既報の通り、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、PSPの新モデル「PSP-2000」を、日米欧各地域で2007年9月から発売すると発表した。
様々な報道で指摘されているとおり、ポータブルゲーム機器市場で、PSPはニンテンドーDSを追いかける立場にある。欧米ではまずまず好調で、全世界出荷台数は2007年度末で2,500万台を突破しているが、日本においてはDSブームの陰で劣勢が続いている。今回の新機種は、欧米でのさらなる拡販、そして国内での巻き返しを狙ったもので、様々な機能追加や、薄型・軽量化を実現している。
オーディオビジュアル機器として見た際の「PSP-2000」の一番の注目点は、なんと言ってもビデオ出力機能の搭載だろう。別売りの専用AVケーブルを使って、PSPの映像をテレビに出力することができる。
私事になるが、いま我が家ではDSソフト「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」がブームとなっている。妻がプレイしている時に、画面をのぞき込もうとするのだが、視野角が狭いため、ほとんど何をやっているかわからない。他人のプレイを見ながら茶々を入れたり、アドバイスしたりというのもゲームの楽しみの一つであり、「テレビで画面が見られたらいいのに」という不満を以前から持っていた。ゲームボーイの場合、GAMECUBEに別売りのアダプターを取り付けることでテレビへの表示が行えたが、DSの場合は機器の構造上、ほとんど不可能だろう。
今回のビデオ出力は、私と同じ不満を抱えている方には待望の機能となるはずだ。PSPの場合は、PS2に匹敵する画像処理能力を持っているため、テレビ出力時でもある程度の画質が期待でき、今回の機能追加の意義は大きい。
AV機器として見た場合、PSPは機能面でニンテンドーDSを遙かに凌駕する。音楽再生はもちろん、UMDビデオソフトの再生や、メモリースティック内のMPEG4 AVC/H.264映像の再生も可能。スゴ録の対応機種と連携し、スゴ録内の映像をPSPにムーブし、再生することも可能。さらには、ロケーションフリーのプレーヤーとしても活用できる。
PSPのディスプレイは4.3インチ液晶。解像度は480×272ピクセルで、画角は16対9。ポータブルAV機器の中でも高水準のスペックを持っているが、液晶の応答速度はそれほど速くなく、動画ボケもかなり目立つため、長時間の動画視聴に適しているとは言い難い。鳴り物入りで登場したUMDビデオソフトが失速し、現在ではほとんどリリースされていないのも、PSPの販売台数の伸び悩みという本質的な理由のほかに、小画面でしか視聴できないパッケージソフトを購入するというニーズが、SCEが考えたほど大きくなかったという事実があるだろう。
PSP-2000では、UMDビデオソフト/メモリースティック内の映像・静止画を、コンテンツによって異なるが、最大720×480ピクセルで出力することが可能。これはDVDと同じ解像度であり、圧縮方式の違いは異なる(DVDはMPEG2、UMDビデオはMPEG4 AVC)ものの、DVDに近い水準の映像を出力することができるはずだ。
DVDソフトを外で見るには、ポータブルDVDプレーヤーやノートPCが必要になるのに対し、PSPとUMDビデオソフトの組み合わせならば、家の中でも外出時でも、1本のソフトで対応できる。もちろん、数億台の再生機が世界中で普及し、ソフトのラインナップも豊富なDVDのインフラは強固で、UMDがDVDに取って代わるということはあり得ないが、存在意義を失いかけていたUMDビデオソフトが息を吹き返すきっかけとなる可能性はある。
さらに、ロケフリプレーヤーとしてのPSPの価値も増すことになる。PSPは別売りの“ロケーションフリー”ベースステーションと接続することで、ロケフリのプレーヤーとして活用することができる。無線LAN環境があれば、自宅のAV環境を活用してテレビやプレーヤーを操作することが可能で、外出時や出張時に活用している方も多いだろう。PSPからのビデオ出力が可能になれば、たとえば宿泊先のホテルのテレビにロケフリの映像を表示することも可能になり、利便性はさらに向上する。
同じSCEのPS3も、販売不振が伝えられているとは言え、オーディオビジュアル機器として見た場合の性能の高さ、価格の安さは高く評価されている。PSP-2000も、ビデオ出力機能の追加によって、ポータブルAV機器としての存在価値をますます高めることになる。
(Phile-web編集部・風間)