初のデジタル・リマスタリングを経て登場
『新世紀GPXサイバーフォーミュラSOUND TOURS』制作秘話―現代の水準だからこそ聴ける「バンドサウンド」
■「DATマスターか? CDマスターか?」の判断から始まった
今回のデジタル・リマスターにあたって、いわゆるマスター音源となったのはDATだったそうだ。このマスターからいかにしていまの水準で聴いても遜色のない音源を作りだすのか。そこには多くの試行錯誤があったという。
中澤「サイバーフォーミュラがリアルタイムだった1990年代前半であれば、DATマスターというのは決して不思議ではない話なんです。でも、問題はそのテープの状態が分からない。だから一度このDATをオーブン焼きしてWAV化した上で、マスタリングを担当する小林さんにお渡ししました。もちろんDATのほうが遥かに良いのは予測できるんですけど、マスターに関しては実際に流通していたCDをマスターにするのか、DATマスターにするのかということを、まず検証してもらって判断いただいたんです」
「そんなところからのスタートだったんですけど、実はこのディスクの1枚め、2枚めにあたるテレビシリーズの時代の音源には想像以上に苦戦させられましたね」
音楽制作がデジタル化されて間もなかった1990年。当然のことながらいまの水準で聴くと当時の技術の限界を感じさせるものだったり、さらには少ない時間で作業を進めたことが予測できるようなラフな仕上げを目の当たりにすることも多かったという。
小林「確かに大変な作業とはなりましたが、マスタリングの進め方そのものはいつも通りコンプレッサーを選ぶところからスタートしました。流れとしては先端にリミッターを入れてコンプが入って、そしてEQ。この3つがベースであることは変わっていません。マスタリングそのものは44.1kHzで動かしています」
中澤「とにかくマスターそのもののクオリティが、曲によって違ったんです。それを高い水準に持っていくことが今回の大きなテーマでもありました」