オーディオ銘機賞2022受賞インタビュー
エソテリック 大島洋氏:「N-05XD」での新たなお客様層獲得の手応えを語る
オーディオ銘機賞2022
受賞インタビュー:エソテリック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる“真の銘機”を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」において、特別大賞を獲得したエソテリック。新提案を担った受賞モデルでの新たなお客様層獲得の手応えを、同社の大島洋社長が語った。
エソテリック株式会社 代表取締役社長 大島洋氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■ハイエンド機としてこだわりのプリアウト及びヘッドホン出力を備えたネットワークDAC「N-05XD」
ーー このたびオーディオ銘機賞2022において、エソテリックのN-05XDが特別大賞を受賞されました。おめでとうございます。エソテリックコンポーネントの中でも特徴的なモデルですね。
大島 素晴らしい賞を頂戴しましてありがとうございます。N-05XDは、ネットワークDAC兼プリアンプというカテゴリーの商品ですが、エソテリックのDACとして初めてバランスヘッドホン出力を備えております。私どもとしてはこの機種で、従来のエソテリックファンのお客様に対するご提案の選択肢を増やしたかったですし、新しいお客様にアプローチしたかった。エソテリックにとって、私どもが捉え切れていないお客様がいらっしゃるかもしれないという思いがあったのです。
結果的に、多くの新しいお客様にご購入いただくことができました。保証書の登録のためにお客さまから送られてくるハガキを見ましても、20代、30代といった若い方々が非常に多く、私どもの想定をはるかに超える勢いで正直驚いております。従来のエソテリックのファンの方々とは明らかに違う層の方々、おそらくヘッドホンの愛好家の方々が多いとお見受けしています。
そういう方々にどうすれば届くのか、どうすれば振り向いて興味を示していただけるのかが命題でしたが、N-05XDの存在が一つの解であるかと思います。私どもの思い込みもあって、ハイファイオーディオは限られたお客さまにしか受け入れていただけないのかと思っていましたが、そうではないということがわかりました。従来のエソテリックのコンポーネントとは違う切り口のチャレンジで、新たな手応えを得ることができました。
ーー 新しいお客さまに対して、どのように情報発信したのでしょうか。
大島 従来と違うプロモーションをしてみました。まずTwitterやFacebookにティザー広告を出したのですが、第1弾はヘッドホンジャックだけが、そして第2弾はアンプのノブだけが見える映像です。USB-DACやネットワークプレーヤーはエソテリックにあるが、コンポーネントにヘッドホンジャックはなかった。これは一体何だろう、と興味を示されることを狙ったのです。これに海外のお客様を始め、多くの方が反応されました。
また1分ほどの尺のプロモーションビデオも拡散しました。Youtubeで広告も出し、これも最後までご覧くださる方がかなりいらっしゃったのです。いろいろなプロモーションのやり方を試してみて、これらが功を奏したのかと思います。私どものSNSでの販促コンテンツ、さらにご販売店やオーディオファイルのインフルエンサーのような方々による動画コンテンツといったものが、ネット上でどんどん広がっている印象です。
ーー ヘッドホンの愛好家の方々は、ヘッドホンアンプの高額なモデルに対してもあまり抵抗がなく、そうしたところでN-05XDも選択肢になったと思われます。これまでヘッドホンでの出力で完結されていた方々が、N-05XDで別の手段での音楽の聴き方に踏み込めますね。
大島 そうしたお客さまは、ヘッドホンでオーディオに触れられ、ヘッドホンアンプをいくつかお持ちだと思われますが、おそらくハイファイオーディオのコンポーネントはお持ちではないかもしれません。N-05XDとのミニマムな組み合わせとして、パワードスピーカーをつなぐといった方もイベントなどでお見受けしています。私どもにとっては、まさに新しいお客様による楽しみ方で、大きな可能性を感じます。
ヘッドホンの愛好家の方々の中には、海外サイトで高額な商品を直接お買い上げになる方もいらっしゃり、中には実機を試聴せずに購入されることもあるようです。そういう方々が国内ブランドであるエソテリックを信頼してくださって、高額な商品ですがウェブで購入されるケースもあります。
私どもはティアックブランドではヘッドホン関連商品を積極的に出していましたが、エソテリックはそういった路線ではありませんでした。けれども、海外のブランドをお買い求めになるお客様のポテンシャルには、エソテリックもフィットすることがわかりました。コロナだからこその施策で、達成感があり、新しい時代でお客さまの購買行動も変わってきていると感じます。
■ティアック“リファレンスシリーズ”がフルサイズで勝負する「UD-701N」
ーー ティアックブランドのUD-701Nが銀賞を受賞されました。リファレンスシリーズとして初のフルサイズコンポーネントですね。フルサイズとしたのはどんな意図があるのでしょうか。
大島 リファレンスの 505シリーズは、昨今のライフスタイルに合わせて筐体をA4サイズとした企画です。小さくて置きやすく、フルサイズと同様の音というコンセプト。その下にはさらに小さな301シリーズがあり、多様なお客さまのライフスタイルに合わせるのが大きなテーマでした。しかし一方で、フルサイズのコンポを欲しいお客さまもいらっしゃいます。あらゆるお客さまのライフスタイルに合わせたオーディオをご提案するなら、フルサイズをご提案する必要もあると考えました。
505シリーズではサイズの制約の中でいかにいい音を出すかにチャレンジしてきましたが、制約をなくしてフルサイズとし、これまで実現できなかったことをやろうとUD-701Nを企画しました。プロダクトアウトまで3年くらいかかりましたが、ティアックの開発技術が熟成したタイミングでディスクリートDACを搭載できました。まさにこれはフルサイズだからこそ実現できたものです。
■新たなお客様の取り込みにチャレンジし、オーディオの開発・生産に柔軟な発想を活かす
ーー 昨今は半導体や部品などの不足が、大きく影響しているようですね。
大島 半導体だけでなくいろいろな電子部品、電子ではない部品まであらゆるものが逼迫しています。納期が3年後などというものもあり、この先どういう状況になるのか、まったく見通しが立っていません。もしかしたら業界全体に、パラダイムの変化が起こるかもしれないですね。今までの開発手法や量産のサイズ感が通用しなくなるかもしれないと危惧しています。
こうなると中古ビジネスの取り組みも必要かもしれません。SDGsにもつながってきます。その一例として、私どものサンプル品などを新品に再生させたオーディオ製品を、”しまなみ海道“の尾道市瀬戸田町しおまち商店街に寄贈いたしました。皆さんお聴きになって、音楽にあらためて感動される方がたくさんいらっしゃいました。私どもにとっては製品廃棄の削減と、ハイファイオーディオを多くの方に体験していただくところを目指しております。
ーー そういった中での、2022年のお取り組みはいかがでしょうか。
大島 ティアックとエソテリック、二つのブランドをこれまで以上に最大化して参ります。得意としておりますデジタル技術をつきつめ、コーポレートとしてのメカトロニクスの技術も合わせ、良いものをつくる。半導体不足対しては知恵の出しどころで、フレキシブルに対応するしかないですね。やるべきことがたくさんあります。
お客さまの需要には、強いものを感じます。コロナでの巣篭もりは一段落したと言われていますが、一度家に腰を落ち着けて音楽を聴く生活をお客様が体験し、オーディオの市場は広がったのではないでしょうか。また海外市場の存在も大きいです。
そして国内の需要が減ったと思っていたのは実は私どもだけであって、N-05XDでお客さまにフィットする商品をご提案しきれていなかったことがわかりました。新しいお客様としっかりと向き合い、嗜好を分析して、ターゲットを絞って新しい商品を出すこともおおいにあり得ます。日本の老舗ブランドだからこそできるものをご提供し、選んでいただけるよう勝負していけば、十分に勝機はあると思います。
ーー 大変力強いお話でした。有難うございました。
受賞インタビュー:エソテリック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる“真の銘機”を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」において、特別大賞を獲得したエソテリック。新提案を担った受賞モデルでの新たなお客様層獲得の手応えを、同社の大島洋社長が語った。
エソテリック株式会社 代表取締役社長 大島洋氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■ハイエンド機としてこだわりのプリアウト及びヘッドホン出力を備えたネットワークDAC「N-05XD」
ーー このたびオーディオ銘機賞2022において、エソテリックのN-05XDが特別大賞を受賞されました。おめでとうございます。エソテリックコンポーネントの中でも特徴的なモデルですね。
大島 素晴らしい賞を頂戴しましてありがとうございます。N-05XDは、ネットワークDAC兼プリアンプというカテゴリーの商品ですが、エソテリックのDACとして初めてバランスヘッドホン出力を備えております。私どもとしてはこの機種で、従来のエソテリックファンのお客様に対するご提案の選択肢を増やしたかったですし、新しいお客様にアプローチしたかった。エソテリックにとって、私どもが捉え切れていないお客様がいらっしゃるかもしれないという思いがあったのです。
結果的に、多くの新しいお客様にご購入いただくことができました。保証書の登録のためにお客さまから送られてくるハガキを見ましても、20代、30代といった若い方々が非常に多く、私どもの想定をはるかに超える勢いで正直驚いております。従来のエソテリックのファンの方々とは明らかに違う層の方々、おそらくヘッドホンの愛好家の方々が多いとお見受けしています。
そういう方々にどうすれば届くのか、どうすれば振り向いて興味を示していただけるのかが命題でしたが、N-05XDの存在が一つの解であるかと思います。私どもの思い込みもあって、ハイファイオーディオは限られたお客さまにしか受け入れていただけないのかと思っていましたが、そうではないということがわかりました。従来のエソテリックのコンポーネントとは違う切り口のチャレンジで、新たな手応えを得ることができました。
ーー 新しいお客さまに対して、どのように情報発信したのでしょうか。
大島 従来と違うプロモーションをしてみました。まずTwitterやFacebookにティザー広告を出したのですが、第1弾はヘッドホンジャックだけが、そして第2弾はアンプのノブだけが見える映像です。USB-DACやネットワークプレーヤーはエソテリックにあるが、コンポーネントにヘッドホンジャックはなかった。これは一体何だろう、と興味を示されることを狙ったのです。これに海外のお客様を始め、多くの方が反応されました。
また1分ほどの尺のプロモーションビデオも拡散しました。Youtubeで広告も出し、これも最後までご覧くださる方がかなりいらっしゃったのです。いろいろなプロモーションのやり方を試してみて、これらが功を奏したのかと思います。私どものSNSでの販促コンテンツ、さらにご販売店やオーディオファイルのインフルエンサーのような方々による動画コンテンツといったものが、ネット上でどんどん広がっている印象です。
ーー ヘッドホンの愛好家の方々は、ヘッドホンアンプの高額なモデルに対してもあまり抵抗がなく、そうしたところでN-05XDも選択肢になったと思われます。これまでヘッドホンでの出力で完結されていた方々が、N-05XDで別の手段での音楽の聴き方に踏み込めますね。
大島 そうしたお客さまは、ヘッドホンでオーディオに触れられ、ヘッドホンアンプをいくつかお持ちだと思われますが、おそらくハイファイオーディオのコンポーネントはお持ちではないかもしれません。N-05XDとのミニマムな組み合わせとして、パワードスピーカーをつなぐといった方もイベントなどでお見受けしています。私どもにとっては、まさに新しいお客様による楽しみ方で、大きな可能性を感じます。
ヘッドホンの愛好家の方々の中には、海外サイトで高額な商品を直接お買い上げになる方もいらっしゃり、中には実機を試聴せずに購入されることもあるようです。そういう方々が国内ブランドであるエソテリックを信頼してくださって、高額な商品ですがウェブで購入されるケースもあります。
私どもはティアックブランドではヘッドホン関連商品を積極的に出していましたが、エソテリックはそういった路線ではありませんでした。けれども、海外のブランドをお買い求めになるお客様のポテンシャルには、エソテリックもフィットすることがわかりました。コロナだからこその施策で、達成感があり、新しい時代でお客さまの購買行動も変わってきていると感じます。
■ティアック“リファレンスシリーズ”がフルサイズで勝負する「UD-701N」
ーー ティアックブランドのUD-701Nが銀賞を受賞されました。リファレンスシリーズとして初のフルサイズコンポーネントですね。フルサイズとしたのはどんな意図があるのでしょうか。
大島 リファレンスの 505シリーズは、昨今のライフスタイルに合わせて筐体をA4サイズとした企画です。小さくて置きやすく、フルサイズと同様の音というコンセプト。その下にはさらに小さな301シリーズがあり、多様なお客さまのライフスタイルに合わせるのが大きなテーマでした。しかし一方で、フルサイズのコンポを欲しいお客さまもいらっしゃいます。あらゆるお客さまのライフスタイルに合わせたオーディオをご提案するなら、フルサイズをご提案する必要もあると考えました。
505シリーズではサイズの制約の中でいかにいい音を出すかにチャレンジしてきましたが、制約をなくしてフルサイズとし、これまで実現できなかったことをやろうとUD-701Nを企画しました。プロダクトアウトまで3年くらいかかりましたが、ティアックの開発技術が熟成したタイミングでディスクリートDACを搭載できました。まさにこれはフルサイズだからこそ実現できたものです。
■新たなお客様の取り込みにチャレンジし、オーディオの開発・生産に柔軟な発想を活かす
ーー 昨今は半導体や部品などの不足が、大きく影響しているようですね。
大島 半導体だけでなくいろいろな電子部品、電子ではない部品まであらゆるものが逼迫しています。納期が3年後などというものもあり、この先どういう状況になるのか、まったく見通しが立っていません。もしかしたら業界全体に、パラダイムの変化が起こるかもしれないですね。今までの開発手法や量産のサイズ感が通用しなくなるかもしれないと危惧しています。
こうなると中古ビジネスの取り組みも必要かもしれません。SDGsにもつながってきます。その一例として、私どものサンプル品などを新品に再生させたオーディオ製品を、”しまなみ海道“の尾道市瀬戸田町しおまち商店街に寄贈いたしました。皆さんお聴きになって、音楽にあらためて感動される方がたくさんいらっしゃいました。私どもにとっては製品廃棄の削減と、ハイファイオーディオを多くの方に体験していただくところを目指しております。
ーー そういった中での、2022年のお取り組みはいかがでしょうか。
大島 ティアックとエソテリック、二つのブランドをこれまで以上に最大化して参ります。得意としておりますデジタル技術をつきつめ、コーポレートとしてのメカトロニクスの技術も合わせ、良いものをつくる。半導体不足対しては知恵の出しどころで、フレキシブルに対応するしかないですね。やるべきことがたくさんあります。
お客さまの需要には、強いものを感じます。コロナでの巣篭もりは一段落したと言われていますが、一度家に腰を落ち着けて音楽を聴く生活をお客様が体験し、オーディオの市場は広がったのではないでしょうか。また海外市場の存在も大きいです。
そして国内の需要が減ったと思っていたのは実は私どもだけであって、N-05XDでお客さまにフィットする商品をご提案しきれていなかったことがわかりました。新しいお客様としっかりと向き合い、嗜好を分析して、ターゲットを絞って新しい商品を出すこともおおいにあり得ます。日本の老舗ブランドだからこそできるものをご提供し、選んでいただけるよう勝負していけば、十分に勝機はあると思います。
ーー 大変力強いお話でした。有難うございました。