脳を活性化するウルトラディープ処理の詳細とは
“肌で聴く”ハイパーハイレゾとは?「交響組曲 AKIRA 2016」の音の秘密を山城祥二氏に訊く
―― ミックス作業はかなり大変だったのではと思うのですが……
高田:そうですね。普通にマルチの素材をダウンミックスすればいけるかなと思っていたんですけど、それだとダメでした(笑)「ここは少し低域を出して」「ケチャの部分はハイを上げよう」「ここはもっとリバーブをかけよう」とか……もういちどここで音楽を構成したという感じです。
大橋:元々の感じが、ウルトラディープ処理をかけたらふっとんじゃったということです。ゼロから音を組み立てないとダメだったので、高田さんは大変だったと思います。でも本当に、うまくいって良かったです。
―― システムも、ゼロから組み直したとか。
高田:はい。ミックスの要となるミキシングコンソールは、NEVEの創設者ルパート・ニーヴさんが特別に作ってくれた「AMEK9098i」です。これは200kHzまで平坦な特性を持つという驚異的なもの。いいコンソールでミックスすると、そもそもの出てきた音の質感が全然違うんですよ。音のヌケや肌触りが、ものすごくいいんです。あとはガムランやジェゴクなどの楽器の音には真空管の音が合うなあと思ったので、コンプレッサーにはTUBE TECHの「SMC-2A」と「CL-1B」を使っています。リバーブはLEXICONの「960L」です。
それとモニター機材にも特別なものを使いました。メインのスピーカーはダイアモンド・ダイアフラム・スーパートゥイーターを搭載した“大橋モニター”で、特別に製作してもらったもの。こちらに、これも特注の圧電素子を使ったセラミックスーパートゥイーターを組み合わせました。一般的なスーパートゥイーターだと80kHz以上はどうしても音が落ちてしまうほか、指向性も狭いのですが、この2つはそういったことがありません。ミックス時にはセラミックスーパートゥイーターをON/OFFして確認しながら作業を行いました。
大橋:昔のLPレコードは、ものによってはハイパーソニック・エフェクトを発現させるくらいの超高周波が記録されていましたけれど、CDではそれが全く無くなってしまいました。確かにきちんとした良い音が簡単に聞けるんですが、肝心の「音楽を聴く快感」という部分が、希薄になってしまっているように思うんです。長い間音楽産業はそういうハンディを背負っていたわけですが、ハイレゾの登場で、うまくいけばそのあたりが挽回できるかも知れない。
「ハイパーソニック・ウルトラディープ処理」はこれまで録音された色々な音源に適用できますが、今後は「再生システム」が課題になると思います。ぜひご家庭にもスーパートゥイーターを導入して、「交響組曲 AKIRA 2016」を聴いてみていただきたいですね。
―― 非常に興味深いお話を有り難うございました。