<山本敦のAV進化論 第167回>
ソニー “BRAVIA MASTER” が搭載した「Netflix画質モード」とは何か? ねらいと効果を聞いた
特に自然で正確な色彩とコントラスト、そして動画表示を再現することに重きを置いた。「基準」についてはクリエイターによっても異なるはずだが、Netflixの製作チームがそれぞれの声を丁寧に集め、「Netflix画質モード」という一つのセッティングにまとめあげてきたという。
コバリ・クレチマーリ氏は「何よりも大事なのはNetflixのユーザーにベストコンディションでコンテンツを楽しんでもらうこと」と念を押しているが、そのためにはまずクリエイターの意図した映像が正確に反映されることが必要だったというわけだ。
Netflixが今夏に米国でMASTERシリーズによる新モードのデモンストレーションを実施したところ、『ロスト・イン・スペース』のクリエイターなど、多くのプロフェッショナルからお墨付きを得られたそうだ。
Netflixでは現在、4KやHDR対応のコンテンツを精力的にカタログに追加しているが、MASTERシリーズでNetflix画質モードを楽しめるコンテンツに、何か制限などはあるのだろうか?
コバリ・クレチマーリ氏は「元の解像度やHDR対応の有無、映像のジャンルなど条件を問わず、MASTERシリーズの設定をオンにするだけで、すべてのNetflixで配信されているコンテンツが高品位に楽しめる」と説明する。またNetflixオリジナル作品だけでなく、ライセンス提供されている作品についても同様にベストな画質で楽しめるのが特徴だ。配信地域による固有の “味付け” も行なっていない。
ユーザーがMASTERシリーズでNetflix画質モードを楽しむ方法は、映像設定のメニューに並ぶ「Netflix画質モード」をオンにするだけで、とてもシンプルだ。だが、ブラビアを買って箱から出した時点では、設定がオフになっている。メニューが本体設定のやや奥の階層にあるので、意識せずにMASTERシリーズを使っていると見つけづらい。
Netflixとソニーの双方にとって、ユーザーに気付きを促すアピールが必要だろう。コバリ・クレチマーリ氏もその必要性については十分に認識しており、「これからキャンペーンやイベントなど、マーケティング・PR活動の中でお知らせしていきたい」と語っている。ぜひ全国のソニーストアに展示されるであろうMASTERシリーズのデモソースのひとつに、Netflix画質モードを加えてほしい。
■Netflixルームが渋谷に期間限定オープン
映像と音にこだわるNetflixのコンテンツがベストコンディションで楽しめる、面白い試みを紹介しよう。NetflixとカラオケのJOYSOUNDが期間限定で展開しているコラボレーションプロジェクトの「Netflixルーム」だ。
東京渋谷のJOYSOUND渋谷南口駅前店に2018年7月からオープンしているNetflixルームには、4KテレビとDolby Atmosの3Dサウンドを再現できる環境を完備。Netflixのリッチコンテンツに心ゆくまで浸ることができる。
今回ソニーのMASTERシリーズに搭載されることになったNetflix画質モードが、今後ソニーの他の機種に波及していくことはあるのだろうか? コバリ・クレチマーリ氏の説明を聞く限りでは、今のところその予定はなさそうだ。当面はブラビアのフラグシップであるMASTERシリーズの付加価値を訴求するための機能として位置づけられることになるのだろう。
ただ、NetflixはAndroid TV搭載ブラビア スタンダード機のユーザーに親和性が高そうだ。タイミングを見ながら展開を広げてほしい。もちろん同様の試みが他社のテレビでも実現することも期待したい。
また日本を中心とするアジア各地域では、モバイル端末でNetflixのストリーミング/ダウンロードを楽しむユーザーが多い。テレビだけでなくスマホやタブレットでも、クリエイターが意図した画質でNetflixが楽しめる機能は歓迎されるに違いない。
ソニーがブラビアの画づくりのノウハウを注入した、初の有機EL搭載スマホ「Xperia XZ3」も発売される。Netflixはモバイル環境での体験強化にも力を入れているので、今後の動向からも目が離せない。
(山本 敦)