相模湖交流センターにて3daysライブを実施
加藤訓子はクセナキスをどう解釈したのか? 最新作『IX』発売記念ライブをレポート
パーカッショニストとして世界的な評価を得ている加藤訓子さんは、最新作『IX』にて現代音楽作曲家・建築家ヤニス・クセナキスを取り上げた。『クニコ・プレイズ・ライヒ』『カントゥス』に続くこの第3作のリリースを記念して、5月1日・2日・3日の3日間にわたって、神奈川県立相模湖交流センターにて、加藤訓子さんによるライブパフォーマンス「加藤訓子 PROJECT IX PLEIADES」が行われた。
相模湖交流センターは、この『IX』の録音が行われた場所。その音響の良さから多くのアーティストから「録音を行いたい」というオファーが絶えないというこの交流センターのホールにて、今回のライブパフォーマンスは行われた。録音時と同じ音響環境で加藤訓子さんの生の演奏を聞くことができる貴重な機会だったのである。
『IX』をはじめとする加藤訓子さんの各作品は、高音質で知られるスコットランドの音楽レーベル、リンレコーズから配信されている。そして彼女は同レーベルに所属する唯一の日本人でもある。相模湖交流センター内のギャラリーにはリンレコーズを運営する総合オーディオメーカー、リンのEXAKTシステム(関連ニュース)を用意。加藤訓子さんの音源はもちろん、クセナキスの様々な音源を試聴することができた。
ギャラリー内には、実際に『IX』のレコーディングで使われた楽器も展示。クセナキスが今回収録された『プレイアデス』のために考案した楽器(そして録音のために製作された!)である「SIXXEN(ジクセン)」も見ることができた。また、パフォーマンス後のトークショウで司会を務めたリンジャパンの古川雅紀氏が個人所有する、クセナキスの膨大なレコードライブラリや関連資料も展示された。
パフォーマンスでは、加藤訓子さん自身の演奏に先立って、『IX』収録の「プレイアデス 〜6人の打楽器アンサンブルのための〜」の映像+サウンドインスタレーションが行われた。これは、訓子さんが演奏した6人分のパートをそれぞれスピーカーから再生し、それに合わせて巨大スクリーンに映像を映し出すというものだ。
そして訓子さんによる『ルボン 〜 打楽器ソロのための〜 』の生演奏。この後のトークショウでは訓子さん自身が「一見カオスのようだけれども、楽譜には非常に精密で考え抜かれた秩序が構築されている。これをいかにカオスにすることなく表現するかがカギとなる」と語っていたが、演奏はまさにこの言葉に集約されるだろう。一聴すると不規則にも聴こえる強烈な打音が、音楽に入り込むにつれてミニマルに構築されていくのが感じ取れる。暗闇の中に浮かび上がる肉体の躍動感は神々しく、打楽器の本来の打音の迫力や質感を、数メートルの距離で味わうことができた。
演奏後には、加藤訓子さんを囲んでのトークショウが行われた。司会役の古川氏、相模湖交流センターの館長である秋山氏に加え、記者が取材に訪れた2日目にミュージシャンの浜田均氏がゲストとして登場。訓子さんはクラシックの道へ本格的に進む以前、ジャズヴィヴラフォン奏者である浜田氏に一時師事していたとのこと。浜田氏は、訓子さんが学生時代から非凡な才能の片鱗を見せていたというエピソードを披露していた。
訓子さんは前述のように今回の演奏について「クセナキスはカオスと言われます。しかし楽譜をみれば無秩序なところなどひとつとしてなく、むしろ精緻なまでの設計図のようです。微妙なズレや揺らぎまで計算されています。それをカオスにしてしまってはいけないのです。今回は多重録音によって6人分のパートを一人で演奏することで、通常のアンサンブルではまず難しい、クセナキスの意図の正確な再現ができたのです」とコメント。それに対して浜田氏は「クセナキスをこれだけエレガントに演奏できるのは実にすばらしいことです」と述べていた。
また秋山館長は、本ホールにおけるレコーディング時のエピソードを紹介。各パートの演奏の録音を孤独に続ける訓子さんの姿に、そして一見単調な演奏の積み重ねが壮大なまでの音楽を構築していく様に心を打たれたのだという。
初日のトークショウにゲストとして参加した山之内 正氏は、今回の加藤訓子さんの『IX』に寄せて「音楽と音に反応する感性の持ち主には必ず共鳴を引き起こす刺激に満ちた演奏だ。クセナキス作品の奥の深さを熟知した聴き手には作品の本質にさらに深く迫る道筋を刻み、これから聴き始める新しい音楽ファンには、クセナキスの音響世界に聴き手を瞬時に引き込む強い吸引力を発揮する」と述べている(「PROJECT IX PLEIADES」パンフレットより)。リンレコーズではすでにハイレゾ音源の配信も始まっている。ぜひそのサウンドをご自宅のオーディオシステムでも楽しんでみてはいかがだろうか。
相模湖交流センターは、この『IX』の録音が行われた場所。その音響の良さから多くのアーティストから「録音を行いたい」というオファーが絶えないというこの交流センターのホールにて、今回のライブパフォーマンスは行われた。録音時と同じ音響環境で加藤訓子さんの生の演奏を聞くことができる貴重な機会だったのである。
『IX』をはじめとする加藤訓子さんの各作品は、高音質で知られるスコットランドの音楽レーベル、リンレコーズから配信されている。そして彼女は同レーベルに所属する唯一の日本人でもある。相模湖交流センター内のギャラリーにはリンレコーズを運営する総合オーディオメーカー、リンのEXAKTシステム(関連ニュース)を用意。加藤訓子さんの音源はもちろん、クセナキスの様々な音源を試聴することができた。
ギャラリー内には、実際に『IX』のレコーディングで使われた楽器も展示。クセナキスが今回収録された『プレイアデス』のために考案した楽器(そして録音のために製作された!)である「SIXXEN(ジクセン)」も見ることができた。また、パフォーマンス後のトークショウで司会を務めたリンジャパンの古川雅紀氏が個人所有する、クセナキスの膨大なレコードライブラリや関連資料も展示された。
パフォーマンスでは、加藤訓子さん自身の演奏に先立って、『IX』収録の「プレイアデス 〜6人の打楽器アンサンブルのための〜」の映像+サウンドインスタレーションが行われた。これは、訓子さんが演奏した6人分のパートをそれぞれスピーカーから再生し、それに合わせて巨大スクリーンに映像を映し出すというものだ。
そして訓子さんによる『ルボン 〜 打楽器ソロのための〜 』の生演奏。この後のトークショウでは訓子さん自身が「一見カオスのようだけれども、楽譜には非常に精密で考え抜かれた秩序が構築されている。これをいかにカオスにすることなく表現するかがカギとなる」と語っていたが、演奏はまさにこの言葉に集約されるだろう。一聴すると不規則にも聴こえる強烈な打音が、音楽に入り込むにつれてミニマルに構築されていくのが感じ取れる。暗闇の中に浮かび上がる肉体の躍動感は神々しく、打楽器の本来の打音の迫力や質感を、数メートルの距離で味わうことができた。
演奏後には、加藤訓子さんを囲んでのトークショウが行われた。司会役の古川氏、相模湖交流センターの館長である秋山氏に加え、記者が取材に訪れた2日目にミュージシャンの浜田均氏がゲストとして登場。訓子さんはクラシックの道へ本格的に進む以前、ジャズヴィヴラフォン奏者である浜田氏に一時師事していたとのこと。浜田氏は、訓子さんが学生時代から非凡な才能の片鱗を見せていたというエピソードを披露していた。
訓子さんは前述のように今回の演奏について「クセナキスはカオスと言われます。しかし楽譜をみれば無秩序なところなどひとつとしてなく、むしろ精緻なまでの設計図のようです。微妙なズレや揺らぎまで計算されています。それをカオスにしてしまってはいけないのです。今回は多重録音によって6人分のパートを一人で演奏することで、通常のアンサンブルではまず難しい、クセナキスの意図の正確な再現ができたのです」とコメント。それに対して浜田氏は「クセナキスをこれだけエレガントに演奏できるのは実にすばらしいことです」と述べていた。
また秋山館長は、本ホールにおけるレコーディング時のエピソードを紹介。各パートの演奏の録音を孤独に続ける訓子さんの姿に、そして一見単調な演奏の積み重ねが壮大なまでの音楽を構築していく様に心を打たれたのだという。
初日のトークショウにゲストとして参加した山之内 正氏は、今回の加藤訓子さんの『IX』に寄せて「音楽と音に反応する感性の持ち主には必ず共鳴を引き起こす刺激に満ちた演奏だ。クセナキス作品の奥の深さを熟知した聴き手には作品の本質にさらに深く迫る道筋を刻み、これから聴き始める新しい音楽ファンには、クセナキスの音響世界に聴き手を瞬時に引き込む強い吸引力を発揮する」と述べている(「PROJECT IX PLEIADES」パンフレットより)。リンレコーズではすでにハイレゾ音源の配信も始まっている。ぜひそのサウンドをご自宅のオーディオシステムでも楽しんでみてはいかがだろうか。