【PR】アコースティックラボ 鈴木氏に聞く
防音のプロに聞く「家族に気兼ねなくオーディオを楽しめる部屋」。最初のカギは「ドア」にあり!?
オーディオファンの悩みのひとつが、音漏れが気になって大音量を出せないこと。そこには、家の外への配慮と同時に、家の中、つまり家族への配慮という問題がある。今回、この「家族に対する防音対策」について、オーディオファン向け物件の防音工事を多数手掛けるアコースティックラボの鈴木代表に話を聞いた。
―― 新型コロナウィルス感染拡大予防のための非常事態宣言が延長され、5月も外出自粛が要請される期間となりました。御社が開催している試聴会「アコースティックオーディオフォーラム」も2月開催の第70回からストップしています。
2月のテーマは「家人に気兼ねしなければならない深夜オーディオの悩ましさに困っている方の防音対策」でした。新型コロナウィルス感染拡大予防という社会的な事象に対してある意味でタイムリーな企画だったとも言えますが、状況のほうが早く進展し、残念ながらギリギリの判断で延期となりました。
当社にオーディオルーム工事を依頼する方々の半分強は「他人に気兼ねしない音環境」、すなわち「防音強化」を動機にされています。その防音も「ご近所への防音」が一番で、ご家族に対してはその次という例が多い状況です。
しかし、深夜のオーディオの場合は、家の外に漏れる音はそれなりに音量を落として問題ないレベルにしても、就寝しようとしているご家族には意外と結構聞こえるんですね。日中から夜早めにかけての音を許容できても、夜半にかけてもその音が毎日続いたら…。さすがに後ろから鉄砲が飛んできます(笑)。
―― 何か簡単で良い方法はないのですか。
まず最初に「ドア」への対策が挙げられます。防音の最大の敵は「隙間」です。オーディオルームから音が漏れる経路としては、住居外へは「窓」が大きな要因ですが、同一住居内へは「ドア」なのです。
現代の住宅は戸建て、マンションともに、室内の換気のためにドア下が1〜2cm空いているのが標準になっています。シックハウス症候群が問題になった当時、建築基準法で換気についての基準も定められ、それをクリアする方法のひとつとして広がったんです。
一方で、これをオーディオ的な観点から見ると、ドア下に隙間があるのですから他の部屋に音が漏れやすいのは当然ですよね。ですので、ここを塞ぐだけでも防音度合いは5〜10dBほど高まり、特に中高域の防音性能がアップします。
―― ドア下の隙間は住人の健康のためのものだったのですね。ということは、防音のためにそこを塞いでしまうと健康を害するのでは…?
アレルギー物質等に敏感な方もいらっしゃるので「絶対大丈夫」と全員に断言できるものではありませんが、実用的には新築時から1〜2年くらいで建材からの汚染物質発生は1/10以下とかなり小さくなると言われています。
―― なるほど。ドア下の隙間を塞ぐ手軽な方法にはどんなものがあるのでしょうか。
ダンボールなどを両面テープでドアに固定して軽く床にこする程度にすればよいでしょう。また、「ドアボトム」「ボトムフラップ」「ピンチブロック」「ハイロジック」などといった名称で、ドア下の隙間を塞ぐアイテムも市販されていますので、これを利用するのもいいと思います。
―― それくらいならDIYでもなんとかなりそうですね。では、防音ドアに取り替える、というのはどうでしょうか。
防音の原則は隙間をなくすことと、重い建材で面をつくることです。防音ドアはドアの四周すべてを気密パッキンでしっかりと固定できますし、重さも一般的なドアよりかなり重いので防音効果はかなり高まりますね。
市販されている住宅用の木製ドアでは25dB〜30dBほど防音します。少々高価になりますが音楽スタジオ並の40dB防音という性能のものもありますよ。
―― 防音ドアが市販されているということは、一般ユーザーが購入してDIYで取り付けられるのでしょうか?
う〜ん、一般の方がDIYでというのは少し難しいでしょうね。防音ドアは枠とドアのセットで防音効果を出そうというものですので、まず既存のドアを取り外す段階で、ドアだけでなく枠の部分から撤去しなければなりません。また、場合によってはドア枠周辺の壁ボードまで含めた工事になる可能性もありますし、そうなるとクロス(壁紙)の張替え工事も発生しますから。
―― かなりハードルが高そうですね…。
そうですね。お知り合いの大工さんに依頼されたほうが無難ではないかと思います。もちろん当社にご依頼いただいても承りますよ。
―― ちなみに防音ドア化の工事はトータルどれくらいの予算をみておけばよいのですか。
いろいろな要件で変わってくるので一概には言えませんが、前述の木製防音ドアの場合ですと、製品がだいたい20〜30万円で、工事費が別途10〜20万円、壁紙の仕上げや補修工事で5〜10万円ほどでしょうか。高性能な防音ドアや二重防音ドアにすれば製品単価や工事費もそれだけ高価になります。ただ、ドアの防音性能だけを高めるのはオススメしません。
―― と、言いますと…?
音漏れの経路はドアだけではなく、壁や床からも音が外部に伝わるからです。安アパートで隣の住人の生活音が聞こえてしまうなどといったが代表例ですね。そこまでのレベルでないにしても、現代の一般的な建築において壁や床の防音性能は30〜40dBほどですから、ドアの防音性能だけをいくら高めても壁や床から音漏れしてしまうわけです。
―― なるほど。
ピンポイントで何か防音対策をするのならドアが最も効果的で、かつ、壁や床の防音性能とのバランスを考えると木製防音ドア程度がオススメですよ、ということですね。これだけでも誰でも認めるそれなりの効果が見込めます。
―― まずは最も防音のウィークポイントになっているドアに対策を施した上で家族と折り合いをつける、と。
そうですね。先程も申し上げたとおりドアへの対策だけで防音が完璧になるわけでもありませんし、音の感じ方も人それぞれなので、自分では音漏れが減ったと思っていてもご家族にとっては相変わらずうるさく感じられるかもしれません。例えば「就寝30分前には音量を10dB下げる」などのようにご家族と“安全保障条約”を結んでいただければと…。
―― お話をうかがっていると、どうせドアで工事を入れるのなら、いっそのこと壁や床も含めて全体的にやりたくなってきますね(笑)。
可能であればそれがオススメですね。防音の世界は一点豪華主義というよりもトータルバランスが重要ですから。
工事を入れるレベルになると、この外出自粛期間だけですべてを完了できる話ではなくなってきますが、新型コロナウィルスがいきなり無くなるわけではありません。今後もしばらくは巣ごもり傾向が続くことでしょう。こうした状況ですので、じっくりと防音について考えていただくのもよいのではないでしょうか。
(次回に続く)
(協力:アコースティックラボ)
―― 新型コロナウィルス感染拡大予防のための非常事態宣言が延長され、5月も外出自粛が要請される期間となりました。御社が開催している試聴会「アコースティックオーディオフォーラム」も2月開催の第70回からストップしています。
2月のテーマは「家人に気兼ねしなければならない深夜オーディオの悩ましさに困っている方の防音対策」でした。新型コロナウィルス感染拡大予防という社会的な事象に対してある意味でタイムリーな企画だったとも言えますが、状況のほうが早く進展し、残念ながらギリギリの判断で延期となりました。
当社にオーディオルーム工事を依頼する方々の半分強は「他人に気兼ねしない音環境」、すなわち「防音強化」を動機にされています。その防音も「ご近所への防音」が一番で、ご家族に対してはその次という例が多い状況です。
しかし、深夜のオーディオの場合は、家の外に漏れる音はそれなりに音量を落として問題ないレベルにしても、就寝しようとしているご家族には意外と結構聞こえるんですね。日中から夜早めにかけての音を許容できても、夜半にかけてもその音が毎日続いたら…。さすがに後ろから鉄砲が飛んできます(笑)。
―― 何か簡単で良い方法はないのですか。
まず最初に「ドア」への対策が挙げられます。防音の最大の敵は「隙間」です。オーディオルームから音が漏れる経路としては、住居外へは「窓」が大きな要因ですが、同一住居内へは「ドア」なのです。
現代の住宅は戸建て、マンションともに、室内の換気のためにドア下が1〜2cm空いているのが標準になっています。シックハウス症候群が問題になった当時、建築基準法で換気についての基準も定められ、それをクリアする方法のひとつとして広がったんです。
一方で、これをオーディオ的な観点から見ると、ドア下に隙間があるのですから他の部屋に音が漏れやすいのは当然ですよね。ですので、ここを塞ぐだけでも防音度合いは5〜10dBほど高まり、特に中高域の防音性能がアップします。
―― ドア下の隙間は住人の健康のためのものだったのですね。ということは、防音のためにそこを塞いでしまうと健康を害するのでは…?
アレルギー物質等に敏感な方もいらっしゃるので「絶対大丈夫」と全員に断言できるものではありませんが、実用的には新築時から1〜2年くらいで建材からの汚染物質発生は1/10以下とかなり小さくなると言われています。
―― なるほど。ドア下の隙間を塞ぐ手軽な方法にはどんなものがあるのでしょうか。
ダンボールなどを両面テープでドアに固定して軽く床にこする程度にすればよいでしょう。また、「ドアボトム」「ボトムフラップ」「ピンチブロック」「ハイロジック」などといった名称で、ドア下の隙間を塞ぐアイテムも市販されていますので、これを利用するのもいいと思います。
―― それくらいならDIYでもなんとかなりそうですね。では、防音ドアに取り替える、というのはどうでしょうか。
防音の原則は隙間をなくすことと、重い建材で面をつくることです。防音ドアはドアの四周すべてを気密パッキンでしっかりと固定できますし、重さも一般的なドアよりかなり重いので防音効果はかなり高まりますね。
市販されている住宅用の木製ドアでは25dB〜30dBほど防音します。少々高価になりますが音楽スタジオ並の40dB防音という性能のものもありますよ。
―― 防音ドアが市販されているということは、一般ユーザーが購入してDIYで取り付けられるのでしょうか?
う〜ん、一般の方がDIYでというのは少し難しいでしょうね。防音ドアは枠とドアのセットで防音効果を出そうというものですので、まず既存のドアを取り外す段階で、ドアだけでなく枠の部分から撤去しなければなりません。また、場合によってはドア枠周辺の壁ボードまで含めた工事になる可能性もありますし、そうなるとクロス(壁紙)の張替え工事も発生しますから。
―― かなりハードルが高そうですね…。
そうですね。お知り合いの大工さんに依頼されたほうが無難ではないかと思います。もちろん当社にご依頼いただいても承りますよ。
―― ちなみに防音ドア化の工事はトータルどれくらいの予算をみておけばよいのですか。
いろいろな要件で変わってくるので一概には言えませんが、前述の木製防音ドアの場合ですと、製品がだいたい20〜30万円で、工事費が別途10〜20万円、壁紙の仕上げや補修工事で5〜10万円ほどでしょうか。高性能な防音ドアや二重防音ドアにすれば製品単価や工事費もそれだけ高価になります。ただ、ドアの防音性能だけを高めるのはオススメしません。
―― と、言いますと…?
音漏れの経路はドアだけではなく、壁や床からも音が外部に伝わるからです。安アパートで隣の住人の生活音が聞こえてしまうなどといったが代表例ですね。そこまでのレベルでないにしても、現代の一般的な建築において壁や床の防音性能は30〜40dBほどですから、ドアの防音性能だけをいくら高めても壁や床から音漏れしてしまうわけです。
―― なるほど。
ピンポイントで何か防音対策をするのならドアが最も効果的で、かつ、壁や床の防音性能とのバランスを考えると木製防音ドア程度がオススメですよ、ということですね。これだけでも誰でも認めるそれなりの効果が見込めます。
―― まずは最も防音のウィークポイントになっているドアに対策を施した上で家族と折り合いをつける、と。
そうですね。先程も申し上げたとおりドアへの対策だけで防音が完璧になるわけでもありませんし、音の感じ方も人それぞれなので、自分では音漏れが減ったと思っていてもご家族にとっては相変わらずうるさく感じられるかもしれません。例えば「就寝30分前には音量を10dB下げる」などのようにご家族と“安全保障条約”を結んでいただければと…。
―― お話をうかがっていると、どうせドアで工事を入れるのなら、いっそのこと壁や床も含めて全体的にやりたくなってきますね(笑)。
可能であればそれがオススメですね。防音の世界は一点豪華主義というよりもトータルバランスが重要ですから。
工事を入れるレベルになると、この外出自粛期間だけですべてを完了できる話ではなくなってきますが、新型コロナウィルスがいきなり無くなるわけではありません。今後もしばらくは巣ごもり傾向が続くことでしょう。こうした状況ですので、じっくりと防音について考えていただくのもよいのではないでしょうか。
(次回に続く)
(協力:アコースティックラボ)