約40畳のリスニングルームに「AUDIO NOTE」製品を導入
百貨店でレコードが楽しめる − 熊本の老舗百貨店「鶴屋」クラシックサロンを訪ねる
デパートのお客さんが音楽を楽しむためのオーディオルーム。そんな前代未聞のプロジェクトを立ち上げたのが、熊本の老舗百貨店「鶴屋」である。熊本県を代表する、日本最大級の百貨店に「鶴屋クラシックサロン」がオープンしたのは2014年のことで、「季刊analog」の44号でもご紹介した。
約40畳に及ぶ広大なリスニングルームに鎮座するのは、タンノイ「ウェストミンスターロイヤル/GR」。これを駆動するパワーアンプやプリアンプ、フォノアンプ、昇圧トランス等に、このたび新たにオーディオ・ノートのシステムが加わることとなった。
そこで、鶴屋百貨店の代表取締役社長・久我彰登さんにご登場いただき、「鶴屋クラシックサロン」を創設されたいきさつとともにオーディオ・ノートの製品の魅力を語っていただいた。
なお、同インタビューにはオーディオ・ノートの製品を設計するチーフデザイナーの廣川嘉行氏と、「ミュージックサロン」を担当する尾田芳孝さんも参加。両氏のコメントもお届けしている。
――“オーディオサロン"というのはいままでに聞いたことのない素晴らしい発想ですね。
久我 うちはローカルの百貨店ですが7万平米くらいの売り場面積を持っています。ただし全てのスペースが効率的に使えているわけではありません。ですから思い切って、商品を売らないスペースをいくつか作って、お客さんに徹底的に楽しんでいただこうと思っています。オーディオサロンもその一環です。
――オーディオはご自身の趣味でもあるのでしょうか?
久我 はい、まんざら嫌いではないですね(笑)自宅では15畳のスペースで音楽を聴いているのですが、個人規模の広さだと本格的なオーディオルームを作るのは難しいなあと思っていた矢先のことでした。東京のとあるオーディオショップからタンノイの「ウェストミンスターロイヤル」の程度のいい製品が出てきたので手に入れたのです。東京に行った際ダイナミックオーディオにも通っていろいろスピーカーを聴いてみていたのですが、私はクラシックが好きなので、やはりシンプルな大口径1発の同軸スピーカーが良さそうだと思ったのです。このスピーカーの導入が「クラシックサロン」を作る第一歩となりました。
――今回新たにオーディオ・ノートのシステムを導入しました。
久我 2014年に「クラシックサロン」をオープンして数年後のことです。ここを担当している尾田さんがオルトフォンのカートリッジ(SPU CLASSIC GE/II)を使っていたのですが、「昇圧トランスはオーディオ・ノートがいいみたいだから導入しました」という報告を受けました。尾田さんは私よりもオーディオに詳しいし、信頼しているので聴いてみたのです。そうしたら「これは全然違う!」と驚きました。
ここから私もオーディオ・ノートに興味を持ち始めて、すごいアンプを作っているメーカーだということを知って、アンプも試してみたいと思いました。それで、まずパワーアンプの「ONGAKU」を借りてみたんです。そうしたら、「え、何これ?」となりまして(笑)。通常はコントロールアンプの方が音の影響が大きいようなイメージがあるのですが、パワーアンプで、ここまでいいのかとビックリしましたね。導入時には川崎の本社も訪ねて「えらくていねいな仕事をしているなあ」と感心しました。
――本誌で以前ご紹介したのは2014年。このクラシックサロンがオープンした時のことです。従来からのアンプも素晴らしいのですが、オーディオ・ノートの魅力も十分に発揮できていると思います。
久我 オーディオ・ノートは全体的に音がきちんと整理されて余分な変な音が混じっていない感じがしました。予定されていた音が予定されていた音量できちっと出ている。パワーアンプだけを換えて、ドヴォルザークの「新世界」をかけた時のことです。最初のイントロのところは静寂感があって、ステージ感が見えるような展開なのですが、その奥行き感とか静寂感とか広がりが、目をつぶって聴いているとしっかりと感じ取れる。これを聴いただけでもオーディオ・ノートの魅力が実感できましたね。
廣川 それは嬉しい言葉です。特にパワーアンプは音楽が自分から出てきたくて出ているような感じが出せればと思い設計しました。大出力で力づくでドライブするようなアンプとは違いますから。
尾田 オーディオ・ノートのアンプはさっき社長が言ったように、音楽をきちんと整理してくれるんですよ。変なところでの強調感もないし、くせがない。クラシックを聴くときはあまり低音が出しゃばったり、高音が出しゃばったりという音はあまり気持ちのいいものではありませんから……。
――クラシックサロンがオープンして5年経つと思いますが、いろんなお客さんが来たのではないですか?この会場でイベントもいろいろとやっていますね。
久我 むしろお客さまが企画を持ってきてくれます。蓄音器のイベントや、熊本大学の講師の方が「おもしろ音楽講座」をやったり、うちの社員の企画では妊婦さんを集めて胎教もやったりしていますね。ですから「クラシックサロン」は設立当初からは想像もできなかったような使い方をまわりの方々が提案してくれるので、楽しいです。
尾田 部屋の前方にはディスプレイもあるので、映画やオペラを観ていただくこともあります。
廣川 我々オーディオ・ノートにとってもすごくありがたい場所です。コンサートを聴きに出かけるように、音楽を聴きに「クラシックサロン」に出かけて来ていただければいいですね。
久我 話は変わりますが、いまから2年前、鶴屋の創業65周年の時のことです。1年前に起きた熊本地震の復興としてイギリスのフィルハーモニアを熊本県立劇場に呼んで、チャリティーコンサートを企画しました。それから、熊本県立劇場の館長になった姜尚中(カン・サンジュン)さんは熊本のご出身で、私の高校の先輩です。そういう関係もあって、最近ではクリスチャン・ツィメルマンを招いてのコンサートも企画しました。また、熊本の山鹿中学校の子供たちが全国合唱コンクールで優勝したので、その山鹿の子供たちとウィーン少年合唱団の競演も実現させました。
私たちは目の前の商売だけでなく、お客様に常に寄り添っている企業でありたいわけです。ですから「クラシックサロン」もそのひとつの役割を担っていると思います。全てのお客様に、多くの部分でなくてもいいので、鶴屋を気にかけていただく……そういうような存在であり続けることが、ローカルの百貨店がかわいがっていただけるひとつのありようだと思います。そういう意味では、鶴屋が目指すお客様へのサービスの質への追求と、オーディオ・ノートさんが達成されている音楽再生の高度な技術は共通点があるのかもしれませんね。
――「鶴屋クラシックサロン」がオーディオを楽しむ場を提供してくれる新たな実例として、これからも期待しています。ありがとうございました。
【問い合わせ先】
(株)鶴屋百貨店 鶴屋クラシックサロン
TEL:096-327-3707(直通)※毎週火曜日休業
〒860-8586 熊本市中央区手取本町6番1号
(Photo by 草野清一郎)
※本記事は「季刊analog」Vol.64 所収記事を転載したものです。本誌の詳細および購入はこちらから。
約40畳に及ぶ広大なリスニングルームに鎮座するのは、タンノイ「ウェストミンスターロイヤル/GR」。これを駆動するパワーアンプやプリアンプ、フォノアンプ、昇圧トランス等に、このたび新たにオーディオ・ノートのシステムが加わることとなった。
そこで、鶴屋百貨店の代表取締役社長・久我彰登さんにご登場いただき、「鶴屋クラシックサロン」を創設されたいきさつとともにオーディオ・ノートの製品の魅力を語っていただいた。
なお、同インタビューにはオーディオ・ノートの製品を設計するチーフデザイナーの廣川嘉行氏と、「ミュージックサロン」を担当する尾田芳孝さんも参加。両氏のコメントもお届けしている。
――“オーディオサロン"というのはいままでに聞いたことのない素晴らしい発想ですね。
久我 うちはローカルの百貨店ですが7万平米くらいの売り場面積を持っています。ただし全てのスペースが効率的に使えているわけではありません。ですから思い切って、商品を売らないスペースをいくつか作って、お客さんに徹底的に楽しんでいただこうと思っています。オーディオサロンもその一環です。
――オーディオはご自身の趣味でもあるのでしょうか?
久我 はい、まんざら嫌いではないですね(笑)自宅では15畳のスペースで音楽を聴いているのですが、個人規模の広さだと本格的なオーディオルームを作るのは難しいなあと思っていた矢先のことでした。東京のとあるオーディオショップからタンノイの「ウェストミンスターロイヤル」の程度のいい製品が出てきたので手に入れたのです。東京に行った際ダイナミックオーディオにも通っていろいろスピーカーを聴いてみていたのですが、私はクラシックが好きなので、やはりシンプルな大口径1発の同軸スピーカーが良さそうだと思ったのです。このスピーカーの導入が「クラシックサロン」を作る第一歩となりました。
――今回新たにオーディオ・ノートのシステムを導入しました。
久我 2014年に「クラシックサロン」をオープンして数年後のことです。ここを担当している尾田さんがオルトフォンのカートリッジ(SPU CLASSIC GE/II)を使っていたのですが、「昇圧トランスはオーディオ・ノートがいいみたいだから導入しました」という報告を受けました。尾田さんは私よりもオーディオに詳しいし、信頼しているので聴いてみたのです。そうしたら「これは全然違う!」と驚きました。
ここから私もオーディオ・ノートに興味を持ち始めて、すごいアンプを作っているメーカーだということを知って、アンプも試してみたいと思いました。それで、まずパワーアンプの「ONGAKU」を借りてみたんです。そうしたら、「え、何これ?」となりまして(笑)。通常はコントロールアンプの方が音の影響が大きいようなイメージがあるのですが、パワーアンプで、ここまでいいのかとビックリしましたね。導入時には川崎の本社も訪ねて「えらくていねいな仕事をしているなあ」と感心しました。
――本誌で以前ご紹介したのは2014年。このクラシックサロンがオープンした時のことです。従来からのアンプも素晴らしいのですが、オーディオ・ノートの魅力も十分に発揮できていると思います。
久我 オーディオ・ノートは全体的に音がきちんと整理されて余分な変な音が混じっていない感じがしました。予定されていた音が予定されていた音量できちっと出ている。パワーアンプだけを換えて、ドヴォルザークの「新世界」をかけた時のことです。最初のイントロのところは静寂感があって、ステージ感が見えるような展開なのですが、その奥行き感とか静寂感とか広がりが、目をつぶって聴いているとしっかりと感じ取れる。これを聴いただけでもオーディオ・ノートの魅力が実感できましたね。
廣川 それは嬉しい言葉です。特にパワーアンプは音楽が自分から出てきたくて出ているような感じが出せればと思い設計しました。大出力で力づくでドライブするようなアンプとは違いますから。
尾田 オーディオ・ノートのアンプはさっき社長が言ったように、音楽をきちんと整理してくれるんですよ。変なところでの強調感もないし、くせがない。クラシックを聴くときはあまり低音が出しゃばったり、高音が出しゃばったりという音はあまり気持ちのいいものではありませんから……。
――クラシックサロンがオープンして5年経つと思いますが、いろんなお客さんが来たのではないですか?この会場でイベントもいろいろとやっていますね。
久我 むしろお客さまが企画を持ってきてくれます。蓄音器のイベントや、熊本大学の講師の方が「おもしろ音楽講座」をやったり、うちの社員の企画では妊婦さんを集めて胎教もやったりしていますね。ですから「クラシックサロン」は設立当初からは想像もできなかったような使い方をまわりの方々が提案してくれるので、楽しいです。
尾田 部屋の前方にはディスプレイもあるので、映画やオペラを観ていただくこともあります。
廣川 我々オーディオ・ノートにとってもすごくありがたい場所です。コンサートを聴きに出かけるように、音楽を聴きに「クラシックサロン」に出かけて来ていただければいいですね。
久我 話は変わりますが、いまから2年前、鶴屋の創業65周年の時のことです。1年前に起きた熊本地震の復興としてイギリスのフィルハーモニアを熊本県立劇場に呼んで、チャリティーコンサートを企画しました。それから、熊本県立劇場の館長になった姜尚中(カン・サンジュン)さんは熊本のご出身で、私の高校の先輩です。そういう関係もあって、最近ではクリスチャン・ツィメルマンを招いてのコンサートも企画しました。また、熊本の山鹿中学校の子供たちが全国合唱コンクールで優勝したので、その山鹿の子供たちとウィーン少年合唱団の競演も実現させました。
私たちは目の前の商売だけでなく、お客様に常に寄り添っている企業でありたいわけです。ですから「クラシックサロン」もそのひとつの役割を担っていると思います。全てのお客様に、多くの部分でなくてもいいので、鶴屋を気にかけていただく……そういうような存在であり続けることが、ローカルの百貨店がかわいがっていただけるひとつのありようだと思います。そういう意味では、鶴屋が目指すお客様へのサービスの質への追求と、オーディオ・ノートさんが達成されている音楽再生の高度な技術は共通点があるのかもしれませんね。
――「鶴屋クラシックサロン」がオーディオを楽しむ場を提供してくれる新たな実例として、これからも期待しています。ありがとうございました。
【問い合わせ先】
(株)鶴屋百貨店 鶴屋クラシックサロン
TEL:096-327-3707(直通)※毎週火曜日休業
〒860-8586 熊本市中央区手取本町6番1号
(Photo by 草野清一郎)
※本記事は「季刊analog」Vol.64 所収記事を転載したものです。本誌の詳細および購入はこちらから。