高音質を実現するための「二つのテスト」とは
Ultimate Earsに聞く、話題のフラグシップイヤホン「UE900」誕生の背景
「UE900」ではプロ用カスタムイヤーモニターと同等のクオリティを追求した
ーーハイエンド・イヤホン「UE900」の開発にあたって、従来のフラグシップ「TripleFi 10」から進化させた点はどこですか。
ドーリー氏:本機の開発には約2年間を費やしました。目標としていたゴールは、当社のプロ用カスタムイヤーモニターのクオリティを、コンシューマー製品で実現することでした。例えば、ミュージシャンがステージ上で使用中のイヤーモニターに何らかのトラブルが発生した際でも、「UE900」で代用できるほどのクオリティを実現したいと考えました。また、イヤホン部は誰の耳にも無理なくフィットするコンパクトなデザインにすることも心がけました。
ーーイヤホンを装着した時のフィット感がぐんと良くなったという声も多く聞きます。
ドーリー氏:ありがとうございます。「UE900」の装着感を検証する段階では、周囲から多くの方々にフィッティングテストなど、ご協力をいただきました。イヤホンは耳の穴の中に常時密着させて使うものなので、アコースティックの部分では聴き疲れしないような音づくりに整える一方で、肌へのタッチや安全面でのケアも入念に行いました。
ーーケーブルにはどのような工夫が凝らされていますか。
ドーリー氏:着脱式のケーブルは、コネクターをMMCXに変更してコンパクト化を図りました。端子形状が互換性の高いMMCXになって、サードパーティーの交換ケーブルも幅広く楽しめるものと思います。ケーブル交換については、購入後のメンテナンスにも効果を発揮します。万一、プラグやケーブルが壊れた際は、新しいものに交換すれば長く「UE900」を楽しんでいただけます。なお、製品パッケージには通常のピュアリスニング用のものと、マイクコントローラー付きのものと、計2種類のケーブルを同梱していますので、用途に応じて使い分けて欲しいと思います。
ーー「UE900」の音質はどのように決定していきましたか。
ドーリー氏:「UE900」が目指すサウンドのゴールは、ピュアに原音を再生できるイヤホンを実現することでした。実際にバランスが良く、あらゆる音楽ジャンルに対応できるサウンドに仕上げられたと自負しています。本機には4ドライバーのバランスド・アーマチュアシステムを採用していますが、音がきちんと鳴るまでには100時間程度のエージングが必要と言われています。ユーザーの方々には、購入後にリスニングを重ねていくうちに、「UE900」のサウンドが開花していく楽しさを実感してもらえると思います。ヘッドホンの「UE9000」については、近年の音楽ファンの嗜好を少し採り入れながら、低域の音をリッチに仕上げています。
ーー「TripleFi 10」と比べて、「UE900」はデザインが大きく変わったことも注目を集めています。Ultimate Earsでは製品のデザインをどのように決めているのでしょうか。
ドーリー氏:デザイナーについては社内のスタッフも関わりながら、多くを外部デザイナーとのパートナーシップにより完成させました。製品をデザインしていく過程も緊張の連続でした。本体の質感やフォルムだけでなく、装着感やハンドリング、箱を空けたときのワクワク感にも細かく気を配りました。ワイヤレススピーカーは部屋に置いた際の、インテリアとのマッチングにも検証を重ねています。ほかにもアフターサポートなどのサービス、Webサイトのデザインも含めたトータルでの演出に力を入れています。
最近はモバイル、アウトドアで音楽を楽しむ方々が増えて、イヤホンやヘッドホンの“ルックス”が非常に大事になっています。「UE900」を開発するにあたって、デザインのレベルを高めることも重視してきました。「デザインの良い製品=音が良い製品」ではありませんが、デザインに魅力が無ければ、いくら音は良くても満足が得られない製品になってしまうと考えたからです。
ーー今回は最上位の「UE900」が発表されましたが、例えばデュアルアーマチュアドライバー搭載の「UE700」の後継機など、最上位機に続く新しいラインナップの導入は予定していますか。
ドーリー氏:現時点では、イヤホンの最上位である「UE900」のグローバルリリースを完了したばかりですので、まだ詳細をお話しすることはできません。でも、Ultimate Earsではこれからも常に新しい製品を手がけていきます。続きの詳細については、またしかるべき機会にお伝えしたいと思います。
ーーロジクールとのコラボレーションにより、今後Ultimate Earsの
製品はどんな方向に進化していくのでしょうか。
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