内蔵SPでハイレゾ再生
初の “ハイレゾ対応PC” に込めたこだわりとは? 富士通FMV開発陣に聞く
「まず、デスクトップPCは年配の方が購入されることが多いんです。そして、年配の方にファンが多いクラシックにも多くのハイレゾ楽曲が登場しています」。
「また、いまハイレゾ楽曲でヒットしているのが、昭和の歌謡曲です。ここも製品のターゲットとマッチしています。この市場が盛り上がって来たことが、我々がハイレゾ対応を考えたポイントになると思います」。
「30代、40代の方には、アニソンなども多数あり盛り上がっていますので、広い層に楽しんで貰えるのではと思っています」(丸子氏)。
■ハイレゾ対応のために磁性流体トゥイーターを追加
ではハイレゾ対応を実現した具体的なポイントをチェックしていこう。ハイレゾ音源を再生するために欠かせないのが、ハイレゾの高解像なサウンドを再現できるスピーカーが必須だ。これはいわゆるPC内蔵スピーカーでは実現できない。そこで最初に行ったのが、スピーカーの開発だったという。そこに取り組んだのが、富士通のすべてのパソコンでサウンド周りを監修する村松芳夫氏だ。
「ハイレゾの定義には団体や業界によって違いがあるのですが、PCである以上、一般的な192kHz/24bitのPCMファイルの扱いは全く問題ありません。開発が必要なのはスピーカーなどのアナログの部分です。従来PCでは、高域に関しては20kHzまで再生できていればいいと考えていた。これよりも上の音も出ているんですが、あまり出し過ぎるとノイズ源になったり、低域側に悪さをしたりするので、落とす方向でいたのです。まずは、それを40kHzまで出るようにしました」(村松氏)。
これまでのPCで再生するサウンドは、MP3などの圧縮音源か、音楽CDの音、そしてテレビやDVD、BDのサウンドだ。この場合、ハイレゾのような広帯域の再現性は求められず、どちらかというと、サラウンド感や迫力、音圧を重視して開発してきたという。これはハイレゾ再生のためのスピーカー設計とはまた異なる方向だ。
「従来モデルでは、1つのスピーカーユニットで低域から高域まで鳴らしていました。我々がメインターゲットに考えている顧客層のニーズは音圧重視、しっかりとしたボリュームで鳴ることだったので、楕円形のユニットを使って、音圧を稼ぐ設計になっていました。しかし、その分、どうしても高域は伸びない。特に20kHzより上の音は暴れてうるさい音になるので抑えていました」。
「そこで今回、ハイレゾに対応したクリアな高域を再現するために、トゥイーターを別途搭載することにしました。高域をトゥイーターに任せることで、40kHzまでクリアに再生できるようにしています」(村松氏)。
■新筐体は高音質化のために徹底してこだわった
当然ながらトゥイーターの搭載はコストアップとなる。しかし、内蔵スピーカーでハイレゾを再現するためには、それは欠かせないポイントだった。しかも、単に高音を担当するトゥイーターを付けたというだけではなく、よりキレイな音が出るようにと磁性流体のトゥイーターを採用している。これによって、振動板をリニアに動かすことができ、より高域のクリアな再現を可能としているという。そして、ハイレゾ対応をきっかけとした高音質化への取り組みはスピーカーにとどまらない。