新構造シャーシ&スパイクなどで進化
TAD、320万の新旗艦モノパワーアンプ「TAD-M700」。2chの「TAD-M700S」も用意
(株)テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)は、 “Referenceシリーズ” のモノラルパワーアンプ「TAD-M700」(税抜320万円)と2chパワーアンプ「TAD-M700S」(税抜390万円)を12月上旬に発売する。
2009年に同社が発売した初の民生向けモノラルパワーアンプ「TAD-M600」(関連ニュース)を、10年ぶりに置き換える後継モデル。今年6月に行われた “Referenceシリーズ” のフロア型スピーカー「TAD-R1TX」発表会にて用いられた試作アンプが正式発表された格好。なお、新モデルの発売に伴い、M600は生産終了となる。
本日開催された製品発表会では、同社 取締役社長の永畑純氏が登壇。同社の源流となるプロジェクトが発足した1975年当時の哲学を変えることなく、一貫して製品開発に反映してきたことを強調。TAD-M700/M700Sに関しても、 “所有する喜びと誇り、聴く喜びと感動” を満たす製品に仕上げていることを述べた。
製品の技術面については、同社エレクトロニクス技術部の沼崎裕光氏が解説を担当した。TAD-M700/M700Sの開発にあたっては、TAD-R1TXと同様 “良き伝統は受け継ぎつつ、さらに深堀りしていく” ことをテーマとしたという。従来モデルの設計思想やデザイン、採用パーツの厳選、工芸品のような作り込みといった要素を引き継ぎつつ、音質/質感の両面でより一層の洗練を図っている。
今回、モノラルモデルのTAD-M700に加え、同等の性能を維持したステレオモデルのTAD-M700Sを同時に開発、ユーザーのニーズの多様化に対応している。TAD-M700Sは内蔵する2基のアンプをそれぞれ独立して使用できる「バイアンプモード」を搭載。スピーカーシステムの各ユニットを独立してドライブするバイアンプ駆動に対応し、駆動力やセパレーションを高めることができる。
また、「TAD-R1TXを鳴らし切る」事も開発目標のひとつとのこと。定格出力はモデル名の通り700W/4Ω(TAD-M700Sでは350W+350W/4Ω)を実現している。外形寸法は516W×296H×622Dmm、質量はM700が74.5kg、M700Sが75.5kg。
内部回路は、スピーカーの振動板を正確にドライブするため、音楽信号の正負が完全に対称となることを追求している。これを実現するため、増幅回路は入力から出力までフルバランスのBTL方式を採用。電源回路も電源トランスや各種回路がすべて独立、かつ正負が完全に対称となるよう設計している。対称性へのこだわりは、電源トランスの配置、基板パターン、配線に至るまで徹底されている。
シャーシ素材は、振動制御性を高めるため、従来モデルの鋳鉄から鋳造アルミニウムに変更した。沼崎氏は鋳造アルミニウムの採用について「大きなチャレンジ」としており、実際、製造にあたっては1つのシャーシにつき1つ砂型を必要とするなど大変な手間がかかるという。
しかし鋳造アルミニウムを採用した結果、高い内部損失により不要振動周波数による固有共振を排除。シャーシ内部のパーツ配置も最適化することで、外部音圧による不要振動を抑える強固な構造を実現したという。また、アルミニウムは低インピーダンスであることから電気的な安定性も高まり、さらに本体質量も従来モデルTAD-M600の90kgから15kg近い軽量化を果たしている。
特徴的なシャーシ形状「ワイドトレッドシャーシ」も、従来モデルからブラッシュアップしている。側面のラウンド形状のカーブをより緩やかにすることで、可聴帯域からの共振振動を抑制。本体の外側にせり出した脚部は、テーパー角度を最適化してさらなる低重心化を実現したとのことだ。その他、フロントパネルの “窓” や天板のヒートシンクの開口部なども調整し、見た目の上からも低重心化がイメージできるデザインとしている。
インシュレーターも、新構造の点支持スパイク「アジャスタブルスパイク」を採用した。これはインシュレーターの荷重ポイントを明確化し、床からの振動の影響を低減するとともにアイソレーション性能を向上したというもの。また、部位によって堅牢なSUS304と多少の銅を含有するXM-7という2種類のステンレスを使い分けており、音の情報量や力感、空間表現力の向上と共に、耐腐食性と強度も高めている。
電源増幅回路には、高域特性に優れた大電力の「マルチエミッタ・トランジスタ」を採用。これをバランスアンプ接続することで、全周波数帯域で余裕あるドライブを実現するとアピールしている。また最終出力段のエミッタ抵抗には、新開発のハイブリッド型抵抗素子による非磁性抵抗器を採用。これらによって、パワフルなスピーカードライブを実現するという。
電源部には、2基あわせて2.8kVAの超大型電源トランスを採用。これは従来モデルと比較してもなお大きく、実際に質量は8kgから14kgに増大している。製造は日本国内で手巻きによって行われ、一次巻線と二次巻線の結合度を高めるためにボビンを排し、絶縁紙を直接コア部に巻く構造としている。特に感度の高いファーストステージ用の巻線を高純度な直出しとすることで、応答性の良い安定した音質が得られるのだという。
コンデンサーも、新開発のオリジナル電解コンデンサーを採用している。3桁にもおよぶ試行錯誤の末厳選したという33,000μFの大容量モデルを4つ搭載しており、ハイパワーアンプならではのスピード感あふれるダイナミックでしなやかな音を実現するという。沼崎氏によれば、近年のEV車向けコンデンサーなどで得られた振動対策のノウハウが効果的に活用されているのだという。
電圧増幅回路は、純度の高い信号伝送を可能とする「シンプル構造」を実現するため、同社の担当が丁寧に選別、これにより素子の数を大幅に削減している。新しく導入しているDCサーボ回路にも選別したFETを採用し、周囲の環境や信号の変化に対しても安定した動作を実現。フィードバック抵抗には非磁性高信頼性カーボン抵抗器を採用することで、信号回路から磁性歪を排除したとのことだ。
沼崎氏は10年ぶりの後継モデル開発について、「従来モデルのTAD-M600は、当時のフラグシップスピーカー『TAD Referenece One』を鳴らし切ろうという意気込みを感じ取れる製品だった。TAD-M700/M700Sもその姿勢を受け継ぐと同時に、さらなる深堀りを目指した」と語り、技術力への自信を見せていた。
2009年に同社が発売した初の民生向けモノラルパワーアンプ「TAD-M600」(関連ニュース)を、10年ぶりに置き換える後継モデル。今年6月に行われた “Referenceシリーズ” のフロア型スピーカー「TAD-R1TX」発表会にて用いられた試作アンプが正式発表された格好。なお、新モデルの発売に伴い、M600は生産終了となる。
本日開催された製品発表会では、同社 取締役社長の永畑純氏が登壇。同社の源流となるプロジェクトが発足した1975年当時の哲学を変えることなく、一貫して製品開発に反映してきたことを強調。TAD-M700/M700Sに関しても、 “所有する喜びと誇り、聴く喜びと感動” を満たす製品に仕上げていることを述べた。
製品の技術面については、同社エレクトロニクス技術部の沼崎裕光氏が解説を担当した。TAD-M700/M700Sの開発にあたっては、TAD-R1TXと同様 “良き伝統は受け継ぎつつ、さらに深堀りしていく” ことをテーマとしたという。従来モデルの設計思想やデザイン、採用パーツの厳選、工芸品のような作り込みといった要素を引き継ぎつつ、音質/質感の両面でより一層の洗練を図っている。
今回、モノラルモデルのTAD-M700に加え、同等の性能を維持したステレオモデルのTAD-M700Sを同時に開発、ユーザーのニーズの多様化に対応している。TAD-M700Sは内蔵する2基のアンプをそれぞれ独立して使用できる「バイアンプモード」を搭載。スピーカーシステムの各ユニットを独立してドライブするバイアンプ駆動に対応し、駆動力やセパレーションを高めることができる。
また、「TAD-R1TXを鳴らし切る」事も開発目標のひとつとのこと。定格出力はモデル名の通り700W/4Ω(TAD-M700Sでは350W+350W/4Ω)を実現している。外形寸法は516W×296H×622Dmm、質量はM700が74.5kg、M700Sが75.5kg。
内部回路は、スピーカーの振動板を正確にドライブするため、音楽信号の正負が完全に対称となることを追求している。これを実現するため、増幅回路は入力から出力までフルバランスのBTL方式を採用。電源回路も電源トランスや各種回路がすべて独立、かつ正負が完全に対称となるよう設計している。対称性へのこだわりは、電源トランスの配置、基板パターン、配線に至るまで徹底されている。
シャーシ素材は、振動制御性を高めるため、従来モデルの鋳鉄から鋳造アルミニウムに変更した。沼崎氏は鋳造アルミニウムの採用について「大きなチャレンジ」としており、実際、製造にあたっては1つのシャーシにつき1つ砂型を必要とするなど大変な手間がかかるという。
しかし鋳造アルミニウムを採用した結果、高い内部損失により不要振動周波数による固有共振を排除。シャーシ内部のパーツ配置も最適化することで、外部音圧による不要振動を抑える強固な構造を実現したという。また、アルミニウムは低インピーダンスであることから電気的な安定性も高まり、さらに本体質量も従来モデルTAD-M600の90kgから15kg近い軽量化を果たしている。
特徴的なシャーシ形状「ワイドトレッドシャーシ」も、従来モデルからブラッシュアップしている。側面のラウンド形状のカーブをより緩やかにすることで、可聴帯域からの共振振動を抑制。本体の外側にせり出した脚部は、テーパー角度を最適化してさらなる低重心化を実現したとのことだ。その他、フロントパネルの “窓” や天板のヒートシンクの開口部なども調整し、見た目の上からも低重心化がイメージできるデザインとしている。
インシュレーターも、新構造の点支持スパイク「アジャスタブルスパイク」を採用した。これはインシュレーターの荷重ポイントを明確化し、床からの振動の影響を低減するとともにアイソレーション性能を向上したというもの。また、部位によって堅牢なSUS304と多少の銅を含有するXM-7という2種類のステンレスを使い分けており、音の情報量や力感、空間表現力の向上と共に、耐腐食性と強度も高めている。
電源増幅回路には、高域特性に優れた大電力の「マルチエミッタ・トランジスタ」を採用。これをバランスアンプ接続することで、全周波数帯域で余裕あるドライブを実現するとアピールしている。また最終出力段のエミッタ抵抗には、新開発のハイブリッド型抵抗素子による非磁性抵抗器を採用。これらによって、パワフルなスピーカードライブを実現するという。
電源部には、2基あわせて2.8kVAの超大型電源トランスを採用。これは従来モデルと比較してもなお大きく、実際に質量は8kgから14kgに増大している。製造は日本国内で手巻きによって行われ、一次巻線と二次巻線の結合度を高めるためにボビンを排し、絶縁紙を直接コア部に巻く構造としている。特に感度の高いファーストステージ用の巻線を高純度な直出しとすることで、応答性の良い安定した音質が得られるのだという。
コンデンサーも、新開発のオリジナル電解コンデンサーを採用している。3桁にもおよぶ試行錯誤の末厳選したという33,000μFの大容量モデルを4つ搭載しており、ハイパワーアンプならではのスピード感あふれるダイナミックでしなやかな音を実現するという。沼崎氏によれば、近年のEV車向けコンデンサーなどで得られた振動対策のノウハウが効果的に活用されているのだという。
電圧増幅回路は、純度の高い信号伝送を可能とする「シンプル構造」を実現するため、同社の担当が丁寧に選別、これにより素子の数を大幅に削減している。新しく導入しているDCサーボ回路にも選別したFETを採用し、周囲の環境や信号の変化に対しても安定した動作を実現。フィードバック抵抗には非磁性高信頼性カーボン抵抗器を採用することで、信号回路から磁性歪を排除したとのことだ。
沼崎氏は10年ぶりの後継モデル開発について、「従来モデルのTAD-M600は、当時のフラグシップスピーカー『TAD Referenece One』を鳴らし切ろうという意気込みを感じ取れる製品だった。TAD-M700/M700Sもその姿勢を受け継ぐと同時に、さらなる深堀りを目指した」と語り、技術力への自信を見せていた。