね。
菅沼 興味を持っていただいてありがとうございます。M2TECHという会社はイタリアのピサ、「ピサの斜塔」で有名なイタリア中部のトスカーナ州にあります。普通ピサというと観光地のイメージですが、実はイタリアでも有数の工科大学があり、スタートアップやベンチャー企業などが多数集まる都市なんです。自治体も新しいビジネスに積極的に援助資金を出していて、M2TECHもそういったスタートアップ企業のなかから生まれてきたブランドです。
土方 そうなんですか! 「hiFace」もそうですが、技術もアイデアも非常に先進的なのはそういう背景があるからなんですね。
菅沼 創業者のマルコ・マヌータさんという人は、以前は太陽光発電の電源関係などのエンジニアをやっていたそうです。ですが、やはりオーディオが好きで、自分が一番追求したいものとしてオーディオのブランドを立ち上げたそうです。
土方 自分がやりたいことを追求しているという点では、ずっと一貫したものを感じますよね。
菅沼 DDCで192kHz/24bitに対応したのが非常に早かったですね。「hiFace」は日本でとても良く売れたアイテムと記憶しています。
土方 今のメインである「ロックスターシリーズ」はデザインもかっこいいですよね。僕は自宅でフォノイコライザーの「Joplin MKIII」を使っていますが、アールの付け方など、さすがイタリアだなと思わせるビルドクオリティがありますね。奇抜にするのではなく、オーディオルームにおいてもきちんと個性を発揮してくれます。
菅沼 今回の「Larson」もロックスターシリーズのひとつになります。女性歌手のニコレット・ラーソンから取られた名前ですね。「Joplin」はジャニス・ジョップリン、「Crosby」はデヴィッド・クロスビー、「Young」はニール・ヤングとみな著名なロックスターの名前から取られています。
編集部 土方さんはA級アンプ、D級アンプについてはどういう考えを持っていますか?
土方 最新のD級アンプの音は間違いなく良くなっていると思います。小型化できるメリットもあるし、単純に駆動力だけで言えばA級とは比べ物にならないレベルにあります。スピード感のある音が出せるので、能率の高い小型のブックシェルフスピーカーを限られたスペースで鳴らすには、かなりいいレベルまで来ていると思います。その一方で、これは機種にもよるのですが、弱点を感じることもあります。たとえば質感表現に関しては課題を感じるところもあります。また、小レベルの音の再現力についても、D級アンプでは難しさを感じることもありますね。
菅沼 A級ってすごく歴史が長い増幅方式で、まさにオーディオの歴史といえばA級の歴史ということもできるでしょう。一方、D級がオーディオ用途として使われるようになったのは、ここ2-30年というところでしょうか。ただ、やはりアンプの作り込みには思想が出ると思っていて、今回の「Larson」も、M2TECHだけにしかできない技術がたくさん入っているんです。D級の「Crosby」とは価格帯が違うということもありますが、M2TECHにしかできないことをやろう、という点では共通していると感じています。
土方 同一メーカー、しかも同一のシリーズでA級とD級の両方をラインナップしているブランドは珍しいですね。最新のオーディオ事情を探る上でも価値のある聴き比べになるんじゃないかなと思っています。
編集部 試聴に入る前に、レファレンス機器についても簡単に説明をしておきましょう。fidataの「HFAS1-S10」をトランスポートとしてUSBで出力。その後M2TECHの「Young MKIV」をUSB-DAC&プリアンプとして使用しており、パワーアンプのCrosbyまたはLarsonに直結しています。ボリューム調整もYoung MKIVで行う感じですね。スピーカーはB&Wの「803 D4」、ちなみにケーブルはTOP WINGブランドで新たにリリースした「White Signal」のXLRバランスケーブルを5mくらいで使っています。
デジタルの最先端を追求するブランドがあえて送り出した「A級パワーアンプ」の実力はいかなるものか、同一シリーズでラインアップされるD級パワーアンプ「Crosby」との聴き比べを通じて探ってみようという本企画。オーディオ評論家の土方久明氏と、M2TECHの輸入元であるENZO j-Fiの菅沼洋介氏の対談でお届けしよう。
アナログドメインでの音質追求に興味津々の土方氏
土方 M2TECHといえば、スティック型のDDC「hiFace」などでも知られていますが、とにかくデジタルに強い会社という印象がありますよね。そこが「A級パワーアンプ」、しかもモノラルで出してきたということに僕はとても関心を持っています。実際僕自身も、ネットワークやハイレゾなど、最先端のデジタル領域からオーディオ評論の世界に入ったのですが、ここ数年、やっぱりアナログドメインによる音質をもっと追求したい、と思っているところなのです。そういう背景からも今回のA級「Larson」とD級「Crosby」の聴き比べというのは非常に興味がありますね。
菅沼 興味を持っていただいてありがとうございます。M2TECHという会社はイタリアのピサ、「ピサの斜塔」で有名なイタリア中部のトスカーナ州にあります。普通ピサというと観光地のイメージですが、実はイタリアでも有数の工科大学があり、スタートアップやベンチャー企業などが多数集まる都市なんです。自治体も新しいビジネスに積極的に援助資金を出していて、M2TECHもそういったスタートアップ企業のなかから生まれてきたブランドです。
土方 そうなんですか! 「hiFace」もそうですが、技術もアイデアも非常に先進的なのはそういう背景があるからなんですね。
菅沼 創業者のマルコ・マヌータさんという人は、以前は太陽光発電の電源関係などのエンジニアをやっていたそうです。ですが、やはりオーディオが好きで、自分が一番追求したいものとしてオーディオのブランドを立ち上げたそうです。
土方 自分がやりたいことを追求しているという点では、ずっと一貫したものを感じますよね。
菅沼 DDCで192kHz/24bitに対応したのが非常に早かったですね。「hiFace」は日本でとても良く売れたアイテムと記憶しています。
土方 今のメインである「ロックスターシリーズ」はデザインもかっこいいですよね。僕は自宅でフォノイコライザーの「Joplin MKIII」を使っていますが、アールの付け方など、さすがイタリアだなと思わせるビルドクオリティがありますね。奇抜にするのではなく、オーディオルームにおいてもきちんと個性を発揮してくれます。
菅沼 今回の「Larson」もロックスターシリーズのひとつになります。女性歌手のニコレット・ラーソンから取られた名前ですね。「Joplin」はジャニス・ジョップリン、「Crosby」はデヴィッド・クロスビー、「Young」はニール・ヤングとみな著名なロックスターの名前から取られています。
長い発展の歴史を持つA級アンプ、パワー感の得られるD級アンプ
編集部 土方さんはA級アンプ、D級アンプについてはどういう考えを持っていますか?
土方 最新のD級アンプの音は間違いなく良くなっていると思います。小型化できるメリットもあるし、単純に駆動力だけで言えばA級とは比べ物にならないレベルにあります。スピード感のある音が出せるので、能率の高い小型のブックシェルフスピーカーを限られたスペースで鳴らすには、かなりいいレベルまで来ていると思います。その一方で、これは機種にもよるのですが、弱点を感じることもあります。たとえば質感表現に関しては課題を感じるところもあります。また、小レベルの音の再現力についても、D級アンプでは難しさを感じることもありますね。
菅沼 A級ってすごく歴史が長い増幅方式で、まさにオーディオの歴史といえばA級の歴史ということもできるでしょう。一方、D級がオーディオ用途として使われるようになったのは、ここ2-30年というところでしょうか。ただ、やはりアンプの作り込みには思想が出ると思っていて、今回の「Larson」も、M2TECHだけにしかできない技術がたくさん入っているんです。D級の「Crosby」とは価格帯が違うということもありますが、M2TECHにしかできないことをやろう、という点では共通していると感じています。
土方 同一メーカー、しかも同一のシリーズでA級とD級の両方をラインナップしているブランドは珍しいですね。最新のオーディオ事情を探る上でも価値のある聴き比べになるんじゃないかなと思っています。
編集部 試聴に入る前に、レファレンス機器についても簡単に説明をしておきましょう。fidataの「HFAS1-S10」をトランスポートとしてUSBで出力。その後M2TECHの「Young MKIV」をUSB-DAC&プリアンプとして使用しており、パワーアンプのCrosbyまたはLarsonに直結しています。ボリューム調整もYoung MKIVで行う感じですね。スピーカーはB&Wの「803 D4」、ちなみにケーブルはTOP WINGブランドで新たにリリースした「White Signal」のXLRバランスケーブルを5mくらいで使っています。