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SHURE開発者に聞く、同社初のオープン型ヘッドホン「SRH1840/1440」投入の背景

公開日 2011/12/15 10:59 中林直樹(TROVADOR)
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ーーさて、お二人のプロフィールを拝見すると、エングストロームさんは楽器の演奏やスタジオレコーディングを、ジョーンズさんはDJを趣味とされているようですね。そうした活動は、製品作りに活かされているんでしょうか?


マット・エングストローム氏
エングストローム氏:私の場合は読み書きができる前から、ピアノを弾いていました。だから、音を聴くだけで、周波数やピッチがわかってしまうほどです。学生時代からバンドで音合わせをするのは、必ず私でしたね。

演奏活動をするうちに、レコーディングやミキシングの方にしだいに興味が移ってきました。だから、音へのパッションは常にありました。

そして、10年ほどプレイしていたクラブがあって、その建物の上に住んでいたのが、実はシュアの営業マンだったんです。彼と話をしたところ「そんなに音楽が好きなんだったらシュアで働けばいいじゃないか」と言われたんです。それが1998年のことです。

入社後も音楽を続けているので、ピアノがどういった音か、ギターはどういった音かを知っています。そして、それらをどのように表現するべきかもわかっているつもりです。だから、音楽の経験が製品開発に活かされていると思います。自分にぴったりの職業ですね。

ーープレーヤーの側、エンジニアの側、両方をわかる人物がものづくりに関わっていらっしゃるのは大切なことですね。演奏活動は今も続けているんですか?

エングストローム氏:もちろんです。2つのバンドを掛け持ちしています。以前はエレクトリックなロック、自分たちでは「ハイエナジー・ロック」と呼んでいましたが、そんなジャンルを演奏していました。最近では「ラウド・ノット・アングリー(音は大きいが、怒ってはいない)」ような音楽ですね。レコーディングに関しては、昨年は15枚、その前は13枚を録音しました。アナログ盤も手がけます。

ーージョーンズさんは、いかがでしょう? どんなジャンルのDJですか?

ジョーンズ氏:13歳の頃からDJをしています。地元シカゴのDJコミュニティーで賞を穫ったこともあります。プレイするのはハウスを中心としたダンスミュージックです。

ご存知のようにシカゴはハウスの発祥の地です。高校生のとき、プロデューサーのジュリアン・ジャンピン・プレーズに認められて、彼のレコードを運んだり、ケーブルをつないだりといった手伝いをするようになりました。そうして、音に対する欲望が目覚めていったんです。そこでサウンドプログラムで有名なコロンビア・カレッジ・シカゴで勉強しました。

教授陣も豪華で、たとえばチャック・ベリーのファーストシングル「メイベリーン」を手がけたエンジニア、マルコム・チェズムにも教えを受けました。そんなカレッジを卒業して2週間後にはシュアで働き始めました。次の6月で12年が経ちます。

ーー数あるブランドの中から、どうしてシュアを選んだのですか?


マイケル・ジョーンズ氏
ジョーンズ氏:シカゴだけでなく、アメリカ全体で最も影響力のある企業のひとつだからです。それに、私より音に詳しい人たちが大勢います。音への欲望が十分に満たされると思ったからです。

入社した後は、音の知識に浸りきっています。それと、実は、生まれた家から2マイルほどのところにシュアがあるんです。子供の頃から憧れたブランドで働いているなんて、良い意味のショックがありますね。

ーー最後に差し支えなければ、音決めの際に使用しているレファレンスCDを教えていただけませんか?

エングストローム氏:私の場合は、自分の作ったものですね。レコーディングやミックスの現場の音を当然知っているからです。あとは、50年くらいまえに録音されたものを使っています。なぜなら、ラウドネス・ウォーと言われるように最近の音楽はコンプレッサーが掛かりすぎていて、ダイナミックレンジが広くないものが多いからです。

ジョーンズ氏:何を評価するかによって音楽を選んでいます。女性ボーカルでは、ノラ・ジョーンズなどを聴きます。音の広さや深さをチェックしたい場合は、ライブで録音されたもの、ベースのレスポンスを評価するときは、ラップやエレクトロニックなものです。とにかく、いろんなものを聴くようにしています。

ーー今回は、お二人のパーソナリティにも触れることができ、非常に有意義なひとときでした。どのような方々がこれらを作り上げたのかを分かったからこそ、製品に対する興味がいっそう深くなりました。ありがとうございました。

インタビュー/文:中林直樹(TROVADOR)

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