最高級モデルの価格と詳細が明らかに
<CES>テクニクス「SP-10R」は1万ドル、システム「SL-1000R」は2万ドル。こだわりを開発陣に聞いた
米ラスベガスで開催されている「2018 International CES」。既報の通り、Technics(テクニクス)ブランドからは、同社が欧米で今春に発売する最高級ターンテーブル「SP-10R」およびターンテーブルシステム「SL-1000R」が正式に発表され、ブースで展示も行われている。
パナソニック(株)テクニクスCTOの井谷哲也氏、同アプライアンス社 技術本部 開発第四部 第四課 主幹技師の志波正之氏に話を聞いた。
まず製品の詳細に振れる前に、価格情報をお届けしよう。正式な価格ではないが、おおまかな価格帯が明らかにされた。「SP-10R」は1万ドル前後、「SL-1000R」は2万ドル前後になりそうだという。
ただし、この価格に単純に為替レートをかけ算し、SP-10Rは100万円以上、と考える必要はない。これまでもテクニクスは、海外の価格を若干高めにアナウンスし、日本での販売価格はそれに比べると割安な設定を行ってきた経緯があるからだ。とはいえSL-1200Gと比べると、フラグシップモデルだけに、明らかに高くなるだろう。
両機の概要をおさらいしておこう。SP-10Rはダイレクトドライブ方式のターンテーブルで、SL-1200Gなどと同様、コアレスのダイレクトドライブモーターを搭載している。
特徴の一つは、SP-10MK2/MK3とサイズの互換性があること。いまSP-10MK2/MK3をお使いの方は、SP-10Rを購入すれば、ターンテーブル部分だけを入れ替えて使うことができる。愛用のトーンアームなどのシステムをそのまま活用しながら、ターンテーブルだけを最新のものにできることになる。
今回明らかにされた新情報はいくつかある。一つは、これまで完全に仕様が明らかにされていなかったプラッターのディテールだ。
プラッターは、下からデッドニングラバー、アルミニウムダイキャスト、10mm厚の真鍮の3層構造。これはすでにお伝えしていたことだが、今回明らかになったのは、プラッターの外周部に、計12個のタングステン製ウェイトを埋め込んでいることだ。タングステンの比重は19.3g/cm3で、非常に重いが、融点が3,300℃と高いなど、製造は非常に行いづらい。
ただしパナソニックはグループ会社のパナソニックライティングデバイス社が、タングステンをフィラメントに使っており、タングステンの精密加工に長けている。このような背景から、タングステンの採用が実現したという。
タングステンの採用によってターンテーブルの質量は約7.9kgとなり、慣性モーメントは1t/cmを超えた。なおタングステンを使わなければ、完成モーメントは900kg/cm程度で、1t/cmに届かないのだという。
なお、SP-10の過去モデルは慣性モーメントが1.2t/cmのものもあった。ただし、SP-10Rに使われているモーターはコアレスで、コギングがない。このため、1t/cmでも十分な音質が得られるという。
そのモーターだが、コイルを上下に搭載している。9個のコイルを上下にそれぞれ配置しているだけでなく、上下のコイルを60度ずつずらして配置しているのがポイントだ。この多くのコイルによってトルクを高め、歪みを抑え、結果的にワウフラッター0.015%という数値を実現した。
またモーター部の軸受け部も工夫。下部に4mm厚のステンレス削り出しのパーツを付けて、さらに内部にはポリアミドイミドという高価な素材を採用。これによってモーター振動をしっかり吸収する。
■SL-1000Rに込められたこだわり
さて、ここからはSL-1000Rの詳細について見ていこう。トーンアームはスタティックバランスのS字形ユニバーサルトーンアーム。すでにお伝えした通り、トーンアームパイプは軽量かつハイダンピングなマグネシウム製を採用している。内部配線にはOFCが用いられている。
トーンアームベースは、ターンテーブル部と強固に連結可能。オプションで最大3つまでのトーンアームベースを取り付けられ、SMEやオルトフォンなどのショート/ロングタイプのトーンアームなども取り付けられる。
ターミナル部は金でプレートされた5ピンのDIN端子を採用。こによって高価なフォノケーブルを交換して音質をカスタマイズする楽しみ方も可能になった。
筐体はBMCと30mm厚のアルミトップパネルの2層構造。さらにターンテーブル部はBMCとアルミダイキャスト、25mm厚のアルミトップパネルの3層構造となっている。つまり、5つの異なる素材を使った構造となっている。またインシュレーターの内部にはシリコンラバーを備えている。
◇
1万ドル、2万ドルという価格を聞くと「高いな」と感じる方も多いだろうが、タングステン製のウェイトを埋め込むなど、これ以上の価格帯の製品でも実現していないこだわりが秘められていることも事実。日本での発売時期や価格などは一切明らかになっていないが、続報が入り次第お届けしたい。
パナソニック(株)テクニクスCTOの井谷哲也氏、同アプライアンス社 技術本部 開発第四部 第四課 主幹技師の志波正之氏に話を聞いた。
まず製品の詳細に振れる前に、価格情報をお届けしよう。正式な価格ではないが、おおまかな価格帯が明らかにされた。「SP-10R」は1万ドル前後、「SL-1000R」は2万ドル前後になりそうだという。
ただし、この価格に単純に為替レートをかけ算し、SP-10Rは100万円以上、と考える必要はない。これまでもテクニクスは、海外の価格を若干高めにアナウンスし、日本での販売価格はそれに比べると割安な設定を行ってきた経緯があるからだ。とはいえSL-1200Gと比べると、フラグシップモデルだけに、明らかに高くなるだろう。
両機の概要をおさらいしておこう。SP-10Rはダイレクトドライブ方式のターンテーブルで、SL-1200Gなどと同様、コアレスのダイレクトドライブモーターを搭載している。
特徴の一つは、SP-10MK2/MK3とサイズの互換性があること。いまSP-10MK2/MK3をお使いの方は、SP-10Rを購入すれば、ターンテーブル部分だけを入れ替えて使うことができる。愛用のトーンアームなどのシステムをそのまま活用しながら、ターンテーブルだけを最新のものにできることになる。
今回明らかにされた新情報はいくつかある。一つは、これまで完全に仕様が明らかにされていなかったプラッターのディテールだ。
プラッターは、下からデッドニングラバー、アルミニウムダイキャスト、10mm厚の真鍮の3層構造。これはすでにお伝えしていたことだが、今回明らかになったのは、プラッターの外周部に、計12個のタングステン製ウェイトを埋め込んでいることだ。タングステンの比重は19.3g/cm3で、非常に重いが、融点が3,300℃と高いなど、製造は非常に行いづらい。
ただしパナソニックはグループ会社のパナソニックライティングデバイス社が、タングステンをフィラメントに使っており、タングステンの精密加工に長けている。このような背景から、タングステンの採用が実現したという。
タングステンの採用によってターンテーブルの質量は約7.9kgとなり、慣性モーメントは1t/cmを超えた。なおタングステンを使わなければ、完成モーメントは900kg/cm程度で、1t/cmに届かないのだという。
なお、SP-10の過去モデルは慣性モーメントが1.2t/cmのものもあった。ただし、SP-10Rに使われているモーターはコアレスで、コギングがない。このため、1t/cmでも十分な音質が得られるという。
そのモーターだが、コイルを上下に搭載している。9個のコイルを上下にそれぞれ配置しているだけでなく、上下のコイルを60度ずつずらして配置しているのがポイントだ。この多くのコイルによってトルクを高め、歪みを抑え、結果的にワウフラッター0.015%という数値を実現した。
またモーター部の軸受け部も工夫。下部に4mm厚のステンレス削り出しのパーツを付けて、さらに内部にはポリアミドイミドという高価な素材を採用。これによってモーター振動をしっかり吸収する。
■SL-1000Rに込められたこだわり
さて、ここからはSL-1000Rの詳細について見ていこう。トーンアームはスタティックバランスのS字形ユニバーサルトーンアーム。すでにお伝えした通り、トーンアームパイプは軽量かつハイダンピングなマグネシウム製を採用している。内部配線にはOFCが用いられている。
トーンアームベースは、ターンテーブル部と強固に連結可能。オプションで最大3つまでのトーンアームベースを取り付けられ、SMEやオルトフォンなどのショート/ロングタイプのトーンアームなども取り付けられる。
ターミナル部は金でプレートされた5ピンのDIN端子を採用。こによって高価なフォノケーブルを交換して音質をカスタマイズする楽しみ方も可能になった。
筐体はBMCと30mm厚のアルミトップパネルの2層構造。さらにターンテーブル部はBMCとアルミダイキャスト、25mm厚のアルミトップパネルの3層構造となっている。つまり、5つの異なる素材を使った構造となっている。またインシュレーターの内部にはシリコンラバーを備えている。
1万ドル、2万ドルという価格を聞くと「高いな」と感じる方も多いだろうが、タングステン製のウェイトを埋め込むなど、これ以上の価格帯の製品でも実現していないこだわりが秘められていることも事実。日本での発売時期や価格などは一切明らかになっていないが、続報が入り次第お届けしたい。
関連リンク