【特別企画】「TE-BD21f-pnk」大ヒットの裏側を聞いた
ピエール中野×AVIOTコラボ完全ワイヤレス開発秘話。「音楽をより楽しむため」目指した“音”の全貌
■“ワイヤレスで音の良いものは存在しない”、その印象を覆したAVIOT「TE-D01d」
── でもそれほどマニアックにイヤホンにハマっていると、ワイヤレスイヤホンへの印象って最初はあまりよくなかったのではありませんか?
中野氏 そうでした。有線についてはそのあと、Just earのテーラーメイドイヤホンを作ったり、お気に入りのイヤホンを何本か使い分けるようになって、自分のイヤホンリスニングのスタイルはここまで辿り着いたぞ!という達成感が割とあったんです。それで自分がそういうイヤホン好きであることもだいぶ知られるようになって、Twitterでも「何万円くらいでオススメのイヤホンありませんか?」とか聞かれるようになっていました。
それから少しすると、iPhoneからイヤホンジャックがなくなったじゃないですか。その辺りで今度は「ワイヤレスイヤホンでおすすめありませんか?」ってすごく聞かれるようになったんですよ。それもあって自分でも聴いてみないと、と思って買っていくつか試してみたんですけど…、もうぜんぜんダメで。
── ダメというのは使い勝手とかじゃなく、音の問題ですか?
中野氏 そうです。僕は音がダメだったらその時点でダメって判断するんで。使い勝手とかは、音が良い上でそこからの話です。だから当時はそういう質問にも、「ワイヤレスで音の良いものは存在しない」って答えてました。自分で使うようになってからは完全ワイヤレスの使いやすさの面にも感激しましたけど(笑)。
── それがいまや、ご自身の名前を冠したコラボイヤホンを完全ワイヤレスで出すに至りました。きっかけは何でしょう?
中野氏 AVIOTの「TE-D01d」を試す機会があったんです。ワイヤレスだから正直期待もしてなくて、最初は軽い気持ちで音を聴いてみたんですけど、「あれ!?今までのワイヤレスと違う!」ってなって。驚いて今度はしっかり聴き込んでみたんですけど、やっぱり良い音だった。
しかもその音質で、価格も1万3,000円くらい(現在は9,000円前後)で、デザインも良かった。ガイドボイスも日本語でわかりやすくて、操作性も問題ない、接続も途切れないしケースはモバイルバッテリーにもなるって、もう非の打ちどころないんだけどこれ!?ってなりましたね。
そこからしばらく使い込んでみて、普段使いしていても違和感が出てこない。それで確信を持って「おすすめできるBluetoothイヤホンがようやく出ました!」ってツイートしました。
── 根本的でいて最大のハードルであった “音質面” をクリアする製品にやっと出会えたんですね。しかもその製品の全体像を見たら、使いやすさも何もかも見事だったと。でもまずは本当に「音」なんですね。
中野氏 それは有線でも無線でも、イヤホンに限らずヘッドホンやスピーカー、ドラムの機材でも、自分に合わない音、好みじゃない音のものっていうのは自分の生活の中から除外しちゃいますね。
── ちなみに近年はアクリルシェルの透明なドラムセットもお使いになっていますよね。あれは例外的にビジュアル重視だったりしませんか?
中野氏 それが実は、アクリルシェルのドラムセットも時代とともに製法が変わって、昔と今じゃまったく音が違うんですよ。昔は鳴りにくいって言われてましたけど、今のアクリルシェルは何なら普通の木のドラムよりも鳴りやすいくらいで。
── なるほど。その昔のアクリルシェルと今のアクリルシェルのイメージって、もしかして、以前のワイヤレスとTE-D01dのイメージとも重なりませんか?
中野氏 多分そうですね。TE-D01dもそれまでのワイヤレスの印象、壁を一気に超えてきた感じがありました。チップの世代とかで良くなってる部分もあるんでしょうけど、それよりもチューニングかな。Bluetoothであるからには避けられないロス、物足りなくなる要素があると思うんですけど、TE-D01dはそれを感じさせないどころか、むしろ強みに変えているようなチューニングがされていて。「これ、すげえ分かってる人が音を作ってるな!めちゃめちゃいい仕事してるな!」って驚かされましたよ。
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