ヒノオーディオ主催「SITアンプ試聴会」の模様をレポート
自作オーディオファンが熱心に聞き入る |
去る8月26日、秋葉原のラジオ会館ホールにてヒノオーディオ主催による「SITアンプ試聴会」が開催された。本来はSITを使った自作アンプの優劣を競うクラフトオーディオ愛好家のためのコンテストという趣旨であったが、やはり半導体アンプは難しいという先入観があるのか、あるいは本当に難しくてうまく行かなかったのか、応募者はわずかに1名。そこで予定を変更し、唯一の応募者である柳氏と、評論家の中澤弘光氏と安井 章氏の3名がそれぞれの自作SITアンプを持ち寄っての試聴会ということに相成った。
新時代の半導体と言われるSITだが、今回使われたのはTOKIN製の限定品。単価3万円は安くはないが、300Bなどの真空管と比べて考えれば高くはない。まして半導体でありながら3極管の特性を得られるということを考えれば、じゅうぶんその価格に値するはずだ。また、SITの場合はシンプルな構造にできるので、アマチュアにも扱いやすいというメリットがある。
柳氏の作品では、もともと高周波用半導体として生まれたSITの特色がそのまま生かされ、クリアな高域を持っていた。中澤氏のシングル接地アンプは、「真空管を手がけたことのある人なら、すぐに作れるもの」ということを主眼として製作したとのこと。SITのリニアリティの良さが生かされ、生き生きとした粘りのあるサウンドを聴かせてくれた。そして最後に登場した安井氏の無帰還プッシュプルアンプ(出力25W)は各チャンネルにSITを2個ずつ使用したもので、71歳のキャリアとノウハウを惜しみなく投入した名機に仕上がっていた。独特の理論に裏づけされた自信がそのまま音に顕れたような作品であり、文句なしに素晴らしく、クラフトオーディオならではの面白みと、信念に基づいた製品づくりの醍醐味をオーディオファンに示してくれた。
次回は当初の計画どおりの、SITクラフトアンプのコンテストが2002年2月末に開催される。(伊藤竜太)