<山本敦のAV進化論 第29回>
「ヘッドホンでもDolby Atmos」の可能性とは? モバイル向けドルビーアトモスの詳細を聞く
「劇場用のDolby Atmos対応ツールやワークフローについては、そのままホームやモバイル向けの開発環境として落とし込めるようになっています。まずはシアター向けのコンテンツから広がっていくものと思いますが、次にオンライン配信サービス、BDパッケージを介してホームシアターにリーチして行きます。配信サービスのプラットフォームが強化されれば、モバイルのDolby Atmosが一気に拡大するチャンスにもつながります」。
ドルビーではまたDolby Atmos対応コンテンツに関心を寄せる世界中のスタジオやアーティストとのパートナーシップ強化にも取り組んでおり、ハリウッドのメジャースタジオでは現在、様々なコンテンツのDolby Atmos対応が積極的に進められている。
一方、5.1chや2chなど、チャンネルベースの“Dolby Atmos非対応”コンテンツを、擬似的にDolby Atmos風のサウンドにして楽しむことはできないのだろうか。木村氏は「ヘッドフォンでのDolby Atmosは、Dolby Atmos対応コンテンツでしか体験できません。Dolby Atmos非対応コンテンツには、従来のポストプロセス処理が適用されます」と説明する。つまりDolby Atmosの醍醐味である自然なサラウンド感が得られないため、疑似生成の意味がないということだ。やはり純正のDolby Atmos対応コンテンツが増えることに期待した方がよさそうだ。
映画作品以外、例えばDolby Atmos対応のオーディオコンテンツなどの方向に広がっていく可能性はあるのだろうか。Ganti氏は「音楽やゲームのコンテンツクリエイターとの提携も深めながら、様々な種類のDolby Atmos対応コンテンツが生まれる土壌づくりにも継続的に注力しています。今のところはまだ具体的にお伝えできることはありませんが、ぜひ今後も注目して欲しいと思います」と語る。
モバイル対応のDolby Atmosはまだスタートを切ったばかりであり、まずは国内でAmazonの「Fire HDX 8.9」が発売されてから、どういったDolby Atmos対応コンテンツが用意されるかが気になるところだ。ホームシアターファンだけでなく、モバイルガジェットのファンにとってもDolby Atmosは注目すべきテクノロジーだと言えるだろう。