テクニクスが次の50年輝き続けるブランドになるために − 小川氏が語る今後の展望
音楽を愛する人たちに、様々な選択肢を提供したい
― 今後のラインナップ展開はどのようにお考えでしょうか?
小川氏:今回は“Referenceシステム” R1シリーズと“Premiumシステム”C700シリーズという2ラインをご用意しました。このふたつの間の製品を出して欲しいというお声を多くいただきますし、我々自身もその必要性は認識しています。
それから、音楽は好きだけれどオーディオの世界にはまだ入っていないという方や、女性に向けたモデルなども検討したいですね。いまは多様な価値観が存在する時代です。それにどうやって対応していくかを、ターゲットを明確にしながら考えていきたいと思います。
― 女性も音楽に親しんでいる方は多いですよね。なのにオーディオということになると男性ばかりなのが現状です。東京と大阪にリスニングルームを作り、様々な方がオーディオに触れるきっかけづくりもされていますね。
小川氏:音楽は好きだけど、オーディオを知る/出会うきっかけがない…という方は多いと思います。しかし音楽の普遍的な感動は廃れることがありませんし、きっかけがあればオーディオの世界に入っていける人もいるはずです。テクニクスのリスニングルームを偶然訪れた、オーディオなんて全く知らないような若い人たちが「すごいね、いつかはこういうのが欲しいね」と言って下さっているのを聞いて、こういうことは絶対に大切だなと思いました。
「次の50年」を考えるときに、10年後や20年後の音楽やリスニングスタイルはどうなっているだろう、と思いを馳せます。色々な選択肢のなかから選び取っていける人生は豊かで幸せなものですが、手近なものだけで済ませてしまうような、閉じて完結してしまう選択肢しかなくなってしまうと、感性の深い森にも入り込んでいけないのではという危機感を抱いてしまいます。
私は大学でメディカルエレクトロニクスを専攻し、呼吸や脈拍など人間の根源にある“リズム”と自然界の動きの関係性について学びました。そして1986年に松下電器(現パナソニック)に入社し、音響研究所で、音楽心理の観点から数字では表せない“音楽性”をどう捉えるかということを研究しました。その後、DVDオーディオの規格策定に携わったり、ネットワークサービス事業部門で動画や音楽などのコンテンツ配信と圧縮について考えたり、CSR部門で次世代育成支援活動を行ったりしました。
こういった自分のキャリアを振り返ってみて、「点」が「線」になり、そして「面」になって発展していくと感じています。テクニクスを新生させると決まったとき、自分のなかでこれまでやってきたこと、考えてきたことがスッとつながったんです。それは技術の面でもそうです。チーフエンジニアの井谷はテクニクスのCDプレーヤー第一号機開発に関わったあと、BDレコーダー“DIGA”の開発を通して最新のネットワーク技術や高音質化のノウハウを得て、新生テクニクスのキーマンのひとりとなりました。
ですので自信を持って、自分の言葉としてテクニクスのフィロソフィーをアナウンスできました。
テクニクスのブランドフィロソフィーは「Rediscover Music(音楽の再発見)」。音楽を愛する全ての人に向けて、サウンド、デザイン、テクノロジーが三位一体となった製品群を送り出すことを目指しています。従来のオーディオ愛好家はもちろんのこと、スペックや技術的なことは分からないけど良い音を聴きたいという方にも、音楽の楽しさをより味わえるような製品を提供できたらと思います。
― これからのテクニクスにも期待しています。ありがとうございました。