最近、iPodを使っている友人から「付属のイヤホンが壊れたので交換したい。何かオススメのものはないか?」と助言を求められ、実際に買い物にも付き合わされたことがありました。彼のふだんの用途や買い換えの予算などをつぶさにアンケートしながら、1時間近く都内の量販店でヘッドホンを見て、ああだこうだをやっていました。モノ選びは楽しかったのですが、アドバイスの報酬がドトールのコーヒー一杯だけというのは冷たいなと思いました。
ところで、私はふだん通勤電車に乗っている時や、街をぶらついている時、iPodをはじめポータブルオーディオプレーヤーで音楽を聴いている人が「どんなヘッドホン or イヤホンを使っているんだろう?」と気にして見てしまいます。すると、プレーヤーを買った際に付いてきたイヤホンをそのまま使っている人が多くいらっしゃるように感じます。私の友人の場合は、たまたま使っていた製品が壊れたことがきっかけになりましたが、例えば安価なモデルでも、付属のイヤホンを交換してみると音質や使い勝手がガラリと変わって、ふだんの音楽リスニングが楽しくなるものです。今回は、最近テストしたヘッドホン&イヤホンから、使い心地もよく面白かったビクターのインナーイヤーヘッドホン「
HP-FXC50」を紹介してみたいと思います。
ビクター「HP-FXC50」は8月上旬に発売が予定されている密閉型インナーイヤータイプのヘッドホンで、最大の特徴は音の出口となるドライバーユニットを、イヤホンの筒の最先端部に配置した「トップマウント構造」を採用している点にあります。ドライバーユニットを直接耳穴に入れて聴くとどんな音がするのか?大変興味深いものがありました。
実際に聴いてみると非常に解像度が高く、見晴らしの良いサウンドで、特に低域はその重心の低さに驚かされました。マイケル・ジャクソンのアルバム「Number Ones」より『Black or White』を聴いてみました。楽器の数がとても多く、かつギラギラした感じのサウンドが密集した曲ですが、各楽器の音がしっかりと分離してバランス良く再生され、マイケルのボーカルも中央から存在感を放って聴こえてきます。同じアルバムの『Thriller』では重厚なベースラインが迫力たっぷりに迫ってくる印象です。私はふだん、ロック&ポップス系の音楽を聴くことが多いので、中低域のサウンドに量感のあるヘッドホンが好みなのですが、本機のサウンドには好印象を持ちました。
続いて原田知世のアルバム「music & me」から『時をかける少女』を聴きました。「ボーカル+ガット・ギター+パーカッション」というアコースティックな小編成によるボサノバ調の静かな曲ですが、通勤電車の中で聴いて、本機の遮音性能を確認してみました。「トップマウント構造」によりドライバーユニットが耳の奥まで入るので、リスニング時は音楽だけが聴こえ、電車の走行音など外部音はほとんど気になりません。パッシブなノイズキャンセリング効果はかなり高いと感じました。
装着感については、アーム部の内側にラバークッションを設けているので、長時間使っていても違和感は感じませんでした。私はふだん、インナーイヤータイプのヘッドホンはソニーの「MDR-EX90SL」を使っていますが、内耳へのフィット感は「HP-FXC50」の方が高いように思います。そのため、リスニング時のボリュームもぐっと絞って聴くことができるので、音漏れの心配はいっそう軽減され、心なしか耳にも優しいように感じられます。
音質・使い勝手が満足できたうえ、実売価格が4,000円前後というコストパフォーマンスの高さにも魅力を感じました。「インナーイヤータイプのヘッドホンは装着感が好きじゃないので…」と敬遠される方も多いようです。私も初めはそうでしたが、今では慣れてしまいました。インナーイヤータイプのメリットは、何より外部への音漏れが少ないことだと思います。昨今は通勤電車内で、ヘッドホンの音漏れが原因によるトラブルも増えているようですが、車内マナーにはぜひとも気をつけたいものです。気軽にインナーイヤーの使い勝手を試せて、しかも音楽再生のレベルも高い「HP-FXC50」はオススメできる製品の一つと言えるでしょう。ビクターにはぜひ、「トップマウント構造」を採用した上位モデルの開発も企画して欲しいと期待しています。
(Phile-web編集部・山本)