“待望の新素材”開発の裏側に迫る
PCOCCを超える? 注目の新銅素材「PC-Triple C」開発者インタビュー
■“PC-Triple C”という名称の由来は? 生産コストは?
なお“PC-Triple C”という名称は、「Pure Copper-Continuous Crystal Constructions(連結結晶高純度無酸素銅)」の略だ。これについては「PC(Pure Copper)」という単語を引き続き採用することによって、「PCOCCの流れを受けた単結晶に近い導体である」ということをアピールする狙いがあったという。また、そのまま“PCCCC”にしてしまうとPCOCCとの違いがわかりにくいことから、“PC-Triple C”の表記を採用した。なお商標登録はPC-Triple CとPCCCCの両方で行っているとのことだ。
さらに生産コストについて伺ったところ、芥田氏は「手間ひまをかけて良いものを作るので、コストはもちろん安くはないですが、PCOCCの代わりとしてのニーズもありますので取り組んでいきます」と語った。なおコストが安くないとはいえ、それでも市場投入時の価格は「PCOCCより3〜4割高くなるくらい」とのことだ。
■PC-Triple Cの音質的メリットは? 今後の展開は?
続いて、PC-Triple Cの音質的なメリット・特徴についても話を伺ってみた。矢口氏は「導線の素材が音を変えるというよりも、導線があり、そして静電容量などのスペックや被覆素材の選択といったケーブルを作り上げる過程の様々な要素が絡んで音質が決まると思います。なので、導線の音質ということは一概には言えませんが、構造的にPC-Triple Cは結晶粒界があることで振動を吸収する隙間があります。PCOCCは粒界がないので振動を吸収する隙間がありませんでした。この違いは、ケーブル製造時の音づくりに影響を与えるのではないかと思います」とした。
また矢口氏は「様々な特徴を持つ素材があり、『どれが音質的に優れている』ということではなく、ケーブルを作る際に多くの選択肢があることが重要だと思います」と語る。「そういう意味で、タフピッチやOFCに加えて、結晶構造を追求したPCOCCが登場し、ケーブル用導線の選択肢が増えたことは大きかったと思います。PCOCCはオーディオ製品の発展に寄与した導体ともいえるのではないでしょうか。しかしPCOCCがなくなったら、その選択肢はタフピッチかOFCかの二択に戻ってしまう。ケーブル導線の選択肢が狭まってしまうことがそもそも問題だと思ったんです。だからPC-Triple Cを開発しました。オーディオの感性をしっかりと伝えられる導線を新しく開発しなくてはならないと思ったんです」(矢口氏)。
オーディオファンとしては、実際にPC-Triple Cがどういった製品に使用されるかも気になるところだ。矢口氏は「ケーブル製品のほかにカートリッジなどにも展開していきたいですし、また、アナログだけでなくハイレゾやネットワークなどデジタルオーディオ製品にも充分対応できる素材だと思います。オーディオの世界以外にも、スタジオユースの製品など多方面に使用できると思いますので、幅広い分野に供給していきたいです」とコメント。今後のPC-Triple C採用製品の登場に期待が掛かる。
(編集部:杉浦みな子)