ソニー欧州法人が、液晶テレビ“BRAVIA”の新モデルを発表した(
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IFA開催を控えたタイミングでの発表だけに、同イベントで披露される可能性が高い。
今回発表されたモデルは、欧州法人のシリーズ名で「X4500」「W4500」となる。PAL仕様だけに倍速駆動が100Hz表示になっていたりと、欧州モデルならではの仕様となっているが、上位機のXシリーズに搭載されたLEDバックライトのエリア駆動制御を日本メーカーが商品化するのは初めてなだけに、その完成度に大きな注目が集まっている。
バックライトを通常のCCFL管に代えてLEDにすると、色域を広げることができ、特に赤色の表現力を増すことができる。ただし、ただ単にLEDバックライトというだけならば、すでに2004年の段階で、同社の“QUALIA 005”「KDX-46Q005」が採用している。また現行製品でも、“BRAVIA”「KDL-70X7000」に搭載されている。
今回のバックライトの特徴は、LEDの発光をエリアごとに制御できることにある。LEDバックライトをいくつかのエリアに分け、画面内の暗い箇所は発光させず、逆に明るい場所については発光させるというものだ。これまでの液晶テレビのバックライトは常時点灯していたため、いくら液晶のシャッターを閉じても光漏れは抑えきれず、これが黒浮きの原因になっていた。エリア駆動では輝度の高い部分だけを光らせるため、コントラスト比を格段に高めることができ、これまで液晶テレビが苦手としてきた「黒」の表現力を大きく向上させることができる。真っ黒の部分ではバックライトが発光しないのだから、コントラスト比はほぼ測定限界値に近くなるはずだ(ソニー欧州では100万対1と表現している)。
また、これはパイオニアのプラズマテレビ「KURO」発表時に盛んに指摘されたことだが、黒が沈むことによって、視覚的な色純度が格段に高まる。この効果と、前述のLEDによる色域の拡大により、色彩の表現能力も大きく高まるはずだ。
LEDエリア駆動は、今年1月のInternational CESなどで各テレビメーカーが盛んにアピールしていた技術で、液晶テレビの今後の画質向上の切り札として早くから本命視されていた。参考展示段階のデモでもその効果ははっきりと認識でき、早期実用化が望まれていた。
またドルビーも、昨年のCEATECで同種の技術「ドルビービジョン」を発表(
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ただしLEDのエリア駆動は、発光エリアの数が少なかったり、アルゴリズムの完成度が低かったりすると、不自然な映像になる可能性もある。たとえば、夜空に月が煌々と照っている画面などの場合、発光エリアが広いと月の周りにぼんやりと光漏れすることなども考えられそうだ。新BRAVIAがどの程度の完成度を持って登場するのか、大変興味深い。
液晶テレビはフルHD化、倍速駆動といったあたりが近年のトレンドだったが、このLEDバックライトのエリア駆動は、それらに劣らない、大きなインパクトを見るものに与えるはずだ。もし新BRAVIAがIFAに出展されたら、その画質インプレッションを早期にお届けしたいと思う。
(風間)