NTTぷらら 永田勝美社長インタビュー
“スマホ・ファースト”時代の新たな価値を創造、NTTぷらら「ひかりTV」が貫く攻めの姿勢
■配信、制作ほか多彩な視点から期待膨らむ5G
―― スマホ・ファーストの時代へ突入し、スマホキャリアとの連携が大きな鍵になると見られていますが、御社はNTTグループに属する強みを持ち、7月にはNTTドコモグループ傘下となりました。
永田 これまでもNTTグループの中のいくつかのネットワークインフラ会社の中でさまざまなアプリケーションサービスを手掛けてきて、アプリケーションサービスを提供する側からの要望や相談をしてきました。その際によく聞かれたのは、「マーケットでどれくらいの要望や市場があるのか」という点です。
インフラサービスを提供する立場からも、ブロードバンドを推進していく中でどのようなニーズがあり、どういう使われ方をしているのか、何がキラーコンテンツになるのかを一緒になって考え、「こんなサービスはどうだろうか」といった議論をこれまでも行って来ました。
―― 5Gのサービスインがすぐそこに控えています。
永田 5Gは「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」のメリットを備えています。配信の視点からは、5Gを活用して現実の世界にオーバーレイして見せるAR、XRのコンテンツがビジネス用途を含めて大きく広がっていくと期待しています。NTTドコモでは、5G時代に向けたMR(複合現実)ヘッドセットを開発する「Magic Leap」(マジックリープ)社と資本・業務提携しました。われわれにとっても非常に魅力的なデバイスで、一緒にコンテンツ制作を行っているパートナーの皆さんからも高い関心が寄せられています。今後のコンテンツ制作が大変楽しみですね。
5Gは制作側からもいろいろな活用が期待されます。例えば、ゴルフなどのスポーツ中継の際に意外と大変なのが、カメラを持ち込んでのケーブリングです。すべて同軸で這わせるためにコストも膨らみますが、これが5Gになるとケーブルレス化され、ケーブリングが不要となります。これまで撮れなかった場所での撮影についても可能になるのと同時に、大幅な効率化が実現できるのです。
また、中継にはスイッチャーの高度なテクニックが求められていますが、5Gでは遅延がなくなることから、スキルの高い編集やスイッチャーを東京に一極配置し、クラウドを用いて、昼は東京の仕事、夜は大阪の仕事をこなすといった仕組みも可能となります。撮影・中継の品質が高いレベルで均質化され、コストもぐっと抑えられます。制作関連の方と5Gの活用法についても議論しているところです。
■課題解消のアイデアを出し合い4K本格普及へ
―― 昨年末に新4K8K衛星放送がスタートしました。低空飛行が続くテレビ市場の起爆剤としても期待が集まりますが、足踏み状態が続いています。この状況についてはどのようにご覧になられますか。
永田 4Kは臨場感が高く魅力あるサービスと捉えており、業界でもいち早く、2014年10月には4K映像によるVOD(ビデオオンデマンド)サービスを国内で初めて開始しています。新4K8K衛星放送がスタートしたことで、コンテンツにも広がりが出てきていることは間違いありません。さらに、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」「東京2020オリンピック・パラリンピック」など、今年から来年にかけて開催されるスポーツのビッグイベントが4K普及の追い風になってくれることを期待しています。
―― 新たに導入された左旋の放送を見る際には、対応したアンテナへの交換や宅内設備の改修が必要になるなどの課題も見過ごせません。
永田 視聴するためのハードルの高さを解消していくことは大事なテーマのひとつで、もっと簡単に視聴することを可能にするサービス環境をすでに発表されているところもあります。4Kを業界全体で底上げしていくためにも、われわれも準備を進めているところです。
4K放送を視聴するために、どのテレビを購入すればいいのか、どこに申し込まなければいけないのかなど、お客様にとってのハードルは決して低くなく、大きな負担となっているのが実情です。取り巻く環境はますます複雑になるばかりですから、4Kテレビの視聴環境を皆さんがもっと簡単に手に入れるための仕掛けも必要になっているのではないでしょうか。われわれもさまざまな環境を、よりリーズナブルにサービスとしてご利用できるような仕掛けを作っていきたいと考えています。
■攻めの姿勢が社員のモチベーションになる
―― これからの新しい時代に向けて何が必要になるのか。映像ビジネスのさらなる拡大へ向けて、今後の抱負、意気込みをお聞かせください。
永田 いろいろなことをやっていきたいですね。そのためには、世の中の競争環境、ユーザーニーズ、視聴スタイルは大きく変わっていますから、そうした変化にフィットしたサービスを提供していくために、いま一度リセットして再構築していく必要性も感じています。
お客様は単に映像を視聴して楽しむだけではなく、そこから何かを吸収したり、興味を持った商品を購入したり、実際に自ら体験したりすることを望まれています。AI、5Gなどの新しい技術を活用し、また、パーソナル化を推進し、映像サービスだけを単独で提供するのではなく、周辺サービスを巻き込み、そうした要望を叶えることができる仕掛けがないと、お客様の満足度を高めることは今後できなくなると考えています。
もう1つ別の側面からは、今、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が強大になっています。資金力もあり、とりわけネットにはめっぽう強いのが特徴です。しかし、裏を返せば、グローバルを相手にしようとすれば、どうしてもネットオンリーにならざるを得ない事情があり、そんな彼らと対抗する軸のひとつになるのがオフラインです。
例えば、音楽ライブやスポーツ観戦でも、オンラインとオフラインをうまく融合した仕掛けづくりが重要になってくると考えています。オフラインをトリガーにしていくと、彼らとの競争にも何かしら勝機が見えてくるはずです。
NTTデータのようにBtoBのアプリケーションビジネスを進めていると、インフラに縛られることなく、グローバルも含め業績を伸ばすことができます。われわれNTTぷららも、コンシューマー向けビジネス領域で、アプリケーションレイヤーサービスを担うということは、グローバルにも打って出られる、伸びしろのある領域にあります。そこでしっかりと成果をあげていくことが、NTTグループの我々に対する期待であり、ドコモのグループ化とした狙いのひとつであると理解しています。
―― 4Kにおいてもそうでしたが、「NTTぷらら(ひかりTV)がまた何か新しいことをやってくるぞ」というイメージを皆さんが持たれています。前任の板東社長もその期待に応える攻めの姿勢でした。
永田 守りの態勢に入ってしまったら、競合他社が伸長する中で埋もれてしまい、あっと言う間に存在感を失ってしまいます。攻めの姿勢はこれまで以上に積極的に磨いていくつもりですし、それが社員のモチベーションにもなります。そうした考えや行動が社員全員に根付いていく会社にしていきたいと思います。
アライアンスを組むベンチャー企業の皆さんからは、もの凄い熱量や勢いを肌で感じることができます。そんな彼らに、NTTぷららの価値や存在を認め、アライアンスを組んでいただいている。われわれも元々はベンチャー企業でしたから、立ち止まってなどいられません。彼らに負けない熱量で前に進んでいきます。NTTぷらら「ひかりTV」にどうぞご期待ください。