世界初となる試み、先行試聴会を開催
WOWOW他4社、MQAとHPLを活用した「3Dオーディオ×映像コンテンツ」をInterBEE 2019でデモ
(株)WOWOWは、(株)アコースティック・フィールドとMQA Ltd.、そしてNTT スマートコネクト(株)と4社合同にて、MQA音声を用いた3Dオーディオと映像コンテンツ配信のデモンストレーションを、InterBEE 2019にて行うと発表した。
このデモンストレーションに先駆け、10月24日(木)にはメディア向けの事前デモストレーションをWOWOW辰巳放送センターにて開催。世界初となるこの試みの技術的なプレゼンテーションを行った。
この試みは、WOWOWで収録/制作した映像と192kHz/24bitの音声を、アコースティックフィールドが開発したヘッドフォン向けエンコード技術「HPL」によって192kHz/24bitでエンコード。その後、MQAにて48kHz/24bit(MQAデコード対応機器では192kHz/24bitへデコード)化し、NTTスマートコネクトによってMPEG4 ALSエンコードし、映像と共にオンデマンド配信するというものだ。
本試聴会の開催に先立ち、WOWOW 技術ICT局 シニア・エキスパートの入交英雄氏は「この開発はMQAをVODやライブ放送のサービスで使うという目的で進めてきた」と前置きしたうえで、「放送の映像は4K、8Kと高画質になりましたが、放送上で音声を扱えるのは48kHz/24bitが最大です。その限られた環境のなかでなんとかハイレゾを通すにはどうしたら良いのか。そこでMQAのテクノロジーを活用することに着目しました」とコメント。
また、3Dオーディオの可能性を示すための内覧会として、今回の先行デモンストレーションを開催する運びになったと解説する。
この3Dオーディオの可能性を示すためにひと役かったのが、アコースティックフィールドのHPLだ。3Dオーディオというと上下左右にスピーカーを設置する13.1chや9.1chといったさまざまなチャンネルがあることに加え、そのチャンネル分のスピーカーが必要となるなど、ユーザーへのハードルがステレオと比べて高いものとなる。その一方で、こうした3Dオーディオに対応するHPLでエンコードされた音源は、ヘッドフォンで3Dオーディオの利点を再現できることが大きな特徴となる。
本エンコード技術を開発したアコースティックフィールドの久保二朗氏は、「基本的な技術としてはバイノーラルと同じものですが、他の技術とは根本的にコンセプトが違って、HPLの場合は “音楽として表現したい” ということを最優先しています。エンジニアにしても、スタジオの音を聴かせたいわけではなくて、あくまで音楽を再現すると言うコンセプトをお持ちです。スタジオの音はそもそもがニュートラルですが、それは音楽を再現するため。HPLは、ヘッドフォンのなかでもそうしたニュートラルな空間を再現するということがコンセプトです」と話す。
実際、これまでにもHPLエンコードを経た音源はいくつかリリースされてきたが、そのいずれもエフェクター的な効果ではなく、ナチュラルなサウンドが高い評価を受けてきた。入交氏は音楽そのものに影響を及ぼさずに3Dオーディオの良さをヘッドフォンで表現できるHPLには、以前から注目してきたという。
このHPLエンコードのプロセスを経た192kHz/24bitの音源はMQAエンコードにて48kHz/24bitのデータとされ、最終的にはNTTスマートコネクトにて映像と合わせこんだMPEG 4 ALSのデータへとエンコード。リスナーのもとへと配信される仕組みとなる。
NTTスマートコネクトが展開する動画配信サービス「SmartSTREAM」は10月2日に96kHz/24bitまでのハイレゾ配信をオプションとして提供開始した。これによって、映像と組み合わせたオンデマンドコンテンツの配信が可能となり、今回は48kHz/24bitのMQAを採用することで、MQAデコードに対応したユーザーであれば192kHz/24bitでの視聴も可能になる今回の試みを実現した。
今回の事前デモンストレーションでの視聴に先立っては、MQAのチェアマンであるボブ・スチュワート氏のビデオメッセージも紹介された。「“オーディオ折り紙”技術によってハイレゾでありながらコンパクトファイル容量とできることに加え、MQAデコードをしなくても時間軸を整えることで、通常のファイルよりも音質的に優れたものとできるのがMQAの最大の特徴です。この互換性の高さによって、優れたサウンドを映像と共に提供できることを可能としました。この実験の成功は国際的に放送の分野に新たな可能性をもたらすことができると考えています」とスチュワート氏はコメントし、今回の試みに対する自信をうかがわせている。
用意されたコンテンツは、マリンバ奏者の名倉誠人が東京カテドラル聖マリア大聖堂で演奏したバッハのプレデュード、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂やローマのサン・パオロ大聖堂で収録した3Dオーディオコンテンツの3曲。実際にネット回線からコンテンツを送り込み、その映像とMQAとHPLによる3Dオーディオのサウンドを体験することができた。
3Dオーディオにおいて最も大きな違いとして認識できるのが、演奏の余韻の部分だ。今回用意された音源については、東京カテドラル聖マリア大聖堂が7秒、そのほかはおよそ10秒という非常に長い残響時間を持つ場所で収録されたものとなる。通常のヘッドフォン再生では得られない残響成分による余韻や空間の広さは、HPLエンコードを経ることでしっかりと再現できているほか、MQAによって時間軸での再現が整ったことによって各楽器の明確な定位など、さまざまな優位性を感じることができた。
映像の世界は4K、8Kと進歩するなかで、それと共に送られる音声についてはその技術革新が遅れていたというのが、現時点での放送の現実だ。その中にあって入交氏を始めとする今回のメンバーは、新たな映像配信の魅力としてこの3Dオーディオとハイレゾ、そして映像が一体となったコンテンツを届けることに大きな優位性を見出している。
今回のデモンストレーションは、オンデマンドの配信のみとなり放送波では実施はされない。しかしながら、「来春にはライヴ配信を行いたい」とその意気込みを見せるほか、「こうしたコンテンツの魅力が皆様にご評価いただけることが、放送局としても放送波でハイレゾと3Dオーディオによるコンテンツをお届けするための後押しにもなる」(入交氏)と、本デモンストレーションには大きな意義があることをアピールする。
幕張メッセで開催されるInterBEE 2019では、11月15日に国際会議場104会議室にて、この先行デモンストレーションで用意されたコンテンツも含めた映像/楽曲がフルデモンストレーションが行われる予定となっている。世界で初めてとなるこの試みを体験できる貴重な機会となる見込みだ。
このデモンストレーションに先駆け、10月24日(木)にはメディア向けの事前デモストレーションをWOWOW辰巳放送センターにて開催。世界初となるこの試みの技術的なプレゼンテーションを行った。
この試みは、WOWOWで収録/制作した映像と192kHz/24bitの音声を、アコースティックフィールドが開発したヘッドフォン向けエンコード技術「HPL」によって192kHz/24bitでエンコード。その後、MQAにて48kHz/24bit(MQAデコード対応機器では192kHz/24bitへデコード)化し、NTTスマートコネクトによってMPEG4 ALSエンコードし、映像と共にオンデマンド配信するというものだ。
本試聴会の開催に先立ち、WOWOW 技術ICT局 シニア・エキスパートの入交英雄氏は「この開発はMQAをVODやライブ放送のサービスで使うという目的で進めてきた」と前置きしたうえで、「放送の映像は4K、8Kと高画質になりましたが、放送上で音声を扱えるのは48kHz/24bitが最大です。その限られた環境のなかでなんとかハイレゾを通すにはどうしたら良いのか。そこでMQAのテクノロジーを活用することに着目しました」とコメント。
また、3Dオーディオの可能性を示すための内覧会として、今回の先行デモンストレーションを開催する運びになったと解説する。
この3Dオーディオの可能性を示すためにひと役かったのが、アコースティックフィールドのHPLだ。3Dオーディオというと上下左右にスピーカーを設置する13.1chや9.1chといったさまざまなチャンネルがあることに加え、そのチャンネル分のスピーカーが必要となるなど、ユーザーへのハードルがステレオと比べて高いものとなる。その一方で、こうした3Dオーディオに対応するHPLでエンコードされた音源は、ヘッドフォンで3Dオーディオの利点を再現できることが大きな特徴となる。
本エンコード技術を開発したアコースティックフィールドの久保二朗氏は、「基本的な技術としてはバイノーラルと同じものですが、他の技術とは根本的にコンセプトが違って、HPLの場合は “音楽として表現したい” ということを最優先しています。エンジニアにしても、スタジオの音を聴かせたいわけではなくて、あくまで音楽を再現すると言うコンセプトをお持ちです。スタジオの音はそもそもがニュートラルですが、それは音楽を再現するため。HPLは、ヘッドフォンのなかでもそうしたニュートラルな空間を再現するということがコンセプトです」と話す。
実際、これまでにもHPLエンコードを経た音源はいくつかリリースされてきたが、そのいずれもエフェクター的な効果ではなく、ナチュラルなサウンドが高い評価を受けてきた。入交氏は音楽そのものに影響を及ぼさずに3Dオーディオの良さをヘッドフォンで表現できるHPLには、以前から注目してきたという。
このHPLエンコードのプロセスを経た192kHz/24bitの音源はMQAエンコードにて48kHz/24bitのデータとされ、最終的にはNTTスマートコネクトにて映像と合わせこんだMPEG 4 ALSのデータへとエンコード。リスナーのもとへと配信される仕組みとなる。
NTTスマートコネクトが展開する動画配信サービス「SmartSTREAM」は10月2日に96kHz/24bitまでのハイレゾ配信をオプションとして提供開始した。これによって、映像と組み合わせたオンデマンドコンテンツの配信が可能となり、今回は48kHz/24bitのMQAを採用することで、MQAデコードに対応したユーザーであれば192kHz/24bitでの視聴も可能になる今回の試みを実現した。
今回の事前デモンストレーションでの視聴に先立っては、MQAのチェアマンであるボブ・スチュワート氏のビデオメッセージも紹介された。「“オーディオ折り紙”技術によってハイレゾでありながらコンパクトファイル容量とできることに加え、MQAデコードをしなくても時間軸を整えることで、通常のファイルよりも音質的に優れたものとできるのがMQAの最大の特徴です。この互換性の高さによって、優れたサウンドを映像と共に提供できることを可能としました。この実験の成功は国際的に放送の分野に新たな可能性をもたらすことができると考えています」とスチュワート氏はコメントし、今回の試みに対する自信をうかがわせている。
用意されたコンテンツは、マリンバ奏者の名倉誠人が東京カテドラル聖マリア大聖堂で演奏したバッハのプレデュード、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂やローマのサン・パオロ大聖堂で収録した3Dオーディオコンテンツの3曲。実際にネット回線からコンテンツを送り込み、その映像とMQAとHPLによる3Dオーディオのサウンドを体験することができた。
3Dオーディオにおいて最も大きな違いとして認識できるのが、演奏の余韻の部分だ。今回用意された音源については、東京カテドラル聖マリア大聖堂が7秒、そのほかはおよそ10秒という非常に長い残響時間を持つ場所で収録されたものとなる。通常のヘッドフォン再生では得られない残響成分による余韻や空間の広さは、HPLエンコードを経ることでしっかりと再現できているほか、MQAによって時間軸での再現が整ったことによって各楽器の明確な定位など、さまざまな優位性を感じることができた。
映像の世界は4K、8Kと進歩するなかで、それと共に送られる音声についてはその技術革新が遅れていたというのが、現時点での放送の現実だ。その中にあって入交氏を始めとする今回のメンバーは、新たな映像配信の魅力としてこの3Dオーディオとハイレゾ、そして映像が一体となったコンテンツを届けることに大きな優位性を見出している。
今回のデモンストレーションは、オンデマンドの配信のみとなり放送波では実施はされない。しかしながら、「来春にはライヴ配信を行いたい」とその意気込みを見せるほか、「こうしたコンテンツの魅力が皆様にご評価いただけることが、放送局としても放送波でハイレゾと3Dオーディオによるコンテンツをお届けするための後押しにもなる」(入交氏)と、本デモンストレーションには大きな意義があることをアピールする。
幕張メッセで開催されるInterBEE 2019では、11月15日に国際会議場104会議室にて、この先行デモンストレーションで用意されたコンテンツも含めた映像/楽曲がフルデモンストレーションが行われる予定となっている。世界で初めてとなるこの試みを体験できる貴重な機会となる見込みだ。
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