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担当プロデューサーに聞く

なぜ宇多田ヒカルのハイレゾ第2弾には「くまちゃんUSBメモリ版」が用意されたのか?

公開日 2014/12/09 12:00 インタビュー:中林直樹/構成:ファイル・ウェブ編集部・小澤麻実
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― 『SINGLE COLLECTION』は曲ごとにマスターのかたちが違いますよね。1/2インチアナログテープもあれば、192kHz/24bit WAVも44.1kHz/24bit WAVもある。

沖田氏:そうですね。『SINGLE COLLECTION』ハイレゾ版は、宇多田の全アルバムを手掛けてくれているテッド・ジェンセンにリマスタリングをお願いしています。テッドに相談したときに、それぞれを元にベストなサウンドを作るよ、と言ってもらえました。スペック的な観点というよりは、最新のテクノロジーによるサウンドのアップデート、という考えですので、そこを理解していただきつつ、CDと聴き比べたりして楽しんでもらえればと思っています。

― 『SINGLE COLLECTION』のハイレゾ版を聴いた感想はいかがですか?

沖田氏:「こういうのスタジオで聴いてたんだよね」と思いました。これをみなさんに聴いてもらえるのは嬉しいですね。でも、音楽家にとっては言い訳ができなくなる世界だなとも。プロデューサーの三宅彰さんは、CDの時はうまくマスキングしていたところが出ちゃって恥ずかしい気がするって言っていましたね。「ハイレゾは水着にたとえるとハイレグだね!」みたいな(笑)。


― 宇多田さんはどんな風におっしゃっていましたか?

沖田氏:サウンドが良いのはもちろんですが、「私のようなポジションのアーティストがハイレゾに取り組むのが大事なんだと思う」と言っていました。先陣を切って果敢にチャレンジする責任を負っているんだ、と。彼女は早くからブログやネット中継を始めたりと、常に新しいチャレンジをしてきたアーティスト。今回のリリースもそれと同じ位置づけです。

僕はハイレゾへの流れを、VHSからBDへの流れと同じに考えない方がいいと思っていて。映像だと、一回BDの画を見ちゃうとVHSには戻れなくなりますけど、音楽の場合、ハイレゾを聴いたらもうMP3に戻れないというわけではないじゃないですか。ライブの世界では、ステージに近い席になるほどチケットが高いですよね。音源の世界もそれと同じなんじゃないかと。かぶりつきで音楽に向き合いたい人もいれば、少し離れた場所から自由な感じで楽しみたい人もいる。ハイレゾもMP3もパッケージも、どれかが駆逐されていくのではなく、それぞれ共存していくのが音楽の面白さではないかと思います。


― ハイレゾ=高音質=それがいい、と短絡的に言いたくないと僕も思います。それぞれが共存して、色々な人の色々な音楽の楽しみ方に合わせて使い分けができたらいいですよね。

沖田氏:同じく12月9日には錚々たるアーティストのみなさんによるソングカバーアルバム『宇多田ヒカルのうた』も、AAC-LC 320kbpsで配信開始になります。こちらもぜひあわせて聴いてみてください。



(インタビュー:中林直樹/構成:ファイル・ウェブ編集部・小澤麻実)

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