11人のトップギタリストとコラボした注目作

渡辺香津美の最新作「ギター・イズ・ビューティフル KW45」制作秘話/CDとハイレゾを比較試聴

公開日 2016/04/20 15:23 編集部:小澤 麻実
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トラック1「ザ・カーブ・オブ・ライフ」

元ELLEGARDEN、元Nothing's Carved In Storeの生形真一さんが、渡辺さんをイメージして書いた曲。「生形くんは普段ES-355を使っているのでそれで来るかなと思ったら『今回はアコギを使いたい』とハミングバードをチョイスして。なので僕も色々考えたんですが、レコーディング当日にスーパーアダマスを使おうと思い立って。1980年の『TO CHI KA』で使ったものですね。それを掘り出して弦を張って使いました」と渡辺さん。



トラック2「フラメンコ・ブルー」

フラメンコギター奏者の沖 仁さんとの演奏。作曲は谷川公子さんだが、曲ができたのはなんとレコーディングの前日ぐらいだったのだという。

「作曲期間中にパコ・デ・ルシアが亡くなり、彼の曲を聴いていたら作曲のアイディアがどんどん湧いてしまったみたいです。『フラメンコ・ブルー』は、パコへのオマージュで、ブレリアのリズムを使った曲。聴きどころは沖くんのオーセンティックなフラメンコギター。それに僕がエレクトリックギターでフュージョン的にコラボするという、ありそうでなかったことをやってみました」(渡辺さん)

ギターは、沖さんがヤマハのフラメンコギター、渡辺さんはポールリードスミスのモダンイーグルを使ったとのこと。「沖くんのきらびやかなフラメンコギターと、僕のエレクトリックギターのクリーンなサウンド、エフェクトをかけたサウンド。ダイナミクスも激しいですし、これをミックスして曲にするには、鈴木さんの魔法が必要。最後のマジックを期待して、制約を設けず好き勝手にできました(笑)」と渡辺さん。

鈴木さんは「確かに、ちょっと間違うと大変なことになるんです。アコギとエレキではエネルギーバランスが違うんです。音楽のバランスはふたりのなかで完全にできていたんですが、音色や音量のバランスを整えてエネルギーを揃えてあげないと音楽の対話感が出ないので、そこに苦労しましたね」と語っていた。


トラック5「ラウンド・ミッドナイト」

こちらはLUNA SEAのSUGIZOさんとの演奏。「SUGIZOさんが雑誌の対談で僕を呼んでくれたりしたことで、交流が始まりました。彼はほんとうにジャズ通で。彼のスペ―シーなギターと激しい音色の起伏を活かしてほしくて、この曲をやることにしました」

この曲はふたりともエレキギターを使用。渡辺さんはアレンビックのSSG、SUGIZOさんはシグネチャーのP-90 ピックアップのついたストラトタイプ。「エフェクターも駆使し、ただ音量が大きいだけじゃなく、ミステリアスで繊細な空間表現も入っている。ありとあらゆるエレキギターの悪魔的な要素が入っていると思います」(渡辺さん)

「録音は香津美さんがされたので、僕はマスタリング時に初めて聴いてみて、最初は『ジャズっぽい感じなんだな』と思ったんですが、だんだんと『きた、きた、きたーー!』って感じになりましたね(笑)。お互いの音が良い意味の溶け具合、漏れ具合で、一体感が出ていると思います。完全に分離すると、気持ちも離れちゃうような感じがしますから」(鈴木さん)


トラック7「丘の上」

高田漣さんとのコラボで、この曲だけ高田さんによるボーカルが入っている。高田さんは、父・高田渡さんのヤマハのギターを使って演奏。渡辺さんは「ブルージーなトーンを出したい」という考えから、昔ニューヨークで買ったというレスポールスペシャルを使用した。

鈴木さんは「まさかボーカルの曲が来ると思っていなかったので、驚きました(笑)。アルバムを通したストーリーに沿ってバランスを組み立てているんですが、ギターだけの曲のなかにいきなりボーカルが入ると、ボーカルの音量感というのが難しいんですね。ボーカルを聴かせるためにギターが小さくなると違和感が生まれるので…そのあたり、非常に苦労しました。なのでボーカルは音量的に大きくはないけれど、でも歌詞がちゃんと伝わることを大事にしてバランスをとりました」と録音秘話を披露。渡辺さんも「神ワザでございました」と絶賛していた。


トラック8「ボレロ」

押尾コータローさんとの演奏。軽井沢のスタジオで、鈴木さんにより録音が行われた。使用楽器は押尾さんがGREVEN、渡辺さんがマーチンの00012-28M。

「お二人の生音を中心に、オフマイクで漏れた音も大事に拾って“繊細さ”を録りました。聴いてお分かりのとおり素晴らしい音楽だったので、僕がすることはほとんどなく(笑)、スムーズに完成しました」と笑う鈴木さん。渡辺さんは「やればやるほど妖しくなるんですよ。いちばん妖しいバージョンを採用してもらいました」と笑いを誘っていた。


トラック10「リップルリング」

リー・リトナーとの演奏。同氏がツアーで来日しているときに、忙しい合間をぬって都内にあるソニーのスタジオで収録したという。「リーとは1978年以来の共演でしたね。ソニーのスタジオは鈴木さんのホームですから、超安心。リーにはリクエストしてガットギターを弾いてもらって、私はマーチンのOM-45を使いました。メロディーやソロを交互にやるので、バランスが難しかったと思います」と渡辺さん。

鈴木さんは「渡辺さんは芯が強い音で、リーさんはソフトな音色。音色バトル、という感じでしたね。個性を表現しつつミックスするのがすごく楽しかったです。まずこの二大巨頭が並ぶ時点ですごく緊張するんですよね、すげー!って。生の音色ってこういう音がしているんだなあ…と、楽しんでやれました」と、当時の興奮を語っていた。


トラック12「アイランド・ホップ」

そしてアルバムの最後を飾るのは、このアルバムのゲスト11人と渡辺さんで作り上げた曲だ。ベースになっているリズムに、16小節のソロを、全員がそれぞれ重ねていった。

「お互い誰がやったのか分からないまま録っていったんですよ(笑)。僕はヒストリーのシグネチャーモデルを使いました。アコースティックギターあり、エレキギターあり、バックにはパーカッションありと色々な音をつなげていくのは、鈴木さんのワザがあってこそ。大団円、ギタージャンボリーみたいな感じの曲になりましたね」(渡辺さん)


「録っているときから誰もこうなると思っていなかったのが面白いところで、自分もミックスしながら『ああ、曲になっていくぞ』、と。ひとつひとつにエネルギーや音色が違って、苦労というよりワクワク感、楽しいなという感覚の方が大きかったです」(鈴木さん)


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