PR開発中核メンバー・岡芹氏とオーディオ評論家・小原氏が対談
「多くの方にデノンの音を届けたい」、最上位アナログプレーヤー「DP-3000NE」開発者の声を聞く
■“基本に戻る”をベストとし、新規設計で復活させたS字トーンアーム
トーンアームはスタティックバランスのS字型で、アルミニウム・パイプ製。往年の「DA309(DA308)」のデザインを踏襲しているが、すべて新規設計だという。設計図面は東日本大震災で消失してしまっていたのだが、現物のトーンアームが奇跡的に残っており、それを元に岡芹さんが自らの足で先輩エンジニアを訪ねて回り、図面を新たに書き起こしている。
「パイプ交換式とかインテグレーテッド型とか、いろいろ検討はしましたが、最終的にはオリジナルを継承したユニバーサル型に落ち着きました。一緒に取り組んでくれた機構設計のエンジニアも私の意図を汲んでくれまして、構造面でも素材面でもまったく妥協しない設計になっています」(岡芹さん)
板バネで吊られたサスペンションによるフローティング構造を説明する際、アームパイプと軸受けの勘合部を指し示す岡芹さんは実に嬉しそうだ。
「諸先輩方の報告書などを見ると、材料もいろいろと研究、検討されたようなんです。そうした結果を踏まえて、今の形や素材に落ち着いた。それはいま見返しても説得力があるものでしたし、基本に戻るのがベストと判断したんです。やっぱりオルトフォンSPUだって使いたいじゃないですか」(岡芹さん)
ユニバーサルとしたのは、さまざまなカートリッジに対応したいという考え方から。岡芹さん所有の虎の子、ハイコンプライアンスのMC型の名機「DL-1000A」も引っ張り出してチェックに使ったという。
■「クラシックモダン」デザインに込められた深いこだわり
キャビネットはMDFのくりぬきに天然突き板によるダーク・エボニー仕上げ。基板やモーター、配線などを収める部分だけをくりぬいたソリッド構造のため、剛性が高く、高いハウリングマージンが期待できる。
「最初は竹の積層なども検討しましたが、突き板での再現が難しく、断念しました。突き板の貼り合わせを見ても協力工場の職人さんの腕は見事ですよ。接合面の緩い曲面など、デザイナーのこだわりをよくここまで忠実に再現できたなと思います」(岡芹さん)
電源部や制御基板もコンパクトに仕上がっているため、キャビネットをボックス型にする必要がなく、くりぬき部分にすべて埋め込まれている。トーンアームから取り出された信号線のワイヤリングもキリキリと撚るのでなく、緩く捩るのがミソだ。捩る回数も決められており、音決めの際のチューニングの妙である。
「リニア電源を採用して別筐体にしようという案も出ましたが、当初の製品コンセプトから外れるということでそれは却下になりました。『クラシックモダン』というデザインコンセプトが決まった段階で、ストロボスコープやピッチコントロールの搭載も諦めました(笑)。今の時代の要求にマッチしたもので行こうということになり、グローバル・モデルにふさわしいデザインに落ち着いたんです。それでも往年のデノンのターンテーブルの円形のデザインは踏襲しています」(岡芹さん)
アルミダイキャスト製プラッターの裏側のダンピング材に関しても、亜鉛やスチール、ゴムなどを試したが、最終的にはステンレス(SUS304)が採用された。3mm厚にさらに黒塗装がされており、なおかつそれを止めているネジは銅ビスというこだわり様だ。2.8kgのプラッターのイナーシャは400kg・cm2と強大である。
「最終的な音に関しては、私が開発当初に想像していたものより良い音になっていると思います。他のプレーヤーと比較した時に明確に差別化できると感じました。デザインも、クラシックモダンというイメージにぴったり合致したものになったと思います」(岡芹さん)
■「30万円を切りたかった」、優れたパフォーマンスを知ればバーゲンプライス
私はこれまでに都合3回DP-3000NEの音を聴いているが、いつも感じるのは、設置環境に左右されることなく、安定したプレイバックぶりを示してくれることだ。いつ何時も重心が低く、末広がりのピラミッド状のエネルギーバランスを提示してくれる。これは本体の構造ががっちりとしていてハウリングマージンも十二分に確保され、なおかつ本体のサスペンションの仕組みがきちんと機能しているために他ならない。
DP-3000NEからは、冷たさや硬さが微塵もない音が聴ける。それはレコードの音でよく喩えられる温かみとか柔らかさというものとは少し違う。しっかりとした芯があり、重厚でどっしりとしているのだ。声には温かみというよりも人肌の肉感と湿り気がある。楽器の音にはナチュラルで繊細な質感が感じられるのだ。
本機の優れたパフォーマンスからしてみれば、この価格はバーゲンプライスと私は感じているのだが、岡芹さんはもっと安くしたかったと苦笑いする。
「発売時期をもっと早くしたかったし、できれば30万円を切りたかったんです。しかし昨今の材料高騰の影響もあって、それはかなわなかった。弊社のブランドの位置付けとして、決して手の届かないハイエンドではない。より多くの方にデノンのプレーヤーの音を経験していただきたいのです」(岡芹さん)
(協力:ディーアンドエムホールディングス)