スペシャルインタビュー
REGZAのクラウドサービス “TimeOn” ー 開発者に聞く「進化するクラウド」構想
「TimeOn」のカレンダーが実現する便利な録画アシスト機能
東芝のテレビ向けクラウドサービス「TimeOn」は、テレビ番組などの映像コンテンツを話題として共有できるソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)がコンセプトだ。現在対応しているレグザの最新モデル“Z7/J7”シリーズでは、「見どころシーン再生」という、シーン単位で録画番組の視聴が楽しめる新機能を中心に「TimeOn」への注目度が高まっている。実は先に紹介した「おすすめサービス」で使われているHDEXサービスアカウントは、新サービス「TimeOn」のアカウントとの連動性を備えており、便利なテレビ録画のサービスを実現している。
「TimeOn」の第一弾サービスとしてスタートした「カレンダー」機能では、HDEXサービスアカウントと「TimeOn」のアカウントでひもづけられた録画機器の録画予約や視聴予約の状況を、「カレンダー」のインターフェースに一覧表示できる。ユーザーの機器を特定するためにはアカウント情報のほか、東芝が「おすすめサービス」のPCサイトを運営する際に提供開始した、平仮名のパスフレーズ機能を併用している。録画予約情報と結びついた「おすすめサービス」機能が、「TimeOn」ネットワークサービスをプラットフォームにすることで、これまでと違う進化したかたちで便利に使えるようになる。
東芝のレコーダー/テレビを所有するユーザーの中には、ランキング機能を使うために「おすすめサービス」を有効にしている方々も多いかもしれない。「おすすめサービス」の歴史はレコーダー「RDシリーズ」のアナログモデル時代となる2005年にまで遡ることができ、現在もそれが継承されている。
「おすすめサービスのサーバーは、TimeOnのサーバーと連携していて、機器ごとの録画予約情報を「カレンダー」で扱うことができます。また2005年のおすすめサービスのスタート時の初期のモデルも含め、多くの機種に対応していますので、これまでの使い方に加えて、新しい使い方ができるようになります。第一弾としては、機器横断での統合予約リスト表示ができますが、今後も様々な応用を検討していきます」(片岡氏)
もちろん個人情報の保護管理は徹底されているという。なお、ユーザーを特定するためのHDEXアカウントそのものが消去されていれば、残念ながら過去ログデータも削除されているという。
録画データのログについては「TimeOn」アカウントにひも付けることができる。過去の録画ログデータをさかのぼって参照できるメリットとして、例えば「以前に録画視聴した番組情報を確認しながら、現在VODサービスで公開されている同じコンテンツを検索して視聴する、といった機能も実現できるかもしれません」と東芝の坪井氏は語る。例えばアニメやドラマの名作コンテンツは、VODチャンネルでも人気が高く、再放送の可能性も高い。ユーザーにとって思い入れの深いコンテンツと、再び出会って視聴できる機会が増えるのであれば、実に面白い機能になるのではないだろうか。
今後は「TimeOn」の考え方とコンセプトを結びつけるサービスが登場
クラウドサービス「TimeOn」と連携するもうひとつのオリジナルアプリに「RZクラウド for Android Tablet」(以下:RZクラウド)がある。このアプリが開発された経緯については「TimeOnのクラウドサービスを、テレビの画面上だけでなく、タブレットのタッチ操作を活かしながら楽しめるアプリが必要と考えた」と坪井氏。さらに「“RZ番組ナビ”の軸足はユーザーへのコンテンツナビゲーションにありますが、“RZクラウド”はTimeOnのサービスを充実させるための役割も担っています。番組の録画予約を“ナビ”から入れて、“クラウド”で参照するなど、必然的に互いのアプリで関連性は出てくると思います」と説明を加える。
TimeOnでは、先に紹介した「カレンダー」機能など“第一弾”のサービスがスタートしたばかりなので、「RZクラウド」でできることにも、今のところまだ限りがある。12月の本取材時点では、クラウドメニューをタブレットの画面上に表示しながらカレンダーやメッセージをチェックしたり、「伝言ボード」や「クラウドアルバム」の利用、「録画予約の確認」などを使うことができた。今後のアプリの進化について訊ねてみたところ、「“TimeOn”サービスは、まだコンセプト全体の3割ほどがスタートしたばかりです。テレビやレコーダーとの連携だけでなく、他のアプリとの連携、サーバーの整備など、それぞれのピースを個別に立ち上げたあと、さらなる強化を進めているところです。そのひとつのピースが“RZクラウド”であり、各サービスをリンクさせながら必要な機能と使い勝手を実現しているところ」なのであるという。
東芝は「レグザAppsコネクト」に対応するアプリとして、他にも録画予約操作や予約状況の一元管理を行う「RZスケジューラ」や、テレビ放送の番組表やコントローラー機能を内包する「RZ現在番組」などを公開してきたが、これらのうちいくつかは「RZ番組ナビ」「RZクラウド」の登場を機に整理・統合されていく予定という。なお「タグリストのシェア」というコンセプトとユーザー体験を提案する「RZタグラー」アプリについては、今後も継続的に提供されていく。テレビのソーシャル視聴の先駆け的アプリとして注目を浴びる「RZタグラー」の進化が、今後「RZ番組ナビ」「RZクラウド」のソーシャル連携機能にどのような影響を与えていくのか、興味深いところだ。
今秋から新たにスタートしたクラウドサービス「TimeOn」をはじめ、新アプリの「RZ番組ナビ」「RZクラウド」ともに、現時点では東芝の開発陣が構想しているコンセプトの一部を体現したばかりである。筆者も製品やアプリをハンドリングしながら、「ここの使い勝手が、もっとこうなって欲しい」「こういう機能を付けて欲しい」といった要望を少なからず感じることがあるのだが、今回東芝の開発担当者にインタビューできたことで、ユーザーの録画ライフをさらに充実させることをゴールに置いた開発のロードマップが、この先にしっかりと描かれていることが見えてきた。また、「おすすめサービス」を起点にテレビ向けインターネットサービスにいち早く取り組んできた東芝は、その豊富なノウハウをベースにクラウド型サービス「TimeOn」を、満を持して立ち上げたこともわかった。「TimeOn」のプラットフォームに、魅力的なハードやアプリをつなぎながらどのような世界観が描かれていくのか、期待しながら今後の展開に注目したい。
(インタビュー/レポート:折原一也)