<山本敦のAV進化論 第153回>
Xperia XZ2開発者に聞いた「イヤホン端子を無くした理由」。議論の果てに下した未来への決断
■スマホ初のHLG方式による4K/HDR動画撮影はこうして実現できた
新しいXperiaに追加されたカメラ機能から、特にXZ2で実現したスマホ初の4K/HDR撮影について、詳細を高野氏にうかがうことができた。
XZ2にはイメージセンサーの働きをサポートするDRAMを乗せた「メモリー積層型センサー」と「Motion Eye」カメラシステムがXZ1に引き続き搭載されている。それぞれの特徴についてはXZ1の開発者インタビューも合わせてご覧いただきたい。それにしても、同じカメラシステムを引き継いでいるのに、どうして新しい機能やユーザー体験を追加できたのだろうか。
「HLG方式による4K/HDR撮影についてはクアルコムの新しいモバイルプラットフォームのSoCであるSnapdragon 845を搭載したことで実現できたものです。チップセットが10bitの色深度とBT.2020の広色域による映像エンコードに対応しています。ただ、それだけでなく、メモリー積層型のMotion Eyeシステムの性能をかけあわせることで、シャッターを押した瞬間に露光時間の長短が異なる静止画を1枚ずつ記録して、明るさや色合い、ディテールの精彩感が人間の目で見た印象に近い静止画像データを合成して記録します」(高野氏)
画像ファイルはHEVC/H.265形式で記録されるため、記憶媒体は比較的効率よく使えるという。ただ、撮影した動画をテレビの大画面で再生したい場合には、少しコツがいる。まず4K/HDR対応のテレビが必要だ。Xperiaで撮影したファイルをPCなどに取り込んで、ファイルをUSBメモリーなどのストレージに保存する。例えばソニーのブラビアであれば、USB端子にメモリーをつなぐと「Video」アプリが起動するので、あとはテレビのメディアプレーヤー機能を使って再生するという段取りになる。HDR非対応の機器ではファイルが再生できないので注意が必要だ。
XperiaでHDR動画を撮影する場合は、カメラを起動して「HDR録画モード」をオンにする。4K/2K撮影時にHDRのオン/オフが選択できるようになっている。
Xperia XZ PremiumやXZ1をはじめ、HDRディスプレイを搭載したスマホは昨年頃から徐々に増えてきたが、筆者にはまだ、HDR対応が大きなうねりにまで発展していないように感じる。原因は色々と考えられるが、ひとつには配信・ダウンロードともに、HDRコンテンツが不足しているためではないかと思う。これからユーザーが自らのスマホで、日常のシーンを美しいHDR動画で撮れるようになったら、HDRの存在感が増してくるだろう。
今回発表されたXZ2/XZ2 Compactに搭載されているディスプレイは、どちらもネイティブHDRコンテンツの表示が可能。さらに「X-Reality for mobile」の機能として新しく、SDRの映像コンテンツをHDR風に処理して表示できる機能も追加された。AQUOS PhoneとGalaxyシリーズに続くこちらの機能も、HDR対応スマホの普及を後押しするものになることを期待しよう。
カメラまわりのトピックスをもう一つ付け加えておこう。XZ Premiumから搭載された毎秒960fps/720p/0.2秒の動画をキャプチャできる超ハイフレームレート撮影/スーパースローモーション再生の機能が、1080p対応に進化した。こちらはイメージセンサーの性能は変わっていないが、「0.2秒間に再生6秒ぶんの720p画像」をキャプチャーするか、「0.1秒間に再生3秒ぶんの1080p画像」をキャプチャーするかのどちらかが選択できるようになったというものだ。これは「映像作品を手がけるプロフェッショナルの現場から、通常撮影の動画とスーパースロー動画を1080pで揃えたものを作りたいという反響があった」ことから追加したと染谷氏は説明する。
筆者もXZ1でスーパースロー撮影を使うことがあるが、0.2秒という一瞬にも満たないシャッターチャンスをなかなか捉えられず、困ることもある。Xperiaの場合、流し撮りしながら何度もスーパースロー撮影のシャッターを切れるので、蛇口から流れる水など被写体の連続する動きは撮りやすいのだが、ゴルフのクラブがボールに当たるインパクトの瞬間を撮りたい場合はなかなか上手くいかない。サムスンが発表したGalaxy S9のスーパースロー撮影は、被写体の動きを自動で検出してシャッターを切ってくれるので便利そうだ。
■密度が深まったGoogleアシスタントとXperiaの連携
ほかにもMWCでは、Googleアシスタントを呼び出して「4K/HDR動画撮影モードをオン」にしたり、「3Dクリエーター」や「スーパースロー撮影」、本体内蔵のアクチュエーターを使った「ダイナミック・バイブレーション」を音声操作でオン・オフを切り替えられるXperiaの機能が紹介されていた。クラウドを介さず、4つの機能をGoogleアシスタントを使って、デバイス内だけで完結した処理ができる。
MWCではサムスンがGalaxyに搭載するBixby、LGはThinQと、独自のAIプラットフォームを駆使した音声操作機能を拡大することを発表している。Xperiaはグーグルとの作り込みを密にしていくことで、スマホ内の機能を音声操作などでより快適に使えるよう練り上げていく戦略を採るのだろうか。今回展示されている機能は当面、英語対応のみになるそうだが、今後の展開が楽しみだ。
今年のMWCは2019年をめざして商用化が進められている「5G」の話題で持ちきりだが、スマホが5Gに対応した頃には、4K/HDRコンテンツの視聴やハイレゾのストリーミング再生が当たり前のように楽しめるようになっているかもしれない。その時にユーザーを満足させてくれるのは「画と音のいいスマホ」であることは間違いない。今回の新しいXperiaが、多くのファンの期待に応えるスマホであって欲しいと思う。もちろん、日本発売のアナウンスも気になるところ。その時にはまたハンズオンレポートもお伝えしたい。
(山本 敦)