ベルリン・フィル来日記者会見レポート ー ラトルが語る樫本大進、ブーレーズ、DCHの未来
2013年11月14日から20日にかけて、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2013年来日公演が行われている。そのさなか、本日11月19日に、ザ・キャピタルホテル東急にて同オーケストラ主催による独自の記者会見が開催された。
会見には首席指揮者サー・サイモン・ラトル氏が出席。ツアーについての思い、オーケストラの現在、未来のビジョン、「デジタルコンサートホール」を含めたメディア活動等についてお話しを伺うことができたので、2回にわたりレポートしよう。
<首席指揮者サー・サイモン・ラトルのコメント:>
昨夜は今回のツアーのクライマックスといえる出来で、最高の演奏会となりました。樫本大進は、ベルリン・フィルの最高のコンサートマスターですが、ソリストとしての、そしてご両親の前で演奏をするというプレッシャーのもと、素晴らしい演奏をしてくれました。そこにプロコフィエフがいたら更なるプレッシャーがあったことでしょう。樫本は故郷で演奏ができたことに対して「夢がかないました」と話していました。
今晩は異色の組み合わせの演奏となります。ブーレーズとブルックナーです。これまでも我々はクラシック音楽の中核を担うドイツ、オーストリアのレパートリーだけではなく、それ以外の作曲家の作品を採り上げてきました。
私はピエール・ブーレーズの作品はこの25年間で書かれた最高の音楽だと考えております。ブーレーズの音楽は、ひとつひとつの音が集まって木になりたくさんの葉っぱを蓄えるような音楽だと思っています。異なるこれらの音を全部本当に演奏しなければならないかとブーレーズに尋ねたところ「全部の葉っぱというのは、見えないのだ」との答えでした。それはいったいぼくを励ましているのか、よくわかりませんでした。
5つの楽章があり、それらひとつひとつは短くて、ステレオ音像をチューニングされた俳句のようなものとなっています。それが非常に多角的にウイットに飛んだリズムなど入っていて、ブーレーズの持っていたアジアへの興味も入っていると思われます。ちょうど「春の祭典」と「ダフニスとクロエ」の中間といった気もいたします。そのブーレーズが前半のプログラムで、その後ブルックナーが来るという対照的な構成となっています。
会場ではベルリン・フィルのコンサートマスター、樫本大進氏からのビデオレターも上映された。
<樫本大進氏のインタビュー(記者会見の場でビデオで上映)>
―――いちばんたいへんだったことは?
樫本氏 ぼくにとって新しい曲が毎週いっぱい入ってくるので、リハーサルの前までに準備をするのはたいへんでした。ちゃんとやらなきゃ、と思っているので。
―――楽しいことは?
樫本氏 やはり仲間といっしょに素晴らしい指揮者のもとで、音楽を作り上げていく作業です。いままでなかった経験で、勉強させていただいております。
―――コンサートマスターの役割とは?
樫本氏 シチュエーションによって違いますね。指揮者によっても、演奏する場面によっても違いますが、コンサートマスターは団員の一員でもあり、オケを引っ張っていく存在でもあり、指揮者と近くにいなければいけない存在でもあるのでバランスが必要な仕事かなと思います。このオーケストラは、モチベーションは必要ないオーケストラなので……常に100%以上のエネルギーで演奏してくれますからね。
―――ソロを演奏するのは気持ちいいですか? 緊張しませんか?
樫本氏 両方ですね。毎週会っている仲間たちからサポートも感じますし、気持ちいいのもありますが、コンサートマスターとして、ベルリン・フィルの顔の一部として恥ずかしくないように演奏したいと思っています。期待してくれていると思うので、自分にかけるプレッシャーはある程度あります。ただ、リハーサルしていて、やっぱりこのオケ、いい音出すな〜と幸せな気持ちで演奏していますよ。
――――ソロを演奏するとき、伴奏をしてもらっている感じなのですか?
樫本氏 ソリストとオーケストラという2つに分かれた曲ではないのです。オケパートはどちらかというと伴奏ではない、オケパートですね。ベルリン・フィルは伴奏が上手なオーケストラではありませんから、よかったかなと思います。
―――−このように演奏するのが樫本さんの夢だったとか。
樫本氏 10年前くらいに知り合いと話していて、大きい夢といえば何だろう、という話になった時に「ベルリン・フィルでサントリーホールで弾きたいなというすごく大きい夢があるんだ」と語ったことがありました。その夢が叶いました。
(記者会見の内容は第2回レポートに続く)
なお、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2013年来日公演の日程およびプログラムは次のとおりである。
11月14日 名古屋/愛知県芸術劇場コンサートホール (※1)
11月15日 大阪/フェスティバルホール (※1)
11月16日 西宮/兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール (※2)
11月18日 東京/サントリーホール (※1)
11月19日 東京/サントリーホール (※2)
11月20日 川崎/ミューザ川崎シンフォニーホール (※1)
指揮:サイモン・ラトル [首席指揮者・芸術監督]
ヴァイオリン独奏:樫本大進 [※11月14日・15日・18日・20日]
※プログラム(1)
シューマン:交響曲第1番変ロ長調 作品38「春」
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 作品19
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
※プログラム(2)
ブーレーズ:ノタシオン
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
会見には首席指揮者サー・サイモン・ラトル氏が出席。ツアーについての思い、オーケストラの現在、未来のビジョン、「デジタルコンサートホール」を含めたメディア活動等についてお話しを伺うことができたので、2回にわたりレポートしよう。
<首席指揮者サー・サイモン・ラトルのコメント:>
昨夜は今回のツアーのクライマックスといえる出来で、最高の演奏会となりました。樫本大進は、ベルリン・フィルの最高のコンサートマスターですが、ソリストとしての、そしてご両親の前で演奏をするというプレッシャーのもと、素晴らしい演奏をしてくれました。そこにプロコフィエフがいたら更なるプレッシャーがあったことでしょう。樫本は故郷で演奏ができたことに対して「夢がかないました」と話していました。
今晩は異色の組み合わせの演奏となります。ブーレーズとブルックナーです。これまでも我々はクラシック音楽の中核を担うドイツ、オーストリアのレパートリーだけではなく、それ以外の作曲家の作品を採り上げてきました。
私はピエール・ブーレーズの作品はこの25年間で書かれた最高の音楽だと考えております。ブーレーズの音楽は、ひとつひとつの音が集まって木になりたくさんの葉っぱを蓄えるような音楽だと思っています。異なるこれらの音を全部本当に演奏しなければならないかとブーレーズに尋ねたところ「全部の葉っぱというのは、見えないのだ」との答えでした。それはいったいぼくを励ましているのか、よくわかりませんでした。
5つの楽章があり、それらひとつひとつは短くて、ステレオ音像をチューニングされた俳句のようなものとなっています。それが非常に多角的にウイットに飛んだリズムなど入っていて、ブーレーズの持っていたアジアへの興味も入っていると思われます。ちょうど「春の祭典」と「ダフニスとクロエ」の中間といった気もいたします。そのブーレーズが前半のプログラムで、その後ブルックナーが来るという対照的な構成となっています。
会場ではベルリン・フィルのコンサートマスター、樫本大進氏からのビデオレターも上映された。
<樫本大進氏のインタビュー(記者会見の場でビデオで上映)>
―――いちばんたいへんだったことは?
樫本氏 ぼくにとって新しい曲が毎週いっぱい入ってくるので、リハーサルの前までに準備をするのはたいへんでした。ちゃんとやらなきゃ、と思っているので。
―――楽しいことは?
樫本氏 やはり仲間といっしょに素晴らしい指揮者のもとで、音楽を作り上げていく作業です。いままでなかった経験で、勉強させていただいております。
―――コンサートマスターの役割とは?
樫本氏 シチュエーションによって違いますね。指揮者によっても、演奏する場面によっても違いますが、コンサートマスターは団員の一員でもあり、オケを引っ張っていく存在でもあり、指揮者と近くにいなければいけない存在でもあるのでバランスが必要な仕事かなと思います。このオーケストラは、モチベーションは必要ないオーケストラなので……常に100%以上のエネルギーで演奏してくれますからね。
―――ソロを演奏するのは気持ちいいですか? 緊張しませんか?
樫本氏 両方ですね。毎週会っている仲間たちからサポートも感じますし、気持ちいいのもありますが、コンサートマスターとして、ベルリン・フィルの顔の一部として恥ずかしくないように演奏したいと思っています。期待してくれていると思うので、自分にかけるプレッシャーはある程度あります。ただ、リハーサルしていて、やっぱりこのオケ、いい音出すな〜と幸せな気持ちで演奏していますよ。
――――ソロを演奏するとき、伴奏をしてもらっている感じなのですか?
樫本氏 ソリストとオーケストラという2つに分かれた曲ではないのです。オケパートはどちらかというと伴奏ではない、オケパートですね。ベルリン・フィルは伴奏が上手なオーケストラではありませんから、よかったかなと思います。
―――−このように演奏するのが樫本さんの夢だったとか。
樫本氏 10年前くらいに知り合いと話していて、大きい夢といえば何だろう、という話になった時に「ベルリン・フィルでサントリーホールで弾きたいなというすごく大きい夢があるんだ」と語ったことがありました。その夢が叶いました。
(記者会見の内容は第2回レポートに続く)
なお、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2013年来日公演の日程およびプログラムは次のとおりである。
11月14日 名古屋/愛知県芸術劇場コンサートホール (※1)
11月15日 大阪/フェスティバルホール (※1)
11月16日 西宮/兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール (※2)
11月18日 東京/サントリーホール (※1)
11月19日 東京/サントリーホール (※2)
11月20日 川崎/ミューザ川崎シンフォニーホール (※1)
指揮:サイモン・ラトル [首席指揮者・芸術監督]
ヴァイオリン独奏:樫本大進 [※11月14日・15日・18日・20日]
※プログラム(1)
シューマン:交響曲第1番変ロ長調 作品38「春」
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 作品19
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
※プログラム(2)
ブーレーズ:ノタシオン
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
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