VGP2023受賞:パナソニック 阿南康成氏
<インタビュー>パナソニックの新価値提案。クオリティに加え、テレビのもう一つの軸を意欲的に展開
VGP2023
受賞インタビュー:パナソニック
実績あるテレビの展開において、高画質・高音質を訴求するクオリティを軸とした価値とともに、お客様の暮らしに寄り添う新しい価値の提案に注力しているパナソニック。それを体現する「くらしスタイルシリーズ」と名付けられた商品群の最新モデル、ウォールフィットテレビTH-55LW1/LW1Lが、アワードVGP2023 ライフスタイル分科会におけるリビングビジュアル大賞を受賞した。新たな価値訴求に至った背景を踏まえ、受賞モデルの魅力や、テレビ事業に対する意気込みなどを、パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社の阿南康成氏に語っていただいた。
パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社
副社長執行役員 ビジュアル・サウンドビジネスユニット長
阿南康成氏
1986年 松下電器産業株式会社入社、テレビ事業部配属。2013年 パナソニック株式会社 AVCネットワークス社 パナソニックAVCネットワークススロバキア 社長。2015年 パナソニック株式会社 アプライアンス社 パナソニックAVCネットワークスチェコ 社長。2017年 パナソニック株式会社 アプライアンス社 パナソニックインドアプライアンス社 社長。2019年 パナソニック株式会社 アプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 ビジュアル・サウンドビジネスユニット ビジネスユニット長。2022年現職に就任。
―― 御社はVGPで今回、有機ELテレビで総合金賞、他にも多数の素晴らしい賞を受賞されています。今回はリビングビジュアル大賞を受賞された「くらしスタイルシリーズ」に焦点を当ててお伺いして参ります。まずそのコンセプトをご説明いただけますでしょうか。
阿南 このたびは素晴らしい賞をいただきまして、誠に有難うございました。パナソニックのテレビ展開では、長きにわたって高画質・高音質の価値をご提供しており、高いご評価をいただいています。今回受賞させていただきました「くらしスタイルシリーズ」は、こうした高画質・高音質とはまた違った軸で、新たな価値をご提案するものなのです。
昨今のコロナ禍の中で家に滞在する時間が伸びたことをきっかけに、お客様のご自宅をより心地よい空間にしたいというニーズが高まっていると感じています。そうなりますと、家の中の限られた空間で、大きなテレビの存在感が邪魔になるのではないか。この商品企画は、そういった発想からスタートしたのです。
あらためてテレビの歴史を振り返りますと、ブラウン管のアナログからデジタルに進化し、薄型になる中で、70インチ以上のクラスにまで大画面化してきました。しかしテレビの存在感としては、リビングにどんと置かれた大きなものという状態で、それが昔から変わらず今に至っています。薄型が日常となっている今でも、テレビ台の上に鎮座している形から脱却できていない。そこに我々は違和感を感じました。
たとえば、30代から40代くらいのご両親に小さいお子様といったご家族を想定した時、家があまり広くないといった場合でも、少しでもリビングを広く使っていただくために、テレビのもたらす存在のネガティブさを解消することで、快適なくらし空間づくりに貢献できないか。それが「くらしスタイルシリーズ」の出発点です。10年以上前に「プライベート・ビエラ」の名称で商品化した、家中どこでも持ち運べる小型15インチのポータブルテレビが前身になりました。これは現在も展開しております。
その技術をもとに、リビングテレビとしての仕様も想定したレイアウトフリーテレビを2021年に発売しました。43インチのリビングサイズのテレビにキャスタースタンドをつけて、家の中で見たいところへいつでも運んでいける、というものです。リビングを広く、またお客様の生活に寄り添う形でテレビをより有効的に使っていただく価値をご提案しています。
今回のウォールフィットテレビは、その次の進化としての壁掛けのご提案です。薄く、軽くし、見た目にも違和感なく絵画のように壁にかけられる55インチの有機ELテレビです。これらのプライベート・ビエラ/レイアウトフリーテレビ/ウォールフィットテレビの3シリーズをくらしの中での新しいテレビの価値を提案する新シリーズとして「くらしスタイルシリーズ」と名付けてご提案しております。
―― 部屋の一隅で台に置かれ、位置が固定されていたテレビが、さまざまな形で暮らしに寄り添えるようになったということですね。壁掛け、というのはどういうところから発想されたものでしょうか。
阿南 我々の調査で、お部屋をより広く使いたい、そのために壁掛けをしたいというお客様のニーズが多かったのです。しかし実際にやるとなると、金具を取り付けるために壁に穴を開ける工事が必要となるうえに、壁掛けできても、電源ケーブルはもちろん、アンテナ線や録画機との結線などでたくさんのケーブルが壁に張り巡らされることになります。さらに壁とテレビの間に大きな隙間が空いてしまうというのが現実でした。
そこでセットトップボックスの部分とテレビ本体とを分けました。アンテナ線はセットトップボックスにつなぎ、テレビに対してはそこから無線伝送する。セットトップボックスにはハードディスクを内蔵したモデルも加え、テレビ番組の録画・再生もできます。レイアウトフリーテレビ、ウォールフィットテレビともども、前身であるプライベート・ビエラで10年かけて培ってきた通信技術を活かし、4K無線伝送を実現することで、いままでの壁掛けの課題を解決しました。
もうひとつのこだわりは、デザインですね。テレビは一つのインテリアとしても、やっぱり美しくお客様の部屋の中に溶け込むものでありたいと思います。そこでウォールフィットテレビは、額に入れた絵画のようにテレビ本体を薄くして、壁に隙間なくぴたりと着くようにしました。
これは、有機ELテレビによって実現できました。独自開発のモジュールを採用していますが、モジュールは非常にセンシティブな部分で、設計構造をどう工夫するか、薄く、かつ放熱構造もしっかり入れた形で実現するのが一番苦労した点です。これまでの有機ELテレビの展開で積み上げたものが効力を発揮しました。
―― 御社のテレビの展開として、画質や音質を極める方向性と、くらしスタイルは、2つの柱として同時並行的に進化すると考えてよろしいでしょうか。
阿南 そうですね。これまでのようにAVファンの方にお届けしたい高画質、高音質の追求は継続していきますし、その技術はくらしスタイルシリーズのテレビにも採用していきます。ただ、高画質・高音質を求めるお客様と、くらしスタイルシリーズを求めるお客様では、求められるものが違います。
インテリアにこだわる、リビングを有効活用する、というご要望のある方にはくらしスタイルシリーズを、画質・音質のいいテレビを定位置に据えて楽しみたいという方には従来からのスタイルのテレビを。選択肢があるパナソニックの商品群からお好きなものをお選びいただきたいですね。お客様の幅広いご要望にお応えするべく、2つの商品群それぞれを強化してテレビ事業を伸ばして参ります。
―― 新しい価値がひろがりますが、お客様にそれを伝えるためにどんな施策をされているのでしょうか。
阿南 家電量販店様で、くらしスタイルシリーズは特別な工夫をさせていただいております。テレビ売り場の従来の展示とは異なり、店頭にお部屋の壁を模した展示をすることで、くらしの空間における価値を伝える訴求を図っています。
また、お部屋の写真を投稿してつくる写真集、というコンセプトの「Room Clip」というWebサイトで、モニター募集し、ご自宅でくらしスタイルシリーズを使っていただいている様子を投稿していただいています。インフルエンサーの方々にもご協力いただきながら、インテリア高感度層に発信しております。
こうしたイメージは、店頭だけでお伝えするのは難しく、デジタルとリアルをうまく組み合わせていく必要があると思います。くらしスタイルシリーズは、特にそういうアプローチが重要だと思います。
一方SNSでは画質の良さが伝わりづらい。ここはやはり体感していただくために、店頭にきていただきたいところです。インターネットとリアルの店頭の両方で価値をお伝えする必要がありますね。お客様に店頭に来ていただけるような施策を今後とも検討して参ります。
―― 昨今のお客様の動向はいかがでしょうか。
阿南 コロナ禍が落ち着き、今少し規制が緩和された状況が世界的に進んでいます。外に出る機会が増え、余暇の楽しみ方は食事や旅行といったレジャーの消費にシフトしているのが実情で、テレビ全体の市況は少し落ちてきています。
また、リビングで家族一緒に過ごす方が増えています。在宅勤務も当たり前になった今ですと、例えばお父さんがリビングダイニングテーブルで仕事をし、子供はソファの上で勉強をしているという具合に。そこで、リビングを充実させる「リビ充」という考え方がこれからのお役立ちになると思います。
若い方はスマホでコンテンツを見られる機会が多いですが、家に帰ったら家族 一緒に過ごす時間に大きな画面のテレビで何かを一緒に見る。それが共有する思い出や幸せにつながるのではないかと思います。テレビはその時、重要な位置づけにもなります。
大画面の価値が高まり、家族の絆を深められたら、我々も非常に嬉しく思います。そういった価値をお届けしたいと心から思います。そういういろいろな楽しみ方の提案を1つの柱にして、注力して参りたいと思います。
2023年は厳しい状況が続くと思われますが、当社は画質・音質の訴求とともに、くらしスタイルシリーズのようなテレビの新しい価値をお届けして、テレビ事業を伸ばしていきたいと思っています。
受賞インタビュー:パナソニック
実績あるテレビの展開において、高画質・高音質を訴求するクオリティを軸とした価値とともに、お客様の暮らしに寄り添う新しい価値の提案に注力しているパナソニック。それを体現する「くらしスタイルシリーズ」と名付けられた商品群の最新モデル、ウォールフィットテレビTH-55LW1/LW1Lが、アワードVGP2023 ライフスタイル分科会におけるリビングビジュアル大賞を受賞した。新たな価値訴求に至った背景を踏まえ、受賞モデルの魅力や、テレビ事業に対する意気込みなどを、パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社の阿南康成氏に語っていただいた。
パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社
副社長執行役員 ビジュアル・サウンドビジネスユニット長
阿南康成氏
1986年 松下電器産業株式会社入社、テレビ事業部配属。2013年 パナソニック株式会社 AVCネットワークス社 パナソニックAVCネットワークススロバキア 社長。2015年 パナソニック株式会社 アプライアンス社 パナソニックAVCネットワークスチェコ 社長。2017年 パナソニック株式会社 アプライアンス社 パナソニックインドアプライアンス社 社長。2019年 パナソニック株式会社 アプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 ビジュアル・サウンドビジネスユニット ビジネスユニット長。2022年現職に就任。
■リビングに鎮座し続けたテレビを、暮らしのさまざまなシーンに寄り添う存在に
―― 御社はVGPで今回、有機ELテレビで総合金賞、他にも多数の素晴らしい賞を受賞されています。今回はリビングビジュアル大賞を受賞された「くらしスタイルシリーズ」に焦点を当ててお伺いして参ります。まずそのコンセプトをご説明いただけますでしょうか。
阿南 このたびは素晴らしい賞をいただきまして、誠に有難うございました。パナソニックのテレビ展開では、長きにわたって高画質・高音質の価値をご提供しており、高いご評価をいただいています。今回受賞させていただきました「くらしスタイルシリーズ」は、こうした高画質・高音質とはまた違った軸で、新たな価値をご提案するものなのです。
昨今のコロナ禍の中で家に滞在する時間が伸びたことをきっかけに、お客様のご自宅をより心地よい空間にしたいというニーズが高まっていると感じています。そうなりますと、家の中の限られた空間で、大きなテレビの存在感が邪魔になるのではないか。この商品企画は、そういった発想からスタートしたのです。
あらためてテレビの歴史を振り返りますと、ブラウン管のアナログからデジタルに進化し、薄型になる中で、70インチ以上のクラスにまで大画面化してきました。しかしテレビの存在感としては、リビングにどんと置かれた大きなものという状態で、それが昔から変わらず今に至っています。薄型が日常となっている今でも、テレビ台の上に鎮座している形から脱却できていない。そこに我々は違和感を感じました。
たとえば、30代から40代くらいのご両親に小さいお子様といったご家族を想定した時、家があまり広くないといった場合でも、少しでもリビングを広く使っていただくために、テレビのもたらす存在のネガティブさを解消することで、快適なくらし空間づくりに貢献できないか。それが「くらしスタイルシリーズ」の出発点です。10年以上前に「プライベート・ビエラ」の名称で商品化した、家中どこでも持ち運べる小型15インチのポータブルテレビが前身になりました。これは現在も展開しております。
その技術をもとに、リビングテレビとしての仕様も想定したレイアウトフリーテレビを2021年に発売しました。43インチのリビングサイズのテレビにキャスタースタンドをつけて、家の中で見たいところへいつでも運んでいける、というものです。リビングを広く、またお客様の生活に寄り添う形でテレビをより有効的に使っていただく価値をご提案しています。
今回のウォールフィットテレビは、その次の進化としての壁掛けのご提案です。薄く、軽くし、見た目にも違和感なく絵画のように壁にかけられる55インチの有機ELテレビです。これらのプライベート・ビエラ/レイアウトフリーテレビ/ウォールフィットテレビの3シリーズをくらしの中での新しいテレビの価値を提案する新シリーズとして「くらしスタイルシリーズ」と名付けてご提案しております。
■薄さ・重さ・デザイン性を追求して、テレビの壁かけを本当に気軽に
―― 部屋の一隅で台に置かれ、位置が固定されていたテレビが、さまざまな形で暮らしに寄り添えるようになったということですね。壁掛け、というのはどういうところから発想されたものでしょうか。
阿南 我々の調査で、お部屋をより広く使いたい、そのために壁掛けをしたいというお客様のニーズが多かったのです。しかし実際にやるとなると、金具を取り付けるために壁に穴を開ける工事が必要となるうえに、壁掛けできても、電源ケーブルはもちろん、アンテナ線や録画機との結線などでたくさんのケーブルが壁に張り巡らされることになります。さらに壁とテレビの間に大きな隙間が空いてしまうというのが現実でした。
そこでセットトップボックスの部分とテレビ本体とを分けました。アンテナ線はセットトップボックスにつなぎ、テレビに対してはそこから無線伝送する。セットトップボックスにはハードディスクを内蔵したモデルも加え、テレビ番組の録画・再生もできます。レイアウトフリーテレビ、ウォールフィットテレビともども、前身であるプライベート・ビエラで10年かけて培ってきた通信技術を活かし、4K無線伝送を実現することで、いままでの壁掛けの課題を解決しました。
もうひとつのこだわりは、デザインですね。テレビは一つのインテリアとしても、やっぱり美しくお客様の部屋の中に溶け込むものでありたいと思います。そこでウォールフィットテレビは、額に入れた絵画のようにテレビ本体を薄くして、壁に隙間なくぴたりと着くようにしました。
これは、有機ELテレビによって実現できました。独自開発のモジュールを採用していますが、モジュールは非常にセンシティブな部分で、設計構造をどう工夫するか、薄く、かつ放熱構造もしっかり入れた形で実現するのが一番苦労した点です。これまでの有機ELテレビの展開で積み上げたものが効力を発揮しました。
―― 御社のテレビの展開として、画質や音質を極める方向性と、くらしスタイルは、2つの柱として同時並行的に進化すると考えてよろしいでしょうか。
阿南 そうですね。これまでのようにAVファンの方にお届けしたい高画質、高音質の追求は継続していきますし、その技術はくらしスタイルシリーズのテレビにも採用していきます。ただ、高画質・高音質を求めるお客様と、くらしスタイルシリーズを求めるお客様では、求められるものが違います。
インテリアにこだわる、リビングを有効活用する、というご要望のある方にはくらしスタイルシリーズを、画質・音質のいいテレビを定位置に据えて楽しみたいという方には従来からのスタイルのテレビを。選択肢があるパナソニックの商品群からお好きなものをお選びいただきたいですね。お客様の幅広いご要望にお応えするべく、2つの商品群それぞれを強化してテレビ事業を伸ばして参ります。
■Web上で使用イメージを喚起、特別展示の店頭で体験を促すプロモーション
―― 新しい価値がひろがりますが、お客様にそれを伝えるためにどんな施策をされているのでしょうか。
阿南 家電量販店様で、くらしスタイルシリーズは特別な工夫をさせていただいております。テレビ売り場の従来の展示とは異なり、店頭にお部屋の壁を模した展示をすることで、くらしの空間における価値を伝える訴求を図っています。
また、お部屋の写真を投稿してつくる写真集、というコンセプトの「Room Clip」というWebサイトで、モニター募集し、ご自宅でくらしスタイルシリーズを使っていただいている様子を投稿していただいています。インフルエンサーの方々にもご協力いただきながら、インテリア高感度層に発信しております。
こうしたイメージは、店頭だけでお伝えするのは難しく、デジタルとリアルをうまく組み合わせていく必要があると思います。くらしスタイルシリーズは、特にそういうアプローチが重要だと思います。
一方SNSでは画質の良さが伝わりづらい。ここはやはり体感していただくために、店頭にきていただきたいところです。インターネットとリアルの店頭の両方で価値をお伝えする必要がありますね。お客様に店頭に来ていただけるような施策を今後とも検討して参ります。
■新しい時代の「リビ充」をテレビで実現、家族の思い出の共有をアシスト
―― 昨今のお客様の動向はいかがでしょうか。
阿南 コロナ禍が落ち着き、今少し規制が緩和された状況が世界的に進んでいます。外に出る機会が増え、余暇の楽しみ方は食事や旅行といったレジャーの消費にシフトしているのが実情で、テレビ全体の市況は少し落ちてきています。
また、リビングで家族一緒に過ごす方が増えています。在宅勤務も当たり前になった今ですと、例えばお父さんがリビングダイニングテーブルで仕事をし、子供はソファの上で勉強をしているという具合に。そこで、リビングを充実させる「リビ充」という考え方がこれからのお役立ちになると思います。
若い方はスマホでコンテンツを見られる機会が多いですが、家に帰ったら家族 一緒に過ごす時間に大きな画面のテレビで何かを一緒に見る。それが共有する思い出や幸せにつながるのではないかと思います。テレビはその時、重要な位置づけにもなります。
大画面の価値が高まり、家族の絆を深められたら、我々も非常に嬉しく思います。そういった価値をお届けしたいと心から思います。そういういろいろな楽しみ方の提案を1つの柱にして、注力して参りたいと思います。
2023年は厳しい状況が続くと思われますが、当社は画質・音質の訴求とともに、くらしスタイルシリーズのようなテレビの新しい価値をお届けして、テレビ事業を伸ばしていきたいと思っています。