音楽遍歴から作品誕生の背景まで聞いた
マニアに“刺さる”レコード漫画『音盤紀行』はどうやって生まれたのか。作者・毛塚了一郎さんインタビュー
■1巻に出てきたキャラたち、今後も登場するかも?
ーー1巻の話は現代日本、70年代東欧、70年代フィリピン、70年代北海、近未来アメリカと国も時代もバラバラでしたが、オムニバス形式になったのは何か理由があるんですか?
毛塚:同人誌のときはひとつのレコード屋を軸に話を展開していたんですが、それだとできない話も出てきていたんです。ちょうどそんなタイミングで担当さんに声をかけていただいたこともあって、同人誌ではできなかったいろんな国、いろんな場所の話を描きたい、という想いは最初の頃からありました。
バラバラな中にもレコードという共通の軸を通して、その中でストーリーを作っていくことが1巻のコンセプトでしたが、いただいた感想などを読んでいると、そこがちゃんと伝わっているようで良かったです。
ーーということは、2巻からはまた別の軸に沿った話が始まるのでしょうか?
毛塚:どうでしょう(笑)。最初は1話完結でやっていこうと思っていましたけど、描いているうちにキャラクターへの愛着も出てきたので、これで終わらせるのも忍びないんですよね。なので新しいストーリーもやりつつ、再登場するキャラクターも出てくるかもしれませんね。
担当編集:単行本に付いているアンケートハガキを送ってくださる方も結構いらっしゃって、見ていると「このキャラが好きでした。続きが気になります」という感想も多いんです。それも今後の参考にさせていただけたらと。海賊ラジオの話は続きやりますよね?
毛塚:海賊ラジオはやります。「日本の話はこのキャラクター」と各国の代表選手を決めて進めていくのも良いかもしれませんね(笑)。
ーー余談なんですけど、このアンケートハガキ、オール手書きで送るのもったいないなって思っちゃうんですが……。
担当編集:そういう場合はコピーして使っていただいても大丈夫です。読者の方々のご意見を直接見られる機会ってそう多くはないので、コピーでも送っていただけますと非常に嬉しいです。
ーーそれならオリジナルは保管しつつ感想も送れますね! 是非やらせていただきます! それでは最後に、2巻以降の構想などありましたらお教えください。
毛塚:さきほども言った通り、1巻では音楽への純粋な情熱を前面に出した内容にしていましたが、2巻以降の方針としてひとつ考えているのが、もう少しキャラクターに逆境を与えるということです。音楽やレコードに関わるとなると、必ずしも良いことばかりではないと思いますから、何かしらの試練にぶつかって成長していく様は描きたいと思っています。
担当編集:音楽にまつわる大きな感情だったり、喜びだったりを描いてほしいなと思っています。毛塚先生には何千年という歴史があって、沢山の人たちの想いが積み重なった“音楽”という大きな文化を背負った漫画を描いてほしいですね。
毛塚:音楽を背負うのは難しいですけど(笑)。でも、違う場所、違う時代のキャラクターたちを描いているわけなので、それぞれの音楽に対する想いも違ってくると思うんです。
今の日本はサブスクなりレコードなりと音楽を聴くことに恵まれていますけど、その一方、レコード1枚も満足に買えない人もいるわけで、それぞれの想いを描くためには色々なことを汲まないといけない。大変なことですが、キャラクターの一人ひとりが音楽に対する想いを全うして動いてくれたら1番いいのかなと思います。
ーーありがとうございます! 今後の展開も期待しています!
著者:毛塚 了一郎
定価:792円(本体720円+税)
発売日:2022年05月20日
ISBN:9784047370906