カモミールボイスの持ち主・藤田恵美 − インタビュー1<録音の話>
「ひだまりの詩」で知られるル・クプルのボーカリスト・藤田恵美さんは近年、ソロ歌手として、世界を舞台に活動している。特筆すべきは香港、台湾、韓国、シンガポールなどアジア圏のオーディオファンから絶大な人気を得ていること、そして、この11月に日本でも発売された『camomile classics』が、優秀録音盤ということで我が『オーディオアクセサリー』誌でも評論家たちに評価されたことである。そんな藤田恵美さんに注目し、同誌124号でインタビューを行ったが、このファイルウェブには、そこで掲載し切れなかった貴重なお話を4回にわたって綴ってみようと思う。
『カモミール』シリーズはアナログ録音にこだわっている。ニーブの48chのテープにマルチ収録し、その後デジタル化、プロトゥールズを使用しているが、アナログの質感にこだわった、素のままのサウンドに仕上がるよう意識して作られた。
3作目にあたる『camomile classics』は2カ所で録音している。メインは東京都千代田区の一口坂スタジオで、3、5、8曲は六本木のサウンドシティで録音している。
一口坂スタジオはスタジオ2を使用。「SOUND LOCK 」に恵美さん(ボーカル)が、「BOOTH A」にピアノ、「BOOTH B」にギター、「BOOTH C」にベース、そして「MAIN STIDIO」の一角(図むかって右下の角)にバイオリンが位置をとった。
ふつうはブースの扉を閉めてそれぞれマイクで録っているものをモニターしながら演奏するが、ギターやピアノだけの録音時にはボーカルは扉を開け放して録音した。
「扉を開けたときの録音と、扉を閉めたときの録音の音を聴き比べてみたときに、開けて録った方がいい、と感じたんです」と恵美さんはいう。
「歌の色合いは、歌っているその瞬間に作っています。だから、その色付けを表現したいんです。」 そんなこだわりは、一発録りに近い録音をしたことや、リズムの基準を“クリック”と呼ばれるリズムキーパーではなく、恵美さんの歌に他のミューシャンが合わせるという方法をとったことからもうかがえる。
プロデューサーの奥野秀樹氏によると「ポップスは原音再生、という概念が難しい。ミックスで変わってくるから。恵美さんの歌はアコースティックな歌であって、その場で録ったときの感じが大事なんです。」恵美さんはミキシングの段階でチェックするという。“歌った瞬間の色付け”が生きているか。違和感があれば納得するまでエンジニアと話し合うそうだ。
マスタリングは名手、保坂弘幸氏。ミックスダウンされたマスターテープから、曲順の変更、曲のレベル、イコライジング、フェードイン・フェードアウトなどのクロスフェード作業、音圧調整、曲間の編集等を行い、最終形のCDカッティング用マスターテープを作る。その段階でも恵美さんはチェックをするという。
「マスタリングエンジニアの方は、マスタリングの時点で初めて聴くわけです。来たものに対して自分の感性をそこに乗せるのです。ですから、マスタリングエンジニアの感性はとても大事。私も聴かせていただいて、パターンAよりパターンBのほうがいいですね、などというようなやりとりをします。今ヒットする傾向としては、聴き手を振り向かせるために、派手にリバーブをかけたりします。でも私は素朴なものが好きなのです。こう歌いたかった、というものが遠くにあるように感じたら、そのようにエンジニアの方にお伝えしますね。」
そんなこだわりができあがった作品の音に表れる。派手ではなく、素朴さにこだわった音に、ぜひ耳を傾けてみてほしい。<続く>
(オーディオアクセサリー編集部)
『カモミール』シリーズはアナログ録音にこだわっている。ニーブの48chのテープにマルチ収録し、その後デジタル化、プロトゥールズを使用しているが、アナログの質感にこだわった、素のままのサウンドに仕上がるよう意識して作られた。
3作目にあたる『camomile classics』は2カ所で録音している。メインは東京都千代田区の一口坂スタジオで、3、5、8曲は六本木のサウンドシティで録音している。
一口坂スタジオはスタジオ2を使用。「SOUND LOCK 」に恵美さん(ボーカル)が、「BOOTH A」にピアノ、「BOOTH B」にギター、「BOOTH C」にベース、そして「MAIN STIDIO」の一角(図むかって右下の角)にバイオリンが位置をとった。
ふつうはブースの扉を閉めてそれぞれマイクで録っているものをモニターしながら演奏するが、ギターやピアノだけの録音時にはボーカルは扉を開け放して録音した。
「扉を開けたときの録音と、扉を閉めたときの録音の音を聴き比べてみたときに、開けて録った方がいい、と感じたんです」と恵美さんはいう。
「歌の色合いは、歌っているその瞬間に作っています。だから、その色付けを表現したいんです。」 そんなこだわりは、一発録りに近い録音をしたことや、リズムの基準を“クリック”と呼ばれるリズムキーパーではなく、恵美さんの歌に他のミューシャンが合わせるという方法をとったことからもうかがえる。
プロデューサーの奥野秀樹氏によると「ポップスは原音再生、という概念が難しい。ミックスで変わってくるから。恵美さんの歌はアコースティックな歌であって、その場で録ったときの感じが大事なんです。」恵美さんはミキシングの段階でチェックするという。“歌った瞬間の色付け”が生きているか。違和感があれば納得するまでエンジニアと話し合うそうだ。
マスタリングは名手、保坂弘幸氏。ミックスダウンされたマスターテープから、曲順の変更、曲のレベル、イコライジング、フェードイン・フェードアウトなどのクロスフェード作業、音圧調整、曲間の編集等を行い、最終形のCDカッティング用マスターテープを作る。その段階でも恵美さんはチェックをするという。
「マスタリングエンジニアの方は、マスタリングの時点で初めて聴くわけです。来たものに対して自分の感性をそこに乗せるのです。ですから、マスタリングエンジニアの感性はとても大事。私も聴かせていただいて、パターンAよりパターンBのほうがいいですね、などというようなやりとりをします。今ヒットする傾向としては、聴き手を振り向かせるために、派手にリバーブをかけたりします。でも私は素朴なものが好きなのです。こう歌いたかった、というものが遠くにあるように感じたら、そのようにエンジニアの方にお伝えしますね。」
そんなこだわりができあがった作品の音に表れる。派手ではなく、素朴さにこだわった音に、ぜひ耳を傾けてみてほしい。<続く>
(オーディオアクセサリー編集部)