【特別企画】ANCか、いい音か。スタッフが語る最新トレンド
Noble Audio「FALCON」シリーズ人気の秘訣と失敗しないワイヤレスイヤホン購入法とは?
■e☆イヤホン秋葉原店
――本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。まず初めに、お名前、お役職についてお伺いできますでしょうか。
東谷さん:e☆イヤホン秋葉原店7階フロア長の東谷と申します。
――完全ワイヤレスイヤホンに対する、e☆イヤホンさんのお取組みについてご紹介いただけますでしょうか。
東谷さん:e☆イヤホン全体の売り上げにおいて、完全ワイヤレスイヤホンの比率は年々高まっています。今では7階の売り場面積の約半分を完全ワイヤレスイヤホンが占めるようになりました。
店頭の展示は、あまり露骨に特定の製品を推薦するということがないように配慮しつつ、話題の製品や人気の製品は自然とお客様に見つけていただきやすいように展開しています。
展示の方法については、スタッフみんなにアイデアを出してもらって検討します。それから「とにかく一度やってみよう」という姿勢で取り組み、課題があれば進めながら修正していきます。
接客に関しては、有線イヤホンをお求めのお客様は「音楽を聴く」というメインの目的があるのに対して、完全ワイヤレスイヤホンの場合は、お客様が「こういう時に使いたい」というシーンが先にあって、そのシーンに合わせたものを選ぶというところに違いがあります。そのため、お客様にはまず「どういったシーンでイヤホンを使いますか?」とお伺いすることにしています。そこから、どういう機能が必要なのか、お客様に本当に必要な機能は何なのかを導き出すのが重要だと思います。
――e☆イヤホンさんからみた完全ワイヤレスイヤホンの最新のトレンド、売れ筋製品の条件について、お伺いできますでしょうか。
東谷さん:ワイヤレスイヤホンで重要なのは、まず多機能であること、そしてANC(ノイズキャンセリング)機能の有無が重要視されていると思います。ジャンルとして一番売れているのはANC付きの製品です。また、最近は骨伝導イヤホンが人気になりつつありますが、外の音を一切聞きたくないという方と、逆に外の音を聞きたいという方とで、需要がはっきり分かれている印象があります。
あとは「音がとにかくいいものが欲しい」という需要が根強いです。そのため、ANCか、外音取り込みか、音質か、この3つの要素のどこかに個性がある製品が人気です。あとは防水性能の有無や防水のレベルを気にされるお客様がとても多いですね。
――e☆イヤホンさんは実店舗とネット通販と両方の販路をお持ちですが、完全ワイヤレスイヤホンはネット通販でも非常に売れ行きが良いのが特徴です。ネット通販専業の販路との差別化要素について、e☆イヤホンさんの強みについてお伺いできますでしょうか。
東谷さん:ネット通販が強い製品、実店舗が強い製品がそれぞれあります。多機能なものはネット通販、音が良いものは実店舗と分かれる傾向があります。
音についてはレビューをスタッフに書いてもらうことで、お客様にご注目いただけるようになる印象です。販路毎に製品の特性を見つつ、どちらでも売れるように補完するアプローチができるところが当店の強みだと思います。
実店舗の強みは、音はもちろんですが装着感を試せるというところにあります。装着感はどうしても個人差があり、皆さん完全ワイヤレスイヤホンは「落としそう……」という印象を持たれていることが多いですね。
写真と実物では大きさの印象が違うこともありますし、友達にお勧めされても自分の耳にはサイズが合わなかったということもありますので、店舗で装着感を試せるというところはネット通販との大きな違いです。
――普段接客されるときに、どのようなことに気を配っていらっしゃるか、お聞かせください。
東谷さん:「お客様が本当に欲しいものをお勧めしよう」というのがスタッフ共通の価値観としてあります。例えば、お客様から「ANC付きのイヤホンが欲しい」というご相談があったとしても、お客様が本当にANCを必要とされているのかということを聞き取ることが重要です。
話を聞いていくとANCが必要なわけでなく、遮音性が高いイヤホンであれば十分だった、ということが頻繁にあります。お客様がおっしゃっていることをお伺いしながら、本当に必要なものを探っていくということが必要です。
――完全ワイヤレスイヤホンというジャンルは、マス向け製品の属性が強いことから、大手メーカーのような知名度があるブランドが基本的に有利という状況がありますが、他方でスタートアップのブランドであっても高い知名度を獲得したケースや、Noble Audioのようにマニア向け専業メーカーがその音質の高さで完全ワイヤレスイヤホン市場で脚光を浴びるケースもでてきました。そういう意味では従来の有線イヤホンの市場動向とも異なると思いますが、どのようにお感じでしょうか。
東谷さん:スタートアップのブランドのなかで完全ワイヤレスイヤホンのジャンルですと、AVIOTは連続9時間の再生を最初に達成した製品を発売したことで話題になりました。ワイヤレスイヤホンはとにかく数字が重要で、スペック映えすることが大事です。有線イヤホンはドライバー構成、再生周波数帯域、インピーダンスといった要素がありますが、正直なところこれらを見ても音の良し悪しはわかりません。
ワイヤレスイヤホンは、できる・できないの部分がスペックから誰でもはっきりわかるので、スペックさえ実現できれば売れる、頑張れば売れる、というところが今まで注目されていなかったブランドでも売れるし、大手ブランドでもスペックが物足りないと売れないという印象です。
ワイヤレスイヤホンの場合、ほしい性能を指名してくるお客様が多いので、まずその条件に合致する製品をご紹介します。その製品が仮に知名度がなくて、ご存じない場合でも、「要求を満たすのがその製品しかないのなら」とご購入いただけることが多いです。もし同条件のものがいくつかあった場合でも、音か見た目で判断という方が多く、ブランドが決め手という方はあまり多くありません。
――PHILE WEBの読者は「音質」にこだわる方が多いので、「音質」で高い評価を得ているNoble Audioについて、ブランド全体の印象や市場でのポジション、ブランドとしての強みについてご紹介いただけますでしょうか。
東谷さん:私は入社4年目なのですが、入社前はNoble Audioというブランド自体を知りませんでした。入社後に先輩に紹介してもらい、「凄くいい音のイヤホンを作るメーカーで高級カスタムイヤホンを作っている雲の上の存在」みたいな印象でした(笑)。
それがFALCONの発表以後は、Noble Audioに対するお客様の認識も「凄い完全ワイヤレスイヤホンを作るメーカー」に変化してきているようで、完全ワイヤレスイヤホンをきっかけにNoble Audioの有線イヤホンに興味を持ったというお客様も増えてきています。
私自身は、Noble Audioは音にとにかくこだわっているメーカーという印象です。他メーカーがANC付きの製品を出すなかで、あえてANC無しで3万円台でFALCON PROを出してくるところに意気込みを感じるし、しかも他社の3万円近辺のANC付きワイヤレスイヤホンと比べて音質的にもっと上を行く結果も出している。着眼点というか勝負しているステージが違うメーカーという印象です。
――Noble Audioは昨年同社初の完全ワイヤレスイヤホンFALCONをリリースしましたが、当時の印象や売り場での反響などお伺いできますでしょうか。
東谷さん:FALCONシリーズは、最初Noble Audio初の完全ワイヤレスイヤホンということで、オーディオファンの方からの指名買いが多かったのですが、そこからの波及の仕方が予想以上で、驚くほど売れたというのが正直な印象です。こんなに一般の方にNoble Audioの名前が浸透するようになったというのは驚きです。
販売店としては、FALCONはとにかく売りやすい製品でした。先ほど申し上げたような必要なスペック競争でまず条件を満たしているのは前提として、まず装着感がいいし、音もいい。完全ワイヤレスイヤホンは、お客様が製品の購入を決めるまでに平均して20分くらいかかるのですが、FALCONを聴かれたお客様は5分から10分くらいで購入いただける印象です。
FALCONのノズルの長さは得手不得手あると思いますが、ほとんどのお客様にとっては問題にならないようです。そして、9割くらいのお客様がNoble Audioを初めて知ったという方で、聴いてすぐ「音がいい!これにします!」という感じです。
――昨年末からNoble Audioの完全ワイヤレスイヤホンがリニューアルし、FALCON2とFALCON PROが登場しました。現在の印象や売り場での反響などお伺いできますでしょうか。
東谷さん:それこそ常連の方で、FALCONもFALCON2もFALCON PROも手に入れたお客様がいるのですが、その方はFALCON2が出たときに「こんな音よくなったの!?」といってお買い上げいただきましたし、FALCON PROがでたときも音質に惚れ込まれたようで、すぐに購入いただきました。
――FALCON2とFALCON PROが人気となっている理由について、お考えをお伺いできますでしょうか。
もともとNoble Audioが好きな方はFALCON2やFALCON PROへの買い替えが比較的スムーズな印象です。Noble Audioをこれまでご存じなかったお客様も、FALCON2の音を一度聴いてしまうと「FALCONの音には戻れない」といって購入いただいています。FALCON2をお買い求めいただくお客様は、他ブランドの製品との比較よりもFALCONと比較される方が多いのが特徴です。
FALCON PROも非常に評判が良いですが、特に音質は「音が良すぎる」という反響です。ANCにコストをかけない分だけ、音にコストを全振りしている信頼感があるのでしょう。「余計な機能はいらない」という方からの印象が非常によいですね。また、ANCのオンオフで音の傾向が変わってしまう完全ワイヤレスイヤホンが多いなかで、そういった心配がないというところも人気です。
「とにかく音がいいものはどれか」とご質問をいただいた場合は、今はFALCON PROしかないかなと思います。あと評判が良いのはケースについているリセットボタンです。イヤホンとお客様のスマートフォンとのペアリングをお手伝いする機会の多いスタッフの間ではもちろん、お客様からも評判が良く、「完全ワイヤレスイヤホンを手掛けるメーカーは、ケースにリセットボタンを必ずつけてほしい」といったリクエストをいただいています。
――COVID-19の流行によって、昨年後半から売れる製品の属性も変化しつつあるように思いますが、今年の完全ワイヤレスイヤホンに求められるお客様の需要、今後のトレンド予想についてお伺いできますでしょうか。
東谷さん:やはり外音取り込み機能ですね。ワークアウトなどで使いたいという従来からの需要がある一方で、新しい要素としてテレワークがあります。周りの音も聞こえつつ音楽も楽しめるというスタイルが求められているのでしょう。
あとは、同時に2台のスマートフォンとつないでおける「マルチポイント接続」の需要が今後高まってくると思います。仕事用とプライベート用のスマートフォンは分けたいというお客様が増えていて、それを1台のイヤホンでまかなえるのがマルチポイント接続です。これができる完全ワイヤレスイヤホンはまだ少ないですね。
テレワークに関連して、通話相手に自分の声が明瞭に伝わるようマイクの性能が高いことも今後必須になってくると思います。また、Appleのようにイヤホンとスマートフォンをシームレスに接続できるユーザー体験も重要視されているので、iPhoneユーザーにAir Podsが人気なのも納得です。
――最後に、PHILE WEB読者の方向けにコメントをお願いいたします。
東谷さん:完全ワイヤレスイヤホンの一番の悩みは「落としてしまうのではないか」という不安だと思います。e☆イヤホンの店舗では、すべての展示品がいつでもすぐにお試しいただけるよう準備しています。スタッフがお客様にあう製品を必ず見つけますので、ぜひご来店ください!
――この度はありがとうございました。
ユーザーの声に近い現場では、共通したトレンドの流れを掴んでいることがわかる。そして、完全ワイヤレスイヤホンを求める幅広い層には、使い勝手とともに、Noble Audioが追求する “こだわり” に共感する方も多いことも知ることができた。上質なモデルが欲しい、という考えをお持ちであれば、信頼のおけるショップで一度「FALCONシリーズ」を体験していただきたい。
(企画協力:株式会社エミライ)